確認申請の民間完全移行への理想と現実

スポンサーリンク

確認申請の民間完全移行への理想と現実 横浜市の取り組みを受けて

日経BPのケンプラッツで、こんなニュースが取り上げられました。

事前相談は確認検査機関へ、横浜市が体制見直し

設計者からの事前相談は受け付けない――。横浜市が4月1日から建築確認の事前相談体制を改める。個別案件の相談は指定確認検査機関、法令解釈や運用の考え方は特定行政庁という役割分担を徹底。業務の重点化・効率化、執行体制の整備を図り、審査の質の向上につなげる。

ケンプラッツ2014/03/06記事より一部抜粋
【コメント欄が結構盛り上がっていておもしろいです】

横浜市が今後の確認行政のあり方について一石を投じる運用を始めるようです。
2000年に建築確認が民間開放された時の理念に立ち返って、制度の見直しを図るとのことで、言われてみればその通りです。
しかし、そう簡単に運用の切り替えが進むのでしょうか。

確認が民間に開放されてもなお、設計者も指定確認検査機関も「お上」に頼らざるをえない

建築基準法という大前提がありながら、地域ごとに様々な取扱があるのが建築確認の世界。

確認申請の民間への移行は都市部ほど進んでいて、行政と民間の役割分担が民間開放当初の狙い通りとなりつつあります。

一方、法令解釈の主導権はいまでも特定行政庁が握っています。

さらに、都市計画情報や認定道路の情報は行政にあるため、設計事務所や建築業者はそれらの内容と合わせて一度に確認申請の相談ができるから、役所を訪れるわけですね。

一回で全部済むんですから、効率的ですし、誰でもそう考えます。

指定確認検査機関も確認審査において判断に迷う部分は、特定行政庁にお伺いを立て、お墨付きを得なければなりません。

確認済みを取り消したり、違反建築物の処理ができるのは、行政だけに許された特権だからです。

横浜市の運用により、民間の指定確認検査機関に大きな権限が与えられるようにも見えますが、そうではありません。

相談窓口が民間に限られれば、おのずと相談した指定確認検査機関に申請する流れになるのではないでしょうか。
なぜなら、相談先でない審査機関に申請するのは無駄が多すぎるからです。

その結果、どうせ民間に申請するならと、「早くて、安くて、緩い」指定確認検査機関に人気が集まってしまう懸念もあります。

確認申請の品質を求める設計事務所がある一方で、申請手数料がいかに安いか、審査期間がいかに短く済むかを最大の条件にして審査機関を選ぶ設計者、代理者も少なからずいるはずです。

現状の確認申請を取り巻く状況は国交省がバッチリまとめてくれていますので、こちらを参照下さい。

効率的かつ実効性ある確認検査制度等のあり方の検討(pdfファイルです)

WEB上で都市計画情報を公開している特定行政庁ほど、民間開放の恩恵を受けている

今回の横浜市の運用の場合、設計事務所や建設業者が不便に思うことは無いのでしょうか。

実は横浜市を始め行政情報のデジタル化と情報公開が進んでいる行政は、インターネットで都市計画情報や認定道路の情報を調べることが出来ます。

つまり、都市計画情報は事前に事務所等に居ながらにして調べられるので、あとは建築確認申請に関する問い合わせをどこですればいいか、という問題だけになるわけです。

したがって、都市計画情報のデータベース化や情報公開が進んでいる特定行政庁では、「確認申請の事前相談は民間へ」という流れが一気に進んでいくことが考えられます。

一方、取り組みが進んでいない特定行政庁、そこまで費用をかけられない特定行政庁は、民間開放の恩恵を享受できないままということです。

中心都市部と地方都市、田園農村地域とではっきりと格差が出て来ているのではないでしょうか。

法令解釈の共有化の難しさ

横浜市では冒頭の記事のように、確認申請の相談窓口は民間に一本化し、法令解釈や考え方は行政と民間で共有化しようとしています。

この考え方自体、合理的で一見素晴らしいのですが、実態は簡単にはいかないような気もします。
というのも、行政と民間との間での確認申請の審査力の差が、開く一方だからです。

そのうち、民間指定確認検査機関が行政に取扱を問い合わせても、確認審査の経験が少ないのを隠すべく「民間さんにお任せしますよ」という事態になってしまうかもしれません。

行政が確認申請を見なくなればなるほど、そこの職員は確認申請についての知識がなくなっていくのは当たり前です。

ここ数年で極端に変化することはないにしても、20年くらい経った時、行政には確認申請を審査できる人がいなくなってしまうかもしれません。
抜本的な建築基準法の改正でも行なわれない限り、この不安は永遠に引きずられていくのではないでしょうか。

確認審査の相談窓口を民間に一本化 まとめ

行政は確認審査はもうやりたくないと思っている

行政は審査実務をせず、指定確認検査機関の業務チェックに特化したらどうか

相談窓口に指定確認検査機関の職員を常駐させたらどうか

行政が確認申請に時間を取られるのを嫌う様子はよく分かりました。

もういっそのこと、確認申請は民間にアウトソーシングして、行政側は最終的なチェック役に回ったらいいような気もします。

たとえば、民間と行政のダブルチェックの後に、確認済みにするというような・・・。
やっぱりこれも面倒ですね。

かなり極端な考え方かもしれませんが、民間の人間が確認行政の中枢に入る、天下りならぬ「天登り」によって、建築行政のレベル維持を図るような時代が来るかもしれません。

確認制度そのもののあり方がいっそう問われていく世の中になりそうです。

スポンサーリンク
関連コンテンツ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする