防火区画:スパンドレルに要求される性能について

注:最新の令112条はこちらの記事でご確認ください。記事内の項ずれは適宜読み替えてください。ご不便をおかけしますがご了承ください。
【2020年(令和2年)版】 基準法施行令112条(防火区画関連)最新条文(告示番号付き)

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防火区画で要求されるスパンドレルの具体的な性能とは?

防火区画の規定のうち、スパンドレルに関して以下の様なご質問をいただきました。(抜粋し、一部記述を修正させて頂いております。O様、ありがとうございます)

面積区画(1500㎡)の防火区画に接する外壁について、接する部分を含み幅90cm以上を準耐火構造とするとありますが、外壁の準耐火構造は45分準耐火構造の認定外壁(サンドイッチパネル等)でOKなのでしょうか?
とある検査機関では1時間準耐火を要求されましたが、法文では準耐火構造とあるだけで、45分とも1時間とも表記がありません。
御サイトではどのようにお考えでしょうか?

確かに、施行令第112条第10項では以下の様な記載になっています。

10  
第一項から第四項までの規定による第百十五条の二の二第一項第一号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁(第二項に規定する防火上主要な間仕切壁を除く。)若しくは特定防火設備、第五項の規定による耐火構造の床若しくは壁若しくは法第二条第九号の二 ロに規定する防火設備又は前項の規定による準耐火構造の床若しくは壁若しくは法第二条第九号の二 ロに規定する防火設備に接する外壁については、当該外壁のうちこれらに接する部分を含み幅九十センチメートル以上の部分を準耐火構造としなければならない。ただし、外壁面から五十センチメートル以上突出した準耐火構造のひさし、床、そで壁その他これらに類するもので防火上有効に遮られている場合においては、この限りでない。

条文には「準耐火構造」としか記載がありません。
そこで私なりにいろいろ調べてみました。

防火区画やスパンドレルの規定そのものに関するまとめはこちら

防火区画:面積区画総まとめ
防火区画:スパンドレルのまとめ(令112条10項、11項)

スパンドレルの性能は建築物の構造と必ずしも同一である必要はない

いきなり結論から申し上げますと、スパンドレルの性能は、30分でも、45分でも、1時間でも準耐火構造なら問題ない、と私は考えます。
しかし、ご質問された方はとある確認審査機関で1時間準耐火性能を要求された、とあります。
これは正直、過大な要求で、その具体的根拠を示してもらっても良いレベルの議論になると考えられます。

10種類ほどの参考文献を調べ、行政や知人の元建築主事などにも聞いて回りましたが、スパンドレルに1時間準耐火性能を要求するという記述は見つかりませんでした。
参考意見を聞いた先でも、特にそこまで厳しい要求はありませんでした。

おそらく、ご質問された方が申請もしくは問い合わせた審査機関では、「防火上主要な間仕切り」の取り扱いと同様に解釈されているものと思われます。
もしくは、防火区画が1時間準耐火性能を要求されているので、スパンドレルも当然そうするべきだ、というより厳しい観点での指導であると考えられます。

防火上主要な間仕切りは、設計マンのバイブル「防火避難規定の解説」で、主要構造部として取り扱うと明言されており、耐火、イ準耐、ロ準耐と耐火性能ごとにどれだけの性能とすべし、と記載されています。
ただ、上記解説書でも準耐火建築物であれば、イ-1以外は45分準耐火で良いとされており、防火上主要な間仕切りには1時間準耐火性能までは要求されていません。

このことからも、ご質問された方が疑問に思ったのだと思いますし、私も過大な要求であると考える次第です。

ロ-2準耐火建築物の延焼ライン外のスパンドレルは30分準耐火でOK

見出しに書いたように、極端な例を上げるならば、ロ-2準耐火建築物のスパンドレルは、その部分が延焼のおそれのある部分に該当しなければ、30分準耐火の認定が取れている外壁材でOKとなるわけです。

準耐火構造の性能基準については、先ほどの「防火避難規定の解説」最新版のP19に詳しいです。

防火避難規定の解説では、45分準耐火構造、1時間準耐火構造の非耐力である外壁の性能について、延焼のおそれのある部分に該当しなければ、30分の準耐火性能で良い、と解説しています。(告示の仕様をまとめたものです)

ロ-2準耐火建築物は、準耐火建築物ではあっても、主要構造部は「準耐火構造」ではありません
これは、竪穴区画を必要とする建築物に該当するかしないかの判断基準にもなる、紛らわしいけれども重要な部分(理解)です。

大切なのでもう一度言いますと、ロ-2準耐火建築物は「準耐火建築物」ではあるが主要構造部は「準耐火構造」ではないのです。

繰り返しになりますが、防火区画そのものは令112条1項で「令115条の2の2」に規定される性能、すなわち1時間準耐火性能が要求されています。
(当然、耐火建築物であれば、主要構造部である壁は耐火構造である必要があるので、防火区画も当然耐火構造となります)

しかし、スパンドレルは「準耐火構造」であればよく、防火区画を構成する壁と同等の性能である必要はない、ということになります。

しかし結局は審査機関の判断でどうにもならない可能性アリ

最後の最後でがっかりさせるようなことを申し上げますと、確認申請を提出した先によっては、ご質問された方と同じように「1時間でよろしく」と「ありがたいご指導」をいただくことになる可能性が十分あります。

民間の指定確認検査機関は、建築地の特定行政庁の方針に従うことが多いので、民間に提出する際は予め特定行政庁と打ち合わせして裏をとっておくといいかもしれません。
特定行政庁が「1時間じゃなきゃダメよ」と言い始めたら、もう諦めるしかありません。

なるべく穏便に、

・基準法には「スパンドレルの性能は1時間準耐火性能を要する」とまでは記載がないこと
・防火上主要な間仕切りとは性質が異なること
・「防火避難規定の解説」P19の表を見せてみる
・ロ-2準耐火建築物は準耐火構造の部位が無いこと

などを引き合いに出して、1時間準耐火性能までは要らないんじゃないですか、と訴えてみるといいと思います。
喧嘩腰じゃダメですよ、なるべく穏便に打ち合わせしてください。

私の見解では、スパンドレルの性能は「準耐火構造」であれば、1時間までの性能である必要はないと考えます。
最終的には審査機関の判断となりますが、計画の際に無駄(時間と建築コストの無駄)を省く手助けとなりましたら、幸いでございます。

※追加情報
Y様より以下の様な情報提供がありました。みなさまもご参考にされてください。
Y様、ありがとうございます。

(面積)500平米防火区画スパンドレルについて、確認申請の実例を報告します。
「準耐火建築物の防火設計指針(1994)
発行:日本建築センター
P78の4)外壁のスパンドレル ア.区画に接する部分を含み、幅90センチ以上の部分を耐火構造又は準耐火構造(45分耐火で良い。)であること。」
明石市--性能規定重視して60分必要
神戸市--本書に準じ45分で可能

さらにF様より日本建築センターの資料に、スパンドレルの性能についての言及があると教えていただきました。
「木造建築物の防・耐火設計マニュアル -大規模木造を中心として-」講習会の質問と回答について
上のリンクのページにPDFがあり、その資料のNo.12に以下のように記載されています。

supandoreru mokuzou

この資料によると、スパンドレル部分の性能は防火区画の性能に準ずる必要はないとしています。

F様、ありがとうございました。

建築物の防火避難規定の解説2012
by カエレバ

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