建築基準法第35条の3の意味や取扱、対応策について改めて調べました

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建築基準法第35条の3の意味や取扱、対応策など

過去の記事で、さらりと触れてきた建築基準法第35条の3。
この規定は、かなり厳しいものなので、要注意ですよと注意喚起してきました。

ここでは改めて、建築基準法第35条の3の本来の意味や考え方、対応策、取扱等についてまとめてみました。

建築基準法第35条の3の主旨を読み取る

まずは条文の確認から。
該当条文(建築基準法および施行令)は以下のとおりです。

(無窓の居室等の主要構造部)
第三十五条の三
政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない。ただし、別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供するものについては、この限りでない。

(窓その他の開口部を有しない居室等)
第百十一条
法第三十五条の三 (法第八十七条第三項 において準用する場合を含む。)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号のいずれかに該当する窓その他の開口部を有しない居室とする。
一  面積(第二十条の規定により計算した採光に有効な部分の面積に限る。)の合計が、当該居室の床面積の二十分の一以上のもの
二  直接外気に接する避難上有効な構造のもので、かつ、その大きさが直径一メートル以上の円が内接することができるもの又はその幅及び高さが、それぞれ、七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上のもの

建築基準法第35条の3の主旨

一般的に無窓の居室は、避難(脱出)および救助活動が困難であり、なおかつ、他の居室で発生した火災覚知も遅れがちとなります。

したがって、当該居室を区画する主要構造部の耐火性能や防火性能を高めることで、避難するための時間または救助隊が到着するまで安全でいられる時間を確保出来るようになります。

また、「誰にもわかる建築法規の手引」(新日本法規)という若干マニアックな資料によれば、

「建築基準法第35条の3の制限は大変厳しいものです。採光がとれず、避難も出来ないような無窓居室を可燃材で造ることを建築基準法は禁止していることになります」

とあり、法35条の3の規定をなんとかかわして乗り切ることを考えるというよりは、可燃材が用いられている場合は不適合であると認識したほうが良さそうです。

以下の当サイトの過去記事では、木造建築物で法35条の3に該当する無窓居室に対する措置として、「入れ子状に区画を造る」例を挙げていますが、記事にもあるように行政によっては不適合とされる(むしろそのほうが多いかもしれない)ので、特殊な設計をする場合は事前の調整・打ち合わせは必須となります。

無窓居室の判定、検討のうち、採光無窓に関する重要チェックポイント

「建築物防火避難規定の解説」による解釈の例

さらに、われらがバイブル、「防火避難規定の解説2012」のアフターフォローで、「木造準耐火でなんとかなりませんか」という質問があえなく撃沈しており、世の中の厳しさを痛感させられます。

「建築物の防火避難規定の解説2012」アフターフォロー 質問と回答
質問番号17
問:法35条の3において、居室を区画する主要構造部を木造の準耐火構造で造る場合は、不燃材料で造ると同等と扱ってよろしいか。

答え:取り扱えない。

大事なことなので当サイトでは何度もお伝えしていますが、設計業務をされている方で「建築物の防火避難規定の解説」を持っていない方、たいへん危険です。

いまや建築基準法並みに取扱のスタンダードとなっています。
ちょっと値が張りますが、経費で落ちませんか?

入手した際には、公開済みの質疑応答も印刷して本に挟んでおくと最大の威力を発揮します。
是非とも、設計の際には手元置いて、防火避難規定関係の検討をしてください。

建築物の防火避難規定の解説2012 正誤表やアフターフォロー情報
「建築物の防火避難規定の解説2005(6 版)」アフターフォロー 質問と回答(pdfファイルです)
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ついでと言ってはなんですが、建築基準法第35条の3に違反した場合のその建築物の設計者等は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。(法第99条第1項第5号)
上記違反が建築主等の故意によるものであれば、建築主等も同様に罰せられ(法第99条第2項)、法人又は人に対して両罰規定があります。(法第104条)

