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排煙チェックのコツ、それは「基準を覚えない」ことだ!

公開日: : 最終更新日:2016/02/08 排煙関係規定

読者様から、次のような排煙チェックに関する質問を頂きました。ありがとうございます。

法35条に基づく「令116条の2第1項2号の開口の検討」で「開放できる部分(天井面から80cm以内)の合計が、居室の床面積の1/50以上」あれば、「排煙設備」は必要ないことはわかりました。
①この場合、令126条の2および令126条の3にある「排煙設備」の規定は適用しなくて良いのでしょうか?
②例えば、自然排煙で1/50以上が引き違いマドで取れている場合で居室の床面積が500㎡を超える場合、防煙区画や排煙距離の適用は考えなくても良いのでしょうか?

(質問の内容は要約してあります)

質問の意図がすぐわかる方、排煙のことは考えるのも嫌だという方など様々でしょうが、確認申請チェックで「排煙」はさけて通れないのもまた事実。

上記質問の回答は記事の最後にとっておくこととして、排煙チェックの基本を確認していきます。

まずは排煙に関係する条文をチェック

法35条

法チェックで、参考図書しか参照しないという方も多いことかと思いますが、法令集を理解してこその参考図書です。
基準法の流れを理解しておけば、参考図書の理解も倍速で達成できます。

逆に、法令集を読まないで、参考図書で断片的な記憶が蓄積すると、どんどん混乱していきます。

というわけで、基本の基本、条文を抜粋しますので、再認識しておきましょう。
全文はリンク先から確認できます。

法35条について

この条文は建築物の避難、消火に関する規定で、いわゆる「防火避難規定」の主要な部分を占めています。
法35条には細かい規定はなく、詳細について知るには関連する政令を読まなくてはなりません。

★35条の部分、法令集の写真を撮る

(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
第三十五条  

・別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
・階数が三以上である建築物
・政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物
・又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が千平方メートルをこえる建築物
については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓、スプリンクラー、貯水槽その他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。

排煙無窓の要件

法35条にある、「政令で定める窓その他の開口部を有しない居室」について記載されているのが、施行令116条の2です。
ちなみに、「無窓」に関する規定は多岐にわたリます。
過去記事にもいくつかまとめていますので、参照してみてください。
防火避難規定の基本 無窓居室とは何だ?
無窓居室に必要な措置を逆引きで考えると意外とスッキリする

(窓その他の開口部を有しない居室等)
第116条の2  

法第三十五条 (法第八十七条第三項 において準用する場合を含む。第百二十七条において同じ。)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号に該当する窓その他の開口部を有しない居室とする。

一  面積(第二十条の規定より計算した採光に有効な部分の面積に限る。)の合計が、当該居室の床面積の二十分の一以上のもの
二  開放できる部分(天井又は天井から下方八十センチメートル以内の距離にある部分に限る。)の面積の合計が、当該居室の床面積の五十分の一以上のもの
(以下略)

排煙設備の設置要件

排煙設備については、施行令126条の2に規定されています。
前出の令116の2では、単に「開口部」と表現されている「排煙上有効な開口」ですが、令126条の2で要求されるのは「排煙設備」で、令126条の3でその構造についても規定されています。

また、「ただし」以降を読むのが大変面倒なため、なかなか読みたくありませんがこの「ただし書き」こそが排煙関係規定のキモなので、避けて通ることは出来ません。
簡単に言うと、排煙設備に関するいろいろな「特典・サービスのお知らせ」です。

頑張って、読みましょう。

第三節 排煙設備
(設置)
第126条の2  

法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物で延べ面積が五百平方メートルを超えるもの、

階数が三以上で延べ面積が五百平方メートルを超える建築物(建築物の高さが三十一メートル以下の部分にある居室で、床面積百平方メートル以内ごとに、間仕切壁、天井面から五十センチメートル以上下方に突出した垂れ壁その他これらと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもので不燃材料で造り、又は覆われたもの(以下「防煙壁」という。)によつて区画されたものを除く。)、

第百十六条の二第一項第二号に該当する窓その他の開口部を有しない居室

又は

延べ面積が1000平方メートルを超える建築物の居室で、その床面積が200平方メートルを超えるもの(建築物の高さが三十一メートル以下の部分にある居室で、床面積百平方メートル以内ごとに防煙壁で区画されたものを除く。)

