建築基準法 第1条の意味するもの

実務はもとより、建築士の試験勉強においても、建築基準法の第1条は読まれることはほとんどなさそうです。
特に試験では、これで設問を作るのも大変なくらい簡潔です。
しかし、建築業界に身を置くものとして、この「第1条」について正確に理解していなくてはいけないのではないでしょうか。

建築基準法 第1条

(目的)
第一条  
この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

この最低の基準という部分をいいように捉えてしまっている業界関係者を見たことがあります。
ある住宅メーカーの営業マンなんですが、その営業マンのおすすめする住宅は過剰と思えるくらいあらゆるところがどの業者のどの住宅よりも秀でているというのです。
そしてお値段もお高い。
でも、営業マンいわく
法律では最低の基準しか定められていない
でもその基準で作る家のなんともろく暮らしにくいことか。
私たちの提供する住宅はそんな基準がかすむほどの性能を持っています。
だから高くても買って」
と。

第1条でいう「最低」とは、憲法第13条にある「個人尊重の理念」に基づき、建築基準法という法律をもってしてもその制限は最低限のものでなくてはならないという部分から来ています。

また、実際建築基準法の示す最低基準だけで設計して、エンドユーザーが満足する建築物が出来上がるとは到底思えません。
その建築物の周辺環境や与条件などから導き出される最適解が、求められる性能や構造になるのであって、それらがなおかつ建築基準法に適合していなければならないということですね。

実際は、建築基準法に基づき、条例や建築協定などによって最低といえないくらい規制が強化されている場合もあります。また、建築基準法の前身である市街地建築物法は、警察の管轄でした。
ここからも読み取れるように、建築基準法第1条でいう「最低」は、建築技術についての「最低」ではなく、取り締まり上の「最低」であるとも考えられます。

あんまり営業マンのセールストークに目くじらを立ててもいけませんが、建築基準法の根本的な理念を理解すれば、おのずと建築基準法が求める基準がどうしてそうなのかということが、少しずつ分かってくるはずです。

概念的な部分なので、私の解釈もおかしいところもあるかもしれませんが、ただ条文に出てくる数値や条件だけに追い回されることがないようにしなければいけないという、自分への戒めの意味合いもあるのです。

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