第九十九条  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(略)
五  第二十条(第四号に係る部分に限る。)、第二十二条第一項、第二十三条、第二十四条、第二十五条、第二十八条第三項、第二十八条の二(第八十八条第一項において準用する場合を含む。)、第三十二条(第八十八条第一項において準用する場合を含む。)、第三十三条(第八十八条第一項において準用する場合を含む。)、第三十四条第一項(第八十八条第一項において準用する場合を含む。)、第三十四条第二項、第三十五条の三、第三十七条(第八十八条第一項において準用する場合を含む。)、第六十一条から第六十四条まで、第六十六条、第六十七条の二第一項又は第八十八条第一項において準用する第二十条の規定に違反した場合における当該建築物、工作物又は建築設備の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、当該建築物、工作物又は建築設備の工事施工者)
(略)
2  前項第五号又は第六号に規定する違反があつた場合において、その違反が建築主、工作物の築造主又は建築設備の設置者の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築主、工作物の築造主又は建築設備の設置者に対して同項の刑を科する。

第百四条
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をした場合においては、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一  第九十八条第一項第一号(第十九条第四項、第二十条、第二十一条、第二十二条第一項、第二十三条、第二十四条、第二十五条から第二十七条まで、第二十八条第三項、第二十八条の二、第三十二条から第三十五条の三まで(以下略)

各行政ごとの35条の3に対する取扱、緩和措置など

建築基準法第35条の3における、「区画」や「主要構造部」の意味や行政庁ごとの取扱事例

建築基準法第35条の3では「区画」「主要構造部」という2つの用語が登場し、それぞれの言葉をどう捉えるかでいかようにも解釈出来てしまいます。

そこで、一部の特定行政庁では独自の取扱を示し、設計者の判断が誤った方向へ進まないよう軌道修正を図っています。

熊本県のケース

熊本県の取扱では以下のようになっています。(リンクはpdfファイルです)
熊本県建築基準法例規集

法第35 条の3 無窓居室を区画する主要構造部
法第35 条の3 に規定する「主要構造部」とは、無窓の居室とその他の部分とを区画している壁、床及び直上階の床又は屋根とする。

わざわざ「主要構造部」の意味について言及している理由は、法2条5号に規定される「主要構造部」とは意味が異なっているからです。

法2条5号では「構造上重要でない間仕切り」は主要構造部に該当しないとされていて、その通りに考えると法第35 条の3で耐火・不燃化しなければならない部分が不明確になるためです。

熊本県では法第35 条の3 に規定する「主要構造部」を明確に定めていますが、おおよそ日本中の特定行政庁は同様の考え方のようです。

ちなみに大阪府も同様の取扱を公開しています。(リンクはpdfファイルです)
建築基準法及び質疑応答集同大阪府条例&質疑応答集
P40を参照してください

四日市市のケース

取扱の整備が進んでいる四日市市ではどうでしょうか。

四日市市の取扱(リンクはpdfファイルです)←改正によりリンク切れとなりました

111.無窓居室の区画の規定の適用

令第111条第1項第一号及び第二号のいずれにも該当しない場合の居室を区画する主要構造部については、原則としてその居室まわりの間仕切壁、柱、床および梁が該当するが、耐火建築物で、その居室の間仕切壁が不燃材料で造られている場合は主要構造部とみなさないものとする。
また、主要構造部を準耐火構造とした準耐火建築物(イ準耐)についてはその居室のまわりの間仕切壁等が準耐火構造で造られていれば、不燃材料で造られたものとして取り扱う。

柱や梁が具体的に登場し、間仕切りや床に含まれている部分まで主要構造部とみなすとしています。

ただし、耐火建築物であり間仕切りが不燃材料であれば主要構造部とみなさないとし、緩和が図られています。

さらに、イ準耐に該当する建築物で、該当する居室の間仕切りを準耐火構造で造れば、不燃材同等とみなすとされ、「防火避難規定の解説」による判断の真逆となっています。

※注
平成27年4月1日より四日市市建築基準法取扱集(単体規定編)が改正されて、四日市市の上記の取り扱いは削除されているようです。
参考のために記載は削除しませんが、あくまで考え方の参考にとどめておくようにお願いします。
(2015/04/02追記)

