民泊新法(住宅宿泊事業法)と建築基準法の関連などまとめ

国交省から、住宅宿泊事業法(民泊新法)について、ガイドラインの策定などアナウンスがありました。

昨今のインバウンド需要、東京オリンピックにむけてさらなる外国人観光客の増加に対応していくためのものですが、建築設計においても知っておくべき内容がありますので、建築基準法に関連する内容や知っておくと良さそうな項目についてまとめます。

民泊を始めたい人向けでなく、民泊を始めたい施主、クライアントに相談された時に慌てないための記事となっています。

※記事中の画像は国交省の公式サイトに掲載されている記事から抜粋しています。

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住宅宿泊事業法の概略について

住宅宿泊事業法は昨年(平成29年)6月16日に公布され、今年(平成30年)6月15日に施行される予定となっています。

法施行にあたり、住宅宿泊事業法の概略についてまとめます。
基本的な情報はすべて国交省(住宅宿泊事業法についてご紹介)のサイトにあります。要点を抜粋してまとめます。

住宅を提供する者は、都道府県知事への届け出が必要となります。
住宅宿泊管理業者となるには国土交通大臣への登録申請、住宅宿泊仲介業者となるには観光庁長官への登録申請が必要となります。

また、「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」が策定されています。こちらも国交省の公式サイト(「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」を策定)で確認できます。

法文を読むだけではわかりにくい点について、わかりやすく記載されています。

ガイドラインに記載されている内容の概要

(1) 住宅宿泊事業関係
  〇 マンション管理規約に住宅宿泊事業についての定めが無い場合の届出添付書類
  〇 本人確認の方法や宿泊者名簿についての留意事項等
  〇 法第18条に基づく制限条例についての基本的な考え方、留意事項等
(2) 住宅宿泊管理業関係
  〇 住宅宿泊管理業の登録要件等
(3)住宅宿泊仲介業関係
  〇 住宅宿泊仲介業の登録要件等
  〇 無届出物件等の違法サービスのあっせんの禁止に係る考え方等
(4)その他
  〇 その他所要の事項について記載

住宅宿泊事業法と建築基準法が関連する部分

宿泊者の安全確保を図るための措置

民泊施設の安全対策に関しては、住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)(pdfファイル)のP19を確認するのがわかりやすいと思います。

① 安全措置についての一覧表

法11条1項2号

届出住宅に人を宿泊させる間、不在(一時的なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものを除く。)となるとき(住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅との距離その他の事情を勘案し、住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなくてもその適切な実施に支障を生ずるおそれがないと認められる場合として国土交通省令・厚生労働省令で定めるときを除く。)。

国規則第1条(第1号及び第3号)
第一条
住宅宿泊事業法(以下「法」という。)第六条の国土交通省令で定める措置は、次に掲げるものとする。

国土交通大臣が定めるところにより、届出住宅に、非常用照明器具を設けること。

届出住宅に、避難経路を表示すること。

前二号に掲げるもののほか、火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を
図るために必要な措置として国土交通大臣が定めるもの

なお、住宅宿泊事業法の規則は3種類あり、ここでは「国交省関係規則」について記載しています。

② 避難経路の表示にあたって

③消防法令との関係について

上記3項目についてのより具体的な措置方法、考え方は告示の解説書を参照することになるでしょう。
図表を全て貼り付けるとそれだけでいっぱいになってしまうので、詳細はリンク先からご確認下さい。

民泊の安全措置の手引き~ 住宅宿泊事業法における民泊の適正な事業実施のために ~(pdfファイル)

国土交通省告示第千百九号 本文(pdfファイル)

参考:住宅宿泊事業法 第6条

第六条
住宅宿泊事業者は、届出住宅について、非常用照明器具の設置、避難経路の表示その他の火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置であって国土交通省令で定めるものを講じなければならない。

住宅宿泊事業法における建築基準法上の用途との関係

国交省から、民泊に供される住宅用途については、以下のようにアナウンスされています。

住宅宿泊事業が行われる届出住宅は、人の居住の用に供されている家屋を一時的に宿泊事業に活用するものであること等から、住宅宿泊事業法第 21 条において、建築基準法(昭和 25 年法律第 201 号)上の「住宅」、「長屋」、「共同住宅」又は「寄宿舎」であるとしています。
住宅宿泊事業法の届出住宅については、「住宅を利用して宿泊サービスを提供する施設に係る建築指導行政における関係行政機関との連携体制の構築について」(平成 29 年3月 17 日付け国住指第 4339 号)において通知している、旅館業法に基づく許可を得ることが必要とされる建築基準法上原則としてホテル・旅館に該当する施設とは異なります。

参考:住宅宿泊事業法21条

第二十一条
建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)及びこれに基づく命令の規定において「住宅」、「長屋」、「共同住宅」又は「寄宿舎」とあるのは、届出住宅であるものを含むものとする。

建築基準法48条では、住宅・長屋・共同住宅・寄宿舎は工業専用地域以外で建築可能となっていますが、ホテル・旅館は住居専用系および工業系の用途地域では建築不可です。

住宅宿泊事業法で、建築士が知っておくと役に立ちそうなこと

住宅宿泊事業法施行令策定に当たってのパブリックコメント質疑応答

いわゆるパブコメの質疑応答一覧です。
具体的な内容に言及している部分もありますので、理解を深めるのに役立ちます。
また、建築基準法改正のパブコメと異なり、質問事項がかなり多いことから、関心の高さが伺えます。

住宅宿泊事業法施行令及び住宅宿泊事業法施行規則等の案に関する意見募集の結果について(サイトへのリンク)

住宅宿泊事業法施行令及び住宅宿泊事業法施行規則等の案に関するパブコメ意見と考え方(pdfファイル)

違法民泊物件の仲介等の防止措置

違法に民泊事業を行うことのないよう、住宅宿泊事業法の施行前と施行後でどのような措置を講ずべきか、まとめられています。

「違法民泊物件の仲介等の防止に向けた措置について」(民泊仲介サイト運営事業者あて通知)のポイント(pdfファイル)

住宅宿泊事業法施行まで

住宅宿泊事業法施行後

マンションの管理規約に関すること

設計においては、マンションの管理規約に関わることはあまりないと思いますが、マンションでの民泊は問題になっているケースも多いようですので、管理規約に関する取扱いについても知っておいて損はないでしょう。

(マンション標準管理規約とは、国交省がマンションの管理規約作成にあたっての参考となるよう作成したものです。)

地方自治体の条例による民泊締め出しに対する懸念

参考記事:

厚労省と国交省、民泊新法ガイドライン策定で「0日規制」をけん制

民泊新法(住宅宿泊事業法)については、地方自治体が条例でその制限を厳しくするなどの措置をとることが出来ますが、年間営業日を0日と制限するような条例の制定は民泊の普及を妨げるものとなる恐れがあるため、慎重な運用を求めるよう厚生労働省と国交省が申し伝えている、というものです。

ここからも、今後の民泊のあり方については国をあげて取り組んでいることが見て取れます。

民泊関連 参考図書

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