3Dプリンターが作り出す「建築の未来」は明るいか

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そろそろ現実味を帯びてきた、3Dプリンターによる「建設」

footfeet
近頃、3Dプリンターでの家づくりが実現しそうなのでは、と話題です。

3Dプリンターの歴史は意外と?古く、1980年の日本人の特許申請から始まりました。
2009年には熱溶解積層法の基本特許が失効したことで、安価な3Dプリンターが生み出され一般世間にも広く知られるようになってきました。

もともと大型造形物の検証用模型や工業製品の試作品作成に活用されてきた3Dプリンターを利用して、試作品ではなく製品そのもの、しかも住宅を作ってしまおうというのですから、穏やかじゃありません。

その辺りの経緯も踏まえつつ、3Dプリンターでの住宅建築が当たり前の世の中になるのか考えました。

photo credit: DonDomingo via photopin cc

2004年からアイデアを温めていたエンリコ・ディニ氏

東京エレクトロン株式会社という半導体メーカーが運営しているWEBマガジンがあります。

その中の記事に、エンリコ・ディニ氏へのインタビューが掲載されています。
究極の3Dプリンターを目指す(テレスコープマガジン)

その記事の中で印象的なのは、エンリコ氏でさえ、3Dプリンターによる建築の将来像はまだまだおぼろげであるという部分です。

私は、自分がマッチになって火をつけただけです。それはちょうど150年前の自動車のようなものではないでしょうか。自動車が発明された時、多くの人々はなぜこんな物が必要なのかと不思議がりました。走らせるのも面倒だったし、スピードものろい。馬車の方がよほど便利だったのです。だから、最初はまったく意味をなさない。それでも、どこかの時点でその状況が反転する。そこへの道を開くのは、周縁にいる人々なのです。

2004年に3Dプリンターによる建築を着想してから、いまだに発展途上の技術であるというエンリコ氏ですが、氏が開発した3Dプリンター「D-SHAPE」により、あのノーマン・フォスターが月面基地のデザインを計画しているとのことです。

その状況を端的に表す、

新しい機械による新しい市場は、できるかどうかではなくて「いつ」できるのか、という時代に入っていると思っています。

という氏の言葉の裏側には、もうすでに実用段階に入ったというメッセージとも取れます。

また、英語ではありますが、エンリコ氏の「D-SHAPE」開発ドキュメンタリー映画もありますので、良かったら御覧ください。

the man who prints houses
(スマートホンやタブレットでは視聴できない場合があります)

2013年1月に発表された、「メビウスの帯」住宅の建築計画

ちょうど1年前の発表なので、目にされた方も多いとは思いますが、オランダのヤンヤップ・ライジシェナーシュ氏がメビウスの帯のような、裏も表もなく継ぎ目もない住宅建設計画を発表しています。

mebius
確かにパッと見、デザインもさることながら施工をどうするかが気になるデザインです。

新国立競技場の設計で物議を醸しているザハ氏のデザインっぽくも感じます。
ザハ氏もかつては「アンビルドの女王」などど揶揄されていましたね。

世界初、3Dプリンターでつくる家

そしてその施工システムとして白羽の矢が立ったのが、エンリコ氏の開発する3Dプリンターなのです。
動画も公開されています。



ヤンラップ氏が言うには

建築技法の面でこの建物が興味深い理由は、木枠をつくり、そこにコンクリートを流しこんでから取り除くという面倒な作業を省略できることだ。

ということで、そりゃそうだ、という感想しかないのですが、記事中の見積もりや工期が普通に施工するのと大差無いような気もして、若干微妙です。

フェイスブックページもありますが、更新が滞っているようで、実現の見込みがあるのか施工中なのかは定かではありません。

実現すれば大きな話題になるはずなので、続報を待ちたいところです。

南カリフォルニア大学がヤンラップ氏を追い越すか?

まずはケンプラッツの記事から。

住宅を丸ごと3Dプリンターで! 米大学が工法を開発中

記事からもわかるように、オランダのヤンラップ氏がドリーミングかつ、3Dプリンターでないと実現が難しいような「お手本」を作ろうとしている一方で、南カリフォルニア大学の研究チームはより現実的な住宅建築に的を絞って研究しています。

