2直の階段と重複距離を緩和する避難上有効なバルコニーの決定的な違いを見落とすな

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まずは避難上有効なバルコニーが登場する条文を確認しておく

(避難施設等の範囲)

第十三条  

第七条の六第一項 の政令で定める避難施設(略)





第百十八条の客席からの出口の戸、第百二十条又は第百二十一条の直通階段、同条第三項ただし書の避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの、第百二十五条の屋外への出口及び第百二十六条第二項の屋上広場

(略)

(耐火建築物とすることを要しない特殊建築物の技術的基準等)

第百十五条の二の二

法第二十七条第一項 ただし書(法第八十七条第三項 において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の政令で定める技術的基準は

(略)



下宿の各宿泊室、共同住宅の各住戸又は寄宿舎の各寝室(以下「各宿泊室等」という。)に避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。ただし、各宿泊室等から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路が直接外気に開放されたものであり、

(略)



建築物の周囲(道に接する部分を除く。)に幅員が三メートル以上の通路(敷地の接する道まで達するものに限る。)が設けられていること。ただし、次に掲げる基準に適合しているものについては、この限りでない。

イ 各宿泊室等に避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。

(略)



(二以上の直通階段を設ける場合)


第百二十一条

建築物の避難階以外の階が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その階から避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設けなければならない。

(略)



次に掲げる用途に供する階でその階に客席、客室その他これらに類するものを有するもの(五階以下の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているもの並びに避難階の直上階又は直下階である五階以下の階でその階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えないものを除く。)

イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブ又はバー

ロ 個室付浴場業その他客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業を営む施設

ハ ヌードスタジオその他これに類する興行場(劇場、映画館又は演芸場に該当するものを除く。)

ニ 専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設

ホ 店舗型電話異性紹介営業その他これに類する営業を営む店舗

(略)



前各号に掲げる階以外の階で次のイ又はロに該当するもの



六階以上の階でその階に居室を有するもの(第一号から第四号までに掲げる用途に供する階以外の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているものを除く。)



五階以下の階でその階における居室の床面積の合計が避難階の直上階にあつては二百平方メートルを、その他の階にあつては百平方メートルを超えるもの

(略)



第一項の規定により避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設ける場合において、居室の各部分から各直通階段に至る通常の歩行経路のすべてに共通の重複区間があるときにおける当該重複区間の長さは、前条に規定する歩行距離の数値の二分の一をこえてはならない。ただし、居室の各部分から、当該重複区間を経由しないで、避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するものに避難することができる場合は、この限りでない。

(略)

登場する条文は、施行令13条、115条の2の2、121条です。

令13条は、検査済みを受けるまでの建築物の使用制限に関する規定で、避難上有効なバルコニーも避難施設に含まれるとあります。

令115条の2の2は、イ準耐の基準を定めた条文で、耐火建築物にしない代わりに所定の構造を要求するもので、建築物の耐火性能だけでなく、避難上有効なバルコニーを設けることで救助活動を円滑にできるようにしたり、類焼を防ぐ措置を求める規定となっています。

そして、今回の主役、令121条は2以上の直通階段の設置の規定です。

避難上有効なバルコニーは、建築基準法では明確に基準が定められていない

避難関係規定 避難上有効なバルコニー等の構造要件などの記事にもあるように、基準法を読むだけでは避難上有効なバルコニーとは、何のことやらわからず、これでは設計者の解釈の数だけ避難上有効なバルコニーが設計されることになるため、「建築物の防火避難規定の解説(ぎょうせい)」により、求められる構造等が示されました。

121条3項避難上有効なバルコニー

令121条における、避難上有効なバルコニーを利用した緩和は2種類ある

2以上の直通階段の設置を緩和するための避難上有効なバルコニー

令121条1項の3号と6号では、それぞれの用途や用途に供する部分の床面積に応じて避難上有効なバルコニーを設けることで、2以上の直通階段を設置しなくても良いというものです。

3号はアダルティーな用途で5階以下の場合であり、6号は、1~4号の用途以外の用途で6階以上かつ居室の合計が100㎡以下という条件がありますが、満足することで直通階段が1つで良くなり、プランがだいぶスッキリとします。

ただし気をつけなければならないのは、1項の3号、6号で避難上有効なバルコニーを設置して2直の階段を緩和する場合は、設置する階段を屋外避難階段もしくは特別避難階段にしなければなりません。

避難上有効なバルコニーとただの階段を設置するだけでは、2直の階段の設置を緩和できませんので注意が必要です。

重複区間の歩行距離が規定の1/2を超えてしまうことを緩和するための避難上有効なバルコニー

令121条3項は、重複距離が歩行距離の1/2を超えてしまう場合の緩和措置として、避難上有効なバルコニー等が設けてあれば良いという規定です。

同じ避難上有効なバルコニーという言葉ではありますが、2以上の直通階段を設置しないためのものではないので、意味合いとしては大きく変わってきてしまいます。

そして、この3項で、決して読み流してはならない部分がありますので、必ず覚えておいてほしい部分があります。

居室の各部分から、当該重複区間を経由してはならない

3項が規定する重複区間の意味

令121条3項は、いわゆる重複距離の規定を定めています。参考書等で、重複区間の考え方はなんとなくわかっているつもりでも、条文に立ち返って再確認してみます。

第一項の規定により避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設ける場合において、居室の各部分から各直通階段に至る通常の歩行経路のすべてに共通の重複区間があるときにおける当該重複区間の長さは、前条に規定する歩行距離の数値の二分の一をこえてはならない。

