建築基準法改正案が閣議決定 法改正が着々と進行中です

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合理的かつ実効性の高さを目指した建築基準法改正案が閣議決定しました

昨日3月7日に建築基準法改正案が閣議決定されました。

まずは、色々なニュースメディアの取り上げ方の違いを見てみます。

エレベーター事故巡る国の権限強化へ
NHK NEWS WEBより抜粋(ニュース記事へのリンクが切れたため修正)

エレベーター事故などが起きた際、国の職員や専門家が立ち入り調査を行ったりエレベーターのメーカーなど関係する企業に資料の提出を求めたりすることができるようになります。
また、調査に従わなかったりうその報告をしたりした場合の罰則を盛り込み強制力を持たせています

建築基準法改正案が閣議決定 構造適判制度、容積率制限合理化など盛る
住宅新報 WEB

政府は3月7日、建築基準法の一部を改正する法律案を閣議決定した。
これは、より合理的かつ実効性の高い建築基準制度にするため、木造建築関連基準の見直し、構造計算適合性判定制度の見直し、容積率制限の合理化、建築物の事故等に対する調査体制の強化などを盛り込んだもの。

(yahooニュースは住宅新報のニュースを掲載)

国に立ち入り調査権限 エレベーターや事故や遊園地遊具事故
日本経済新聞 速報 社会

政府は7日、エレベーター事故などが起きた施設に国が立ち入り調査できる権限を新たに盛り込んだ建築基準法改正案を閣議決定した。罰則も定め、確実な原因究明と再発防止につなげる。防火設備の定期点検の対象も拡大し、診療所などの小規模施設でも点検が行われるようにする。今国会での成立を目指す。

たったこれだけの記事を見ても、一般紙と専門紙では、やはり取り上げ方が全然違います。

エレベーターや遊具(建築確認が必要な工作物)での事故を受けた法改正内容は、広く職種や世代を問わず関心が寄せられるものですから、一般紙ではその部分をメインに取り上げるのもうなずけます。

しかし、建築業界に身を置く者にとっては、もっと厄介な部分である「構造適判制度」に関する改正が最大の関心事です。

設計者サイドもそうですし、行政や指定確認検査機関サイドも、施行日の前後は混乱が発生することが予想されます。

構造適判制度創設の際の混乱が再び訪れてしまうのでしょうか。

今回の改正に盛り込まれた法案のポイント

これは国交省のホームページにすっかりキレイにまとめられていますので、私がいろいろ語るより、そちらを参照したほうが早いです。

建築基準法の一部を改正する法律案について
(国土交通省 報道・広報)

上記サイトの概要には7項目が挙げられていますが、ここでは構造適判制度と仮使用について書きたいと思います。

まだ、国会を通っていない状況ですが、ニュースにも今国会での成立を目指しているとあり、恐らくこのまま可決され、改正されることが予想されます。

この改正で何が変わるのか、立場の違いで面倒になるのか楽になるのか考えました。

今回の建築基準法改正案で早めに情報を集めておきたい2つのポイント

構造計算適合性判定制度の見直しについて

過去の記事でも適判制度見直しについて書いていますが、より具体的な改正案が公開されましたので改めて考えてみます。

構造計算適合性判定(適判)制度がそろそろ見直されそうです

建築主が適判を直接申請できるようになる

改正条文で該当する部分は以下の条文です。

建築主事は、前項の場合において、申請に係る建築物の計画が第六条の三第一項の構造計算適合性判定を要するものであるときは、建築主から同条第七項の適合判定通知書又はその写しの提出を受けた場合に限り、第一項の規定による確認をすることができる。

今までは構造適判は、確認審査を行う機関(行政・民間)を経由して適判機関へ審査依頼が行われていました。

しかし今回の改正で、建築主(つまり代理者・設計者)が直接、適判機関を選んで依頼し、確認とは別に判定通知を受ける仕組みとなります。

兼ねてからの改正情報では、適判機関も都道府県ではなく国が指定するような話もあったので、適判機関が少なくて困っていた地域での建築については、利便性が上がることが予想されます。

ただ、どう考えてみてもわからないのが、適判機関に提出される構造計算と確認申請に添付される構造計算が同一であることを、どのように担保するのかという問題です。

小規模な建築物ならまだしも、計画によっては千数百ページもの計算書を逐一確認しなければならないのでしょうか。
確認するのは、適判機関でしょうか、確認審査機関なのでしょうか。

計算の前提条件だけ見てOK!って訳にはいきません。

これって、世の中が「姉歯」まみれになりはしませんか?
ただでさえ行政での構造審査は緩めです。

適判さえ通ってしまえばこっちのものとばかりに、行政への確認申請が激増し兼ねません。

建設業界からの政治家への圧力がいくら強いからといって、これでは元の木阿弥、これまでの適判制度の地位向上が水泡に帰してしまいます。

それとも、国交省の頭脳集団が何かすでに対策を講じているというのでしょうか。

せっかく世の中が建築物の安全について真面目に考えつつあるというのに、この改正内容は全く腑に落ちません。

今後も情報を追いかけて行きたいと思います。

新たな資格の創設

以下の様な条文が改正に盛り込まれています。

構造計算適合判定資格者検定
第五条の四
構造計算適合判定資格者検定は、建築士の設計に係る建築物の計画について第六条の三第一項の構造計算適合性判定を行うために必要な知識及び経験について行う。