公式サイト:contour crafting

公式サイト内では動画もいくつかアップされています。



動画を見るとよくわかりますが、細い粘土をどんどん積み重ねていくようなイメージです。

ろくろがなかった頃の古代の陶器製作のイメージですね。
ひも状の粘土をぐるぐると螺旋状に巻いていき、器を作るような。

また、開口部や屋根も独自の工夫でどんどん作っていけるそうで、工期短縮、費用圧縮、廃棄物削減と良いことずくめです。

そして、実機イメージがガンダムチックでちょっとカッコイイのもポイントです。

cc ただ、新技術というのは良い部分だけが先行しがちですが、冷静になって、どんな問題点があるかも考えてみます。

3Dプリンター住宅の今後の課題とは

建築規制が厳しい先進国での普及の難しさ

ケンプラッツの記事のまとめにこうあります。

 コストや工期の点で優れ、職人的な高度なスキルも必要ないコンター・クラフティングは、最新の建設技術だが、建設市場が成熟し様々な規制がある先進国よりも、とにかく安く、多くの住宅を建設したいニーズが高い発展途上国の方が先に普及するかもしれない。
そして発展途上国でさらに進化したコンター・クラフティングが、やがて先進国の建設市場に逆上陸し、既存の建設手法の大きなライバルになる可能性もある。

前例のない工法のため、法規制により、建設可能かどうかが懸念されます。
特に構造体の耐震性でしょうか。

まずは実績を積み重ねて、3Dプリンターにより建設された住宅が、日常的な自然現象に対して十分な抵抗力をもつシェルターたりうるかの検証が必要になりそうです。

傾斜地、狭小地での施工が困難ではないか

現段階で発表されているシステムでは、建物周辺に広く空地があり、なおかつ平坦であることが求められます。

アメリカのように国土が広く、住宅の敷地も広い国ではすぐにでも実現できそうですが、例えば日本で実現させるとなると、都市部ではまず不可能に思えます。

もちろん、現状の1対のアームがレールに沿って移動するシステムが、技術開発により、4本足で歩き回れるような形態になれば、傾斜地でも対応できそうですし、建物周辺に必要な空地も少なくて済みそうです。

材料も、空気中の成分から合成できればいいのですが、それはさすがにドラえもんの世界ですね・・・。

騒音や完成品の味気無さは大丈夫か

施工中の騒音は、通常のクレーンの運転音と大差なければ問題は無さそうです。

材料を圧送するのも、騒音としてはクレーンと同等か小さいくらいでしょう。

完成品の味気無さは、若干気になります。
素材に色を付けたり、表面のテクスチャを工夫することはできそうですが、偽物感が漂いまくりそうです。

コンクリート製の躯体になることは間違い無さそうですが、その点は例えば日本でも受け入れられることと思います。

鉄骨系の住宅メーカーがこれだけ受け入れられているわけですから、デザインや外観、耐久性がよくなれば、大手住宅メーカーの建物とほとんど差が無くなりそうです。

むしろ大手住宅メーカーが、ローコストタイプ住宅として販売する日が来るかもしれません。

施工が一発勝負になる恐れ

住宅建設用3Dプリンターへの作動指示は当然設計データで行われます。

在来のコンクリート打ち放しであれば、まず型枠を組むので、その施工にミスがあればコンクリート打設の前に修正がききます。

一方、3Dプリンターでどんどん積み上げるように施工していく場合、データが正確でなかったら、修正するためには完成部分を破壊する必要が出てきそうです。

データの正確性を担保するには事前のシミュレーションに時間と手間が取られますし、施工段階毎に人間の目でチェックしていくのも、人件費削減と相反する事になります。

現時点では、決まりきったパターンの住宅を大量に建設していくような使われ方が適当な気がします。

3Dプリンター建築のまとめ

まだまだ発展途上の技術であり、公開されている情報も少ない分野ではありますが、今後の課題も多い反面、すぐに活用を期待できる場面も見出されています。

災害用仮設住宅の速やかな供給・住宅不足地域の救済

可及的速やかに住宅が必要な場合には、広くて平坦な用地さえ確保すれば、あっという間に住宅群が完成することでしょう。

雨風を凌ぐだけでなく、人間らしい生活ができることも欠かせません。

しかも、人手不足に悩まされる心配も少なく、安全かつ確実です。

この部分だけ見れば、いち早く実現して欲しいとさえ思います。

環境にやさしい

ゴミが少ない、材料の運搬にコストが掛からない、そもそも人が見ていなくても良い(現場に人がいない)等々、CO2の発生が抑制される要素ばかりで、逆に在来の建築工事がどれだけ環境負荷が高いのか怖くなるくらいです。

まだ試算の段階ですが、環境に、地球にやさしいのは明白です。

人間のエゴとエコのバランスがより良くなるように、技術開発が進んで欲しいものです。

応用範囲は無限大。今後の技術革新に期待

基本的な活用方法やメリットは、ケンプラッツの記事からでも十分に読み取れました。

とりあえず必要なことは、早々に実現への道筋を付けることと、データを積み重ねることでしょうか。

その場で住宅を組み立てるばかりでなく、別の場所で3Dプリンターでパーツを作り、現場で組み立てるなら広い敷地も不要です。

自走式になれば、昼夜を問わず3Dプリンターが働き、大規模住宅地があっという間に出来上がってしまうかもしれません。

そんな夢の様な建設方式を目の当たりにするまで、がんばって長生きしなければなりませんね。

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