既存不適格建築物の用途変更も一筋縄ではいかない

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用途変更の確認申請も楽じゃない。

既存不適格建築物の用途変更の場合、建築確認を受けるにはどんな調査や資料、手続きが必要なのでしょうか。
ストック重視の流れを作りたい国の思惑とは裏腹に、結構な手間と労力がかかるのが実際のところです。

用途変更に関連する条文

(用途の変更に対するこの法律の準用)
第八十七条  
建築物の用途を変更して第六条第一項第一号の特殊建築物のいずれかとする場合(当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除く。)においては、同条(第三項及び第五項から第十二項までを除く。)、第六条の二(第三項から第八項までを除く。)、第六条の三(第一項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第七条第一項並びに第十八条第一項から第三項まで及び第十二項から第十四項までの規定を準用する。この場合において、第七条第一項中「建築主事の検査を申請しなければならない」とあるのは、「建築主事に届け出なければならない」と読み替えるものとする。
2  建築物(次項の建築物を除く。)の用途を変更する場合においては、第四十八条第一項から第十三項まで、第五十一条、第六十条の二第三項及び第六十八条の三第七項の規定並びに第三十九条第二項、第四十条、第四十三条第二項、第四十三条の二、第四十九条から第五十条まで、第六十八条の二第一項及び第五項並びに第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の規定を準用する。

3  第三条第二項の規定により第二十四条、第二十七条、第二十八条第一項若しくは第三項、第二十九条、第三十条、第三十五条から第三十五条の三まで、第三十六条中第二十八条第一項若しくは第三十五条に関する部分、第四十八条第一項から第十三項まで若しくは第五十一条の規定又は第三十九条第二項、第四十条、第四十三条第二項、第四十三条の二、第四十九条から第五十条まで、第六十八条の二第一項若しくは第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の規定の適用を受けない建築物の用途を変更する場合においては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これらの規定を準用する。

一  増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合
二  当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものであつて、かつ、建築物の修繕若しくは模様替をしない場合又はその修繕若しくは模様替が大規模でない場合
三  第四十八条第一項から第十三項までの規定に関しては、用途の変更が政令で定める範囲内である場合

4  第八十六条の七第二項(第三十五条に係る部分に限る。)及び第八十六条の七第三項(第二十八条第一項若しくは第三項、第二十九条、第三十条、第三十五条の三又は第三十六条(居室の採光面積に係る部分に限る。以下この項において同じ。)に係る部分に限る。)の規定は、第三条第二項の規定により第二十八条第一項若しくは第三項、第二十九条、第三十条、第三十五条、第三十五条の三又は第三十六条の規定の適用を受けない建築物の用途を変更する場合について準用する。この場合において、第八十六条の七第二項及び第三項中「増築等」とあるのは「用途の変更」と、「第三条第三項第三号及び第四号」とあるのは「第八十七条第三項」と読み替えるものとする。

まず第1項で、類似の用途については確認は不要となっています。詳細は建築基準法施行令第137条の17。

(建築物の用途を変更して特殊建築物とする場合に建築主事の確認等を要しない類似の用途)
第百三十七条の十七  
法第八十七条第一項 の規定により政令で指定する類似の用途は、当該建築物が次の各号のいずれかに掲げる用途である場合において、それぞれ当該各号に掲げる他の用途とする。ただし、第三号若しくは第六号に掲げる用途に供する建築物が第一種低層住居専用地域若しくは第二種低層住居専用地域内にある場合又は第七号に掲げる用途に供する建築物が第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域若しくは工業専用地域内にある場合については、この限りでない。

一  劇場、映画館、演芸場
二  公会堂、集会場
三  診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設等
四  ホテル、旅館
五  下宿、寄宿舎
六  博物館、美術館、図書館
七  体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場
八  百貨店、マーケット、その他の物品販売業を営む店舗
九  キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー
十  待合、料理店
十一  映画スタジオ、テレビスタジオ

 

よくある勘違い:類似用途同士なら確認申請不要、とはならない。

1号から11号までの用途相互間の変更は建築確認が不要ですが、ただし書きにあるように、3、6、7号は現行法規での用途地域によっては建築確認が必要となります。
ちなみにそもそものところで、用途部分の面積が100㎡未満ならば、建築確認が不要なのは建築基準法第6条に記載されています、念のため。

用途変更の前提となる、既存建築物の法適合性

そして最も用途変更申請のハードルを上げているのが、

既存の建築物が検査済証の交付を受けているか
(建築確認済み証の写しや、図面、計算書もあることが望ましい)
過去の増改築の履歴が残っているか

この2つが達成されなければ、どんなに素晴らしい計画の用途変更であろうと、建築確認済み証は発行されません。というより、確認申請そのものが受け付けてもらえない可能性が高いです。

行政や確認検査機関によっては、検査済証の交付に代わり、当時の確認申請図書や登記事項証明の写しなどに基づいて履歴がわかれば受付してくれるところもあるようですが、都会ほど、要件は厳しいです。
つまり、竣工当時に適法に建築されたかどうかを証明するには、検査済証があることが大前提というわけですね。
用途変更の仕事だからといって安易に考えていると、クライアントの期待を裏切ることになるので、十分な下調べが必要になってくるわけです。

ただ、ここがクリア出来れば、あとは87条に記載のある項目をクリアしていけばいいだけです。

用途変更において遡及される規定は要チェック

87条第3項で規定される内容についてチェックしていき、それらを満たすように計画するというわけです。言い換えればその部分が遡及適用されるということになります。
ここで、87条3項には、法20条については記載がないので、構造計算については遡及適用の対象ではありませんが、用途変更により構造耐力上の危険性が増大しないかを検討しなければなりませんし、用途で決まる積載荷重によっては、補強等も求められる場合があります。

排煙関係や、避難関係は変更後の用途について検討しなければならないため、所定の開口部を追加せざるを得ない場面もあろうかと思います。

防火区画は用途変更においては遡及適用されない

特にコスト面に関係する重要なポイントで、面積区画のための防火シャッターの安全装置(挟まれ防止装置)は、ガッチリ遡及を受けますので、既存の防火シャッターに安全装置を設置しなければなりません。最悪の場合、シャッターのやり替えとなるとコストと工期を白紙撤回、なんてこともあります。


【2014/02/09 用途変更においては防火区画は遡及適用されないのですが、「される」となっていたため修正しました。用途変更と防火区画に関しては以下の記事に詳しいので参照ください。】
用途変更では防火区画は遡及適用されない:読者様のご指摘より

用途変更だから、間仕切りや内装の変更だけで簡単、とはいきませんので事前の調査、初期段階から確認申請先と十分に打ち合わせをしておかないと、時間もお金もかかりっぱなしになってしまうので、気をつけたいところです。

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