には、排煙設備を設けなければならない。
ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物又は建築物の部分については、この限りでない。

一  
法別表第一(い)欄(二)項に掲げる用途に供する特殊建築物のうち、準耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二 ロに規定する防火設備で区画された部分で、その床面積が百平方メートル(共同住宅の住戸にあつては、二百平方メートル)以内のもの
二  
学校、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場又はスポーツの練習場(以下「学校等」という。)
三  
階段の部分、昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)その他これらに類する建築物の部分
四  
機械製作工場、不燃性の物品を保管する倉庫その他これらに類する用途に供する建築物で主要構造部が不燃材料で造られたものその他これらと同等以上に火災の発生のおそれの少ない構造のもの
五  
火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分として、天井の高さ、壁及び天井の仕上げに用いる材料の種類等を考慮して国土交通大臣が定めるもの
(以下略)

排煙上有効な開口と排煙設備の違い

排煙上有効な開口について

令116の2第1項2号で要求される、「排煙上有効な開口」は、「居室」について、所定の高さにある開口部のことを指します。
この開口部は、「開けば良い」のです。
ここであやふやな記憶に頼ると、「手動開放装置」や「防煙垂れ壁」等の「排煙キーワード」を連想してしまい、混乱してきます。

令116条の2では、いわゆる「1/50開口」さえあれば良く、手動でも電動でもよし、引き違いでも、オペレーターやチェーン、棒で開放する内倒し、外倒しのマドでも、とにかく「人間の意思で開けられさえすれば」いいのです。

あとは開口部の位置が、天井面から80cm以内という規定を満たす必要はあります。

この開口が取れない場合、はじめて「排煙無窓」の居室となり、令126条の2の要件に該当しますから、その居室には「排煙設備」が必要になります。

ここで素朴な疑問として、「窓が無いのに、排煙設備なんか取れっこない」と思った方、そのとおりです。

これを解決する方法はいつくかありますが、よくある方法としていわゆる「排煙告示」を適用させるというものです。
この排煙告示が「特典・サービス」の大部分でして、先ほどの令126条の2のただし書きの第五号から、告示に飛ぶことになります。

排煙告示について解説すると、長くなりますのでまた別の機会にまとめます。
ちなみに排煙告示とは、平成12年建設省告示第1436号のことです。
あえて掲載しませんので、ぜひ、法令集で読んでみてください。

※注
排煙告示は平成27年3月18日に改正されています。最新情報はこちらの記事でご確認ください。
排煙設備緩和告示が改正されて、パワーアップしました

排煙設備について

上記を読むとわかるように、排煙設備と排煙上有効な開口とは全く別のものであることがわかります。

令126条の2により要求される排煙設備は、令126条の3によりその構造や仕様が規定されています。

排煙設備は開口部の仕様だけでなく、500㎡以内で有効に防煙区画を取る必要があるなど、計画全体に影響を与えます。

詳細は法令集を読んでいただくこととし、様々な取扱や、排煙告示との組み合わせなど、ややこしい話が出てくるのはこの「排煙設備」なのです。

いずれの規定も「1/50」という数字がキーワードですが、令116の2第1項2号の規定では十分条件ですが、排煙設備の場合は必要条件となり、他にも満足すべき要件があるのです。

排煙設備について理解を深めるには、「防火避難規定の解説」は必携です。

このサイトでは何回も出て来ますが、超重要参考図書のため、何度でも紹介します。

排煙設備設置要件の読み方・考え方

用途、規模により、建築物全体が対象となる場合

令126条の2に規定されている排煙設備設置要件のうち、始めの2つがこれにあたります。

要件は単純で、用途+延500㎡超もしくは階数3+延500㎡超となっていますが、注意すべき点がいくつかあります。

一つの建物に複数の用途が存在する場合、特殊建築物に該当する用途部分が500㎡以下であっても、建築物全体が排煙設備設置の対象となります。
建築物全体ということは、廊下や給湯室、トイレ、更衣室等の非居室も設置しなければなりません。