受験資格は以下のとおりです。

構造計算適合判定資格者検定は、一級建築士試験に合格した者で、第六条の三第一項の構造計算適合性判定の業務その他これに類する業務で政令で定めるものに関して、五年以上の実務の経験を有するものでなければ受けることができない。

以下の▲でくくった部分について、国交省に確認しましたところ、新設される資格は「構造計算適合性判定員」に代わる資格であることがわかりました。

ルート2の構造計算について構造適判を省略できる「比較的簡易な構造計算について、一定の要件を満たす者が審査を行う場合」の「一定の要件を満たすもの」に関する詳細はまだ公表できる段階ではないとのことでした。

紛らわしい情報をお伝えしてしまい申し訳ありません。
修正致します。
(私の勝手な意見という意味合いで、修正前の記載も残しておきます。)

▼▼▼ここから▼▼▼
この資格は、構造適判の審査機関に在籍する「構造計算適合性判定員」とは異なります。

判定員については「構造計算適合性判定員の要件について」(pdfファイルです)を御覧ください。

新資格の取得者が、今回の法改正で登場する、「比較的簡易な構造計算について、一定の要件を満たす者が審査を行う場合には、構造計算適合性判定を不要とできる」の「一定の要件を満たす者」の事です。

つまり行政や指定確認検査機関は、この資格の取得者を確保しなければならないわけです。
またはすでに在籍している職員が、資格を取得するということです。

ただ、新資格が増えて大変そうにも思えますが、以前からの情報によれば構造計算ルート2の建築物についての審査が該当する見込みで、この物件数の確認申請が極端に少ないのです。

構造計算ルートごとの構造設計の難易度について詳細を語る能力を私はあいにく持ちあわせておりませんが、わざわざルート2で設計して適判をかわそうとする設計者がどれほど現れるかどうかが、この改正の善し悪しを決めそうです。

指定確認検査機関が申請者の利便性向上のために、新資格取得者増加に向けて動き出すのか、構造設計者側のルート2採用が活発になるのか、このあたりのバランスによっては、せっかくの新資格も立ち消えしてしまう恐れがあります。
▲▲▲ここまで▲▲▲

既存不適格建築物への増築案件も条件により構造適判が必要になる

この改正は、いままでよく放っておいたな、という内容に思えます。

構造計算適合性判定(適判)制度がそろそろ見直されそうです
でも書きましたが、「この規模で構造適判不要って不自然だろ」っていう建築物が、既存不適格建築物への増築であるがゆえに確認審査のみで建築されて来たことのほうが不思議です。

それでもやっぱり違和感があるのが、ここでは厳しくなる改正ですが、そもそもの構造適判制度の改正自体がちょっとモヤモヤした改正なので、上手にくぐり抜けようとする輩が出てきてもおかしくはありません。

増築案件については、法改正前に駆け込み申請が増加する、なんてことも十分考えられます。

仮使用承認制度における民間活用について

横浜市の件とは別の次元の話

確認申請の民間完全移行への理想と現実では、行政と指定確認検査機関との役割分担を無理矢理進めたいような事例について書きましたが、仮使用承認制度の改正においては、次元が別です。

仮使用は、「確認」でもなければ「許可」でもなく、「承認」という立場でした。

その審査内容も避難安全に係る部分が大半ですから、民間でも対応可能との判断は当然と言えます。

これを機会に、「許可」の部分まで民間が踏み込んでいくことは、あまり期待できそうもないですが、こういう役割分担の推進は望ましい方向性であると言えます。

行政、設計者、指定確認検査機関の3者にメリットがありそうだ

行政は自分の所で審査もしていない建築物について、仮使用承認のために一から審査しなくて良くなります。

設計者も行政と同様で、確認を見ていない行政に対して、確認申請と同じくらいのエネルギーをそそぐ必要が無くなります。
ただし、手数料は民間のほうが高額になることが予想されます。
仮使用承認の手数料は、もともと高額ですから、指定確認検査機関がどのような手数料設定を行うのか、気になります。

指定確認検査機関も、行政での仮使用承認の審査で、行政から変なツッコミを受ける心配が無くなりホッとしているかもしれません。
しかも、仮使用承認分、完了検査分と、手数料をガッチリ確保できるおまけ付きです。

建築基準法改正案が閣議決定 まとめ

設計者側にも確認審査側にも影響が大きそうなのは、やはり構造適判制度の改正でしょう。
建築主、設計者の利便性の確保も重要ですが、建築物の安全性が蔑ろにされそうで心配です。

まだ、政令が公開されていないのでなんとも言えない部分も多いですが、経済活動優先で人命が疎かにされるのだけは断じて許されません。
姉歯事件でどれだけの人たちが絶望を味わったか、政府は忘れてしまったのでしょうか。

日経アーキテクチュア等でも特集が組まれることが予想されますので、今後明らかになる情報も目を皿のようにして追いかけて行きます。

※構造計算適合判定資格者に関する記載に誤りがありましたので、記事中で修正情報を追記しました。
(2014/3/17)

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