神戸市のケース

神戸市は主要構造部の「仕上げ」について言及しています。

神戸市建築主事取扱要領(リンクはpdfファイルです)
P30参照

ⅱ-19 無窓の居室等の主要構造部
主要構造部の仕上げ材料は、次の通りとする。
(1) 主要構造部が耐火構造又は不燃材料で造られていれば、仕上げ材料の制限はない。
(2) 不燃材料で造らなければならないのは仕上げ材料の下地までである。

これは法35条の3の条文そのものからも読み取れるものと考えますが、「耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない」の「造らなければならない」は仕上げにまでは言及していないとされています。

建築基準法の他の条文でも同様な表現があります。

例えば建築基準法施行令第126条の2(排煙設備)の規定に、「防煙垂れ壁を不燃材料で造り又は覆われたもの」という表現がありますが、仕上げが不燃クロスだから適合している、とは当然ですが読めません。

つまり、「造る」と記載されている規定については、「仕上げを含まない構成部材のことを示す」と考えるのが適切です。

福岡市のケース

無窓の居室を区画する主要構造部について
主要構造部が木造の小規模な診療所
レントゲン室、暗室等は天井、壁を下記の仕様とすることで緩和を受けられる
PB12mm2枚貼+不燃クロス仕上げ

福岡市では建築基準法第35条の3の規定を特定の構造、用途の建築物について緩和しています。

ただ、レントゲン室や暗室が「居室なのか」という部分に疑問が残るのと、それ以外の例えば「手術室」は該当しないのかどうか、という部分が気になります。

もし福岡市で同様なケースに該当する場合は、さっさと市役所に確認しておきましょう。

平成28年11月13日追記
平成28年10月に福岡市の建築基準法取扱の内、単体規定に関する部分が前面改正になっています。
上記記載は、その改正により記述がなくなりました。
参考資料としてそのまま残しますが、新しい取扱を参照してください。

福岡市確認申請の手引き
このリンクから、3章の2単体規定で参照できます。

法35条の3における「区画」の意味するところ

法35条の3で言う「区画」は、防火区画や防火上主要な間仕切り等のように天井裏もしくは小屋裏まで達せしめなければならないかどうかは、法文からは読み取れません。

これもまた、特定行政庁によって指導内容が異なるから厄介です。

「法文に書いてないから不要」と言われたり、区画なのだから天井裏や小屋裏に達せしめて当然と言われたり。
同様に、法35条の3で言う「区画」を貫通する配管の措置は、防火区画と同様にしなければならないのかどうか。

天井裏の話と貫通措置の話は、いずれも法文の意味するところを考えれば「必要」と考えざるを得ませんが、止むに止まれぬ事情がある場合は、これもまた予め特定行政庁に事前に確認しておきましょう。

建築基準法第35条の3に関する諸々のまとめ

特別な取扱が定められていない限り、法35条の3に該当する無窓居室を有する建築物は、木造では建築できない。

法35条の3でいうところの「主要構造部」は必ずしも法2条5号の「主要構造部」と同一ではない。

特別な取り扱いについては、該当する特定行政庁の管轄内でのみ有効である。

区画は天井裏・小屋裏に達せしめ、設備配管は区画貫通措置を施しておくべし

結局、調べれば調べるほど、建築基準法第35条の3の規定は大変重く、厳しい規定であることがわかります。

上で取り上げたような特別な取り扱いについては、どの特定行政庁でも同じように扱ってくれるとは限りません。実際の建築地の特定行政庁との、どうにかして緩和が引き出せないかどうかを打ち合わせする際の参考程度にはなるかもしれませんが、あまり期待せずにいる方が賢明です。

そこで労力をかけるよりも、「建築基準法第35条の3」の意味合いを正確に理解し、緩和することを考えず明らかに適合する建築物を設計をするべきでしょう。

建築物の防火避難規定の解説2016
by カエレバ

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