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用途変更では防火区画は遡及適用されない:読者様のご指摘より

公開日: : 最終更新日:2014/07/13 既存不適格建築物, 用途変更 , , ,

今回はA様より以下のようなご指摘を頂きました。

こちらの記事(竪穴区画のモヤモヤをスッキリさせる)の最後から5行目、
「また、用途変更や増改築の計画においても、防火区画は建築物全体に遡及する規定です。」
の部分が、次のような理由で、芳しくないというご指摘です。

以下、そのまま転載させていただきます。

用途変更によって既存部分の防火区画に遡及するとの記載がありますが、これは議論の余地がある部分だと思います。
用途変更は法3条第3項第三号がかからないので、遡及する条文は法87条第3項に記載がある物だけですが、このうち防火区画は『第36条中第28条第1項若しくは第35条に関する部分』には該当しないという解釈を、している審査機関・特定行政庁もあるのではないかと考えます。
例えば東京建築士会法規委員会が出している遡及条文チェック表を見ても、法87条第3項・法36条の部分で、防火区画には言及していません。
(法36条と関係のない排煙・非常照明・敷地内通路をなぜか強調していますが。)
また、『プロのための建築法規ハンドブック三訂版(建築規定運用研究会・ぎょうせい 平成24年8月10日)』のP.304にも用途変更がらみの記載がありますが、こちらでも令112区画~令114区画に関する規定が法87条第3項の準用規定からはずれています(わざわざ界壁を法30条の遮音構造だけに限定させている)。
増築では防火区画に関して法86条の7による緩和ができないので、法3条第3項第三号よりほぼ絶対に遡及せざるを得ませんが、用途変更に関しては審査機関・特定行政庁の意見を聞く必要があると考えます。
H14.06.01のS56告示1111号失効による竪穴区画のエレベーター乗り場戸遮煙性能や、H17.12.01の令112条第14項改正による防火設備の危害防止について、遡及するとしないとでは、(自主的に遡及対応すべきではありますが)かなりの差があると思うので・・・


東京建築士会の遡及条文チェック表は、サイト更新により、リンク先が無くなってしまいました
(2014/7/13)

用途変更では、防火区画は遡及適用されない

A様のようにしっかりと記事を読んでくださる方もいらっしゃること、本当にありがたく思います。
再度、法令集や諸々の資料を確認しました結果、見出しのように結論づけたいと思います。
記事の記載が不適当であったことをお詫びします。
(当該記事も修正しました。)

A様は、「審査機関の判断により遡及適用されるかどうかはブレがあるものの・・・」と表現されていますが、恐らく私に対してキツイ表現にならないような配慮をしてくださったものと考えます。
もう、涙で前が見えません。ありがとうございます。

とにかく、条文をいくら読んでも用途変更の場合は、防火区画について遡及適用するとは読めません。
例によって条文を確認してみます。

法3条2項、同3項、法87条について

まずは法3条の2項、3項3号

(適用の除外)
この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
(略)

この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。

前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、適用しない。
(略)
三  工事の着手がこの法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の後である増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替に係る建築物又はその敷地
(略)

法3条2項では、既存不適格建築物への法の遡及は基本的にはありませんと記載されています。

しかし、既存不適格建築物であれば、その後何をしても良いという訳にはいきませんので、3項の条件に当てはまるケースでは遡及適用します、と書いてあります。

そして今回の主役、用途変更と法3条について書いてある法87条の登場です。

(用途の変更に対するこの法律の準用)
第八十七条
建築物の用途を変更して第六条第一項第一号の特殊建築物のいずれかとする場合(当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除く。)においては、
(以下2項まで略)
3  第三条第二項の規定により第二十四条、第二十七条、第二十八条第一項若しくは第三項、第二十九条、第三十条、第三十五条から第三十五条の三まで、第三十六条中第二十八条第一項若しくは第三十五条に関する部分、第四十八条第一項から第十三項まで若しくは第五十一条の規定又は第三十九条第二項、第四十条、第四十三条第二項、第四十三条の二、第四十九条から第五十条まで、第六十八条の二第一項若しくは第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の規定の適用を受けない建築物の用途を変更する場合においては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これらの規定を準用する。
一  増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合
二  当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものであつて、かつ、建築物の修繕若しくは模様替をしない場合又はその修繕若しくは模様替が大規模でない場合
三  第四十八条第一項から第十三項までの規定に関しては、用途の変更が政令で定める範囲内である場合
以下略