この「居室の各部分から」という文言が、実は大変厳しい規定になっているということに、いまさらながら気付かされます。

なぜそう思うのか、次の項目を読むとわかります。

3項のただし書き部分を穴が空くほど見つめて、そして声に出して読んでみます。

ただし、居室の各部分から当該重複区間を経由しないで避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するものに避難することができる場合は、この限りでない。

簡単に言ってしまえば、居室から廊下等の避難経路に一旦出ないと避難上有効なバルコニーにアクセス出来ないようなプランの場合は、ダメだ、ということになります。

しかも、共同住宅や、事務所等の場合に重複距離オーバーを緩和すべく、避難上有効なバルコニーを設置しようにも、3項のただし書きより前の部分で、「居室の各部分から」という制限が重くのしかかります。

通常、重複距離を検討する際は、居室の最も奥まった部分から算定します。それを踏まえて、どの区間も経由しないで避難上有効なバルコニーに到達することは、物理的に無理なのではとさえ、思えてきます。

実際は、住戸内でのある程度の重複や、事務所内での部分的な重複はやむを得ないと判断される場合もありますが、3項の但書による重複区間の緩和は、よくよく注意して採用しないといけません。

▼避難上有効なバルコニーの位置が良くない例
避難バル 重複NG jpg
上の画像では、重複距離の緩和を活用するために避難上有効なバルコニーを設置したものの、重複区間を経由しないと避難上有効なバルコニーに到達できないので、不可になるパターンです。

▼避難上有効なバルコニーに重複区間を通らず到達できる例
避難バル 重複OK jpg
上の画像では、重複距離がNGになってしまう居室から、重複区間である廊下を通らずに、直接避難上有効なバルコニーに到達できます。
かなり極端なプランではありますが、重複距離を緩和するための避難上有効なバルコニーの位置関係については、わかりやすいかな、と思います。

一方1項では、2直の階段の緩和のために、避難上有効なバルコニーがありさえすればいいことになっており、3項のように避難上有効なバルコニーへの到達経路については問われていません。

この違いをよく理解せずに、単純に「避難上有効なバルコニー」という語句だけを都合よく解釈し、設置さえしておけばいいと考えていると、大変な目に合います。

行政ごとの避難上有効なバルコニーの取扱の違い

名古屋市の場合

なごや ひなんばる1

名古屋市の取扱を見てみると、令121条3項まで含み、(1)で避難上有効なバルコニーと直通階段は概ね対象の位置とする、とあります。

このような表記をそのまま鵜呑みにし、3項の「重複区間を経由しないで」という条件を見落としてしまうと、廊下等に一旦出てから避難上有効なバルコニーに達すればいいと勘違いしやすいといえます。

あくまで位置関係を示したものですので、条文の内容、すなわち「重複区間を経由しないで」を省くことは出来ません。

なごや ひなんばる3

また、取扱の中に、「建築物の防火避難規定の解説」による規定とのいいとこ取りは許しません、とあります。

最後まで読まないと書いていませんから、見落としには注意が必要です。

大阪市の場合

大阪市 ひなんばる

大阪市の場合は避難上有効なバルコニーの取扱に、令121条3項を含めていません。

①番目に、避難上有効なバルコニーは直通階段とおおむね対象の位置に設け・・・とあり、1項の場合は対象の位置に設け、3項の場合は対象の位置でなくても、重複区間を経由しないで到達できる位置に、直通階段に相当する避難上有効なバルコニーを設置していれば適合している、と判断できそうです。

しかし、勝手な判断は禁物、申請前に要相談です。

兵庫県の場合

兵庫 ひなん
兵庫県の取扱では、令121条1項6号イについてのみ、言及しています。

しかし、よく読むと、条文では居室の床面積についても制限がありますが、ここでは屋外避難階段と避難上有効なバルコニーがあれば適合する、と読めてしまいます。

実際には、取扱が基準法を上回る緩和をしているとは考えられませんので、要注意です。

福岡市の場合

ふくおか ひなんばる

福岡市の取扱は単純明快、「建築物の防火避難規定の解説」を参照せよとあります。

追加事項として、避難設備の具体的な例示、1層ごとの避難が求められています。

消防法に出て来る避難設備である、緩降機等はダメですよ、とも言っています。

また、関連条文の欄に令121条1項5号イとの表記がありますが、これは法改正で2号に物販店舗に関する条文が追加されていて、かつては5号イだったものが、現行法規では6号イとなっているので、間違いというよりは更新されていないだけですね。

四日市市の場合

四日市 ひなんばる

四日市市の取扱は、福岡市と動揺に、「建築物の防火避難規定の解説」を参照となっています。

四日市市は取扱資料が大変詳しいことで有名?ですが、省くところは省くといった様子です。

参考:建築確認Tips 日本中の建築基準法取扱を集めてみた

まとめ

令121条に関して、避難上有効なバルコニーを設置することにより受けられる緩和は2種類ある

「建築物の防火避難規定の解説」(ぎょうせい)を万が一持っていない設計者は即座に入手すべし

建築物の防火避難規定の解説2016
by カエレバ

特定行政庁ごとの避難上有効なバルコニーに関する取扱は要注意

ただでさえややこしい避難規定を、少しでも簡潔に検討していくためには、それなりの勉強が必要ということでしょうか。


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