例えば、2階建ての建築物で、1階が物販店400㎡、2階が事務所400㎡という建築物の場合、物販店部分は500㎡を超えていませんが、建築物全体では500㎡を超えているため、排煙設備設置が必要と考えます。
これは「防火避難規定の解説」にも明記されており、一般的な運用となっています。

では、平屋の建築物で延600㎡のうち、物販店部分が50㎡、あとは事務所(550㎡)という場合はどうでしょうか。

慌てると同じように排煙設備が必要と考えがちですが、上記の場合は物販店部分が100㎡未満のため、特殊建築物に該当しません。
よって、居室部分が排煙無窓とならない限り、排煙設備は設置不要です。

この場合は、特殊建築物部分が100㎡未満のため、一見すると該当しなさそうですが、令126条の2を読む限り、別表1(い)1から4項という用途しか記載がなく、面積にまで言及していません。
よって、この場合でも、建築物全体に排煙設備が必要となります。(物販店舗部分が10㎡以内のものとなると、特殊建築物に該当しませんので、その場合は不要となります。10㎡の根拠は令115条の3第三号に記載がありますのでご確認ください。)
(読者様からのご指摘により、修正しました。A様、ありがとうございました。)

2番目の階数+面積の規定で注意すべき点は、階ではなく、階数である点です。
地上3階と地下1階+地上2階は、いずれも「階数」は3ですから、延べ面積が500㎡を超える場合は、排煙設備の設置が必要となります。

用途や建築物の部分によっては、ただし書きの対象となる場合があるので、ただし書きは必ずセットで読まなくてはなりません。

また、建築物全体で排煙設備の設置が必要な場合で、竪穴区画までは要求されない場合、階段があれば階段部分を防煙垂壁により区画する必要があります。吹き抜けも同様です。
これも、建築基準法には記載がありませんが、「防火避難規定の解説」に明記されており、一般的な運用です。

規模等により、該当する居室のみが対象となる場合

居室のみが排煙設備の設置対象となる要件は、第116条の2第1項第二号に該当する窓その他の開口部を有しない居室と、延べ面積が1000平方メートルを超える建築物の居室で、その床面積が200平方メートルを超えるもの、の2つです。

これらはいずれも、当該居室のみが対象となるわけですから、廊下や物置、更衣室といった非居室には排煙設備は設置不要です。

延べ面積が1000平方メートルを超える建築物の居室について、200㎡を超える居室とそうでない居室が混在する場合は、200㎡を超える居室のみが排煙設備の設置対象となりますが、面積の要件を満たさなくても、排煙無窓となってしまう場合は、当然ですが設置しなければなりません。

排煙チェックの基本とコツ まとめ

散々書いておいて言うのもなんですが、これらを覚えようとしないこと

排煙チェックは覚えようとするから、間違えてしまうのです。

チェックの度に基準法や防火避難規定の解説を参照するべきなんです。
むしろ覚えておくのは、基準法の何条を読めばいいのか、という程度で良いでしょう。

どの資料を読むのか、どこに書いてあるのかがわかっているとなお良いです。
いずれにしても、数値や要件の細かいことは、その都度確認するのが最も確実です。

ところで、冒頭の質問の回答は?

冒頭の質問について
①は、「検討不要」となります。
②については、建築物の用途や階数等が不明のため、明確にできない部分がありますが、文面から判断すると排煙設備は不要と考えられます。

居室が500㎡を超える面積を有していたとしても、令116条の2第1項2号の排煙上有効な開口があれば、他に令126条の2に規定される要件が無いためです。

例えば、平屋の事務所で延べ600㎡の建築物の場合、執務室(居室)部分が550㎡だったとしても、令126条の2の要件に該当しないため、排煙設備は設置不要となります。

もちろん、建築物の安全性を高めるために、自主的に排煙設備を設置することは何ら問題ありませんが、過剰な設計をしていたとしても、確認審査機関が「この排煙設備は不要ですよ」とまでは教えてはくれないと思います。

排煙チェックチャート 超簡易バージョン

作る程でもない、排煙チェックチャートを作ってみました。
あまり期待せずに御覧ください(笑)

排煙設備の要否 簡易チェック

また、何度でも言いますが、建築設計関係のお仕事をされている方で「防火避難規定の解説」を見たことのない方、大変危険です。すぐに購入を検討してください。

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