法87条は用途変更に関する法の取扱を規定しており、現行法適合な建築物については2項で、既存不適格建築物については3項で遡及条文を規定しています。

法87条3項が今回のポイント

今回ご指摘頂いた、「用途変更でも防火区画について遡及適用される」という部分が誤りであることが法87条3項に記載されています。

防火区画は法36条という、採光から防火壁、設備までを網羅するブラックホールのような規定に含まれ、詳細は施行令112条に規定されています。

これだけ見ると、法87条3項に法36条とあるので良さそうに思えてしまいますが、わざわざ「第三十六条中第二十八条第一項若しくは第三十五条に関する部分」だけを限定的に遡及するよ、と言っています。

法36条の法28条1項と法35条に関する部分とは

法28条1項は居室の採光に関する規定で、緩和することができないタイプの採光規定です。
また、法35条は避難や消火に関する規定で、法36条に関連するのは消火設備の部分です。

したがって、法87条3項でただ単に「法36条」とあれば、防火区画も当然遡及適用の対象となりますが、「法36条中第28条1項もしくは第35条に関する部分」とありますから、防火区画は対象となっていないと判断できるわけです。

ここでさらに、A様がご指摘されているように、東京建築士会法規委員会の資料でまるで遡及適用が必要であるかのように強調されている排煙・非常照明・敷地内通路については、法35条に含まれるのは確かですが、法36条ともリンクするとは言い難い部分です。

この東京建築士会法規委員会の資料を根拠として、既存不適格建築物の用途変更の際に排煙や非常用照明の遡及適用を求められたとすれば、法文のどこをどう読めばそう解釈できるのかを申請先と話し合う必要があります。

昇降機技術基準の解説2009年版にズバリ明言されていました

また、エレベーター業界ではイエロー本と呼ばれている「昇降機技術基準の解説」という参考図書があり、その本の中でも防火区画(エレベーターなので面積区画もしくは竪穴区画)の既存遡及について記載がありました。
参考までにまとめてみると、

既存昇降機の改修だけを行う場合、内容にもよるが、重要な仕様の変更を伴う場合は確認申請が必要である。
この場合、建築物の増築や大規模な修繕、模様替には該当しないため、建築物の既存不適格部分を現行法に適合させる必要は無い。

例えば、竪穴区画が要求される建築物では、性能規定化が明文化された際に乗り場戸の遮煙性能については既存不適格となってしまった。
しかし、以下の様な改修であれば乗り場戸の改修までは求められない。(遡及適用されない)

1-既存の昇降機のみを取り替える場合
2-あらかじめ設けてある昇降路に新たに昇降機を設置する場合や昇降機の着床数を増やす場合で、竪穴区画に変更が及ばない場合
3-建築物の用途変更と昇降機の改修を同時に行う場合

とあり、法87条3項によるものは竪穴区画はそのままでいいですよ、とあっさり書いてありました。
ちなみに、

新たに昇降路や昇降機を設けたり、昇降路を区画する扉を変更する場合は、竪穴区画が新たに発生し、または変更されるので、遡及適用される

とも記載があります。

用途変更と既存遡及についてのまとめ

思い込みは危険で判断してはいけない

条文を正しく読み、正しく理解する

厳しいご意見は素直に聞く

というわけで、A様、ご意見ありがとうございました。

みなさまに支えられて、より良いサイト作りを目指します。

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