建築基準法 うっかりミスの前に知っておきたい条文

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確実に覚えておきたい建築基準法の記載ルール

参考書だけでなく、建築基準法を読んでみる

建築基準法は条文に数字が振られていて、通常順番に読んで行くことが多いです。
ですが、ときには前後の条文に重要な条件が書かれていたりして、それを読み逃すと「うっかりミス」に直結します。
だったら、代表的な「うっかりの根源」をあらかじめチェックしておけば、それを法令集に書きこむか、メモをデスクにでも貼っておいて設計案の法規チェックの時に漏らさないようにしてあげればいいのです。
では代表的なものから。

基本建築関係法令集 法令編 平成29年版
by カエレバ

条件が他の条文に書いてあるもの

建築基準法施行令第122条第2項
2 
三階以上の階を物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物にあつては、各階の売場及び屋上広場に通ずる二以上の直通階段を設け、これを次条の規定による避難階段又は特別避難階段としなければならない。

これだけ読んで、過去の物件を思い出し変な汗がタラリ、とした方は正常な感覚の持ち主ですが、「うっかり」を起こしやすいとも言えます。この条文には実は前提条件があり、前の前の条文にそれが書いてあります。

建築基準法施行令第121条第1項第二号
二  物品販売業を営む店舗(床面積の合計が千五百平方メートルを超えるものに限る。第百二十二条第二項、第百二十四条第一項及び第百二十五条第三項において同じ。)の用途に供する階でその階に売場を有するもの

「床面積の合計が千五百平方メートルを超えるもの」と「第百二十二条第二項、第百二十四条第一項及び第百二十五条第三項において同じ。」という、超重要な前提がさらりと書いてあります。これを読み逃すと、3階建ての小規模な物販店にさえ、屋上広場や2以上の直通階段が必要になって、レンタブル比とコストが最悪なことになってしまいます。
(なお令122条第2項の規定は、われらがバイブル、「防火避難規定の解説」にもあるように、百貨店等に屋上広場の設置を義務付けたものではなく、屋上広場がある場合にはそれに通ずる2以上の直通階段を設けなさい、という意味合いです。従って、床面積の合計が1500㎡を超える物販店舗で、5階以上の部分を物販店舗の用途に供しない場合は、屋上広場の設置は不要となります。)

それこそ、該当する三つの条文にそれぞれ1500㎡を超える旨、記載してもらえばありがたいのですが、法令には一貫した表現ルールがあるそうで、建築基準法だけそのルールを破って表現することはできないんだそうです。

では他にはどんなものがあるでしょうか。

規定される具体的数値が別の条文に書いてあるもの

建築基準法施行令第2条第1項第四号
四 
延べ面積 建築物の各階の床面積の合計による。ただし、法第五十二条第一項 に規定する延べ面積(建築物の容積率の最低限度に関する規制に係る当該容積率の算定の基礎となる延べ面積を除く。)には、次に掲げる建築物の部分の床面積を算入しない。


自動車車庫その他の専ら自動車又は自転車の停留又は駐車のための施設(誘導車路、操車場所及び乗降場を含む。)の用途に供する部分(第三項第一号及び第百三十七条の八において「自動車車庫等部分」という。)

専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分(第三項第二号及び第百三十七条の八において「備蓄倉庫部分」という。)

蓄電池(床に据え付けるものに限る。)を設ける部分(第三項第三号及び第百三十七条の八において「蓄電池設置部分」という。)
ニ 自家発電設備を設ける部分(第三項第四号及び第百三十七条の八において「自家発電設備設置部分」という。)


貯水槽を設ける部分(第三項第五号及び第百三十七条の八において「貯水槽設置部分」という。)

自動車車庫等の床面積を容積率算定から緩和できるのは、ほとんどの方が体に染みついていると思いますのでそんなにうっかりすることはないとは思いますが、平成24年9月の法改正で備蓄倉庫や自家発電設備についても容積緩和の対象になったので、ちょうどいい機会ですから読みなおしておくのもいいと思います。ちなみに上限についてはこちらです。

建築基準法施行令第2条第3項
3  第一項第四号ただし書の規定は、次の各号に掲げる建築物の部分の区分に応じ、当該敷地内の建築物の各階の床面積の合計(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、それらの建築物の各階の床面積の合計の和)に当該各号に定める割合を乗じて得た面積を限度として適用するものとする。

一  自動車車庫等部分 五分の一
二  備蓄倉庫部分 五十分の一
三  蓄電池設置部分 五十分の一
四  自家発電設備設置部分 百分の一

五  貯水槽設置部分 百分の一

あらかじめ、節や章全体に関する条件を与えるもの

ほかにも多少毛色は違いますが、建築基準法第41条の2では
この章(第八節を除く。)の規定は、都市計画区域及び準都市計画区域内に限り、適用する。

と、章全体を指定していたり、建築基準法施行令第117条は
この節の規定は、法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、前条第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室を有する階又は延べ面積が千平方メートルをこえる建築物に限り適用する。

と、節全体を指定しています。もしこういった前提条件を示す条文を知っておきたい場合は、法令集の全文が表示されるサイトなどで[Ctrl+F]による語句検索で「において同じ」とか「に限り適用」といった言葉を検索すると全体を把握できるのではないでしょうか。

e-gov 建築基準法
e-gov建築基準法施行令

そのうえで、重要と考える部分は法令集にガッツリ書きこんでしまえばいいのです。
ただし、試験に持ち込む法令集にはあまり具体的な書き込みは違反になりますから、条文やページ数の書き込みで留めておくようにしましょう。
いずれにしろ、「不親切だ」と不平を言っていても始まらないので、だったらこちらから対策してしまうということですね。


(屋上広場の記載を追記しました。A様からのご指摘により修正しました。ありがとうございます。2014/07/21)

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by カエレバ

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