防火設備の遮煙性能についてまとめてみました

注:最新の令112条はこちらの記事でご確認ください。記事内の項ずれは適宜読み替えてください。ご不便をおかけしますがご了承ください。
【2020年(令和2年)版】 基準法施行令112条(防火区画関連)最新条文(告示番号付き)

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建築基準法施行令第112条第14項第2号に規定される遮煙性能

防火区画部分に設置する防火設備について、令112条第14項に定められています。
特に、同項第2号には「遮煙性能」についても規定されており、区画の種類により厳密な使い分けが要求されています。

二  第一項第二号、第四項、第八項若しくは前項の規定による区画に用いる特定防火設備又は第八項、第九項若しくは第十二項の規定による区画に用いる法第二条第九号の二 ロに規定する防火設備 次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの
イ 前号イからハまでに掲げる要件を満たしているものであること。
ロ 避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有し、かつ、常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあつては、火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖又は作動をするものであること。

区画の種類ごとに、特定防火設備と防火設備の使い分けがあり、特定防火設備としなければならないのは、第一項第二号、第四項、第八項若しくは第十三項(前項)で、防火設備としなければならないのは、第八項、第九項若しくは第十二項となっています。

そしていずれの防火設備も、上にあるように、令第112条第14項第1号のイロハを満たしており、かつ、「遮煙性能」が求められます。

「遮煙性能」を有する防火設備は、大臣認定を受けているものか、大臣の定める構造方法によるものでなければならず、この「大臣の定める構造方法」をまとめてみようというお話です。

少々簡単に考えていましたが、関連する告示を読み始めたら告示無限ループに嵌りそうになり、エライ目に遭いました。

昭和48年 建設省告示第2564号 防火区画に用いる遮煙性能を有する防火設備の構造方法を定める件

この告示だけを読めば、遮煙性能についてすべてわかると思ったら大間違いです。
この告示が、蛇の道の始まりになるとは・・・
まずは、告示について。

建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百十二条第十四項第二号、第百二十六条の二第二項及び第百四十五条第一項第二号の規定に基づき、防火区画に用いる遮煙性能を有する防火設備の構造方法を次のように定める。
一 建築基準法施行令(以下「令」という。)第百十二条第十四項第二号に掲げる要件を満たす防火設備又は令第百四十五条第一項第二号に掲げる要件を満たす防火設備の構造方法は、次に定めるものとする。
イ 昭和四十八年建設省告示第二千五百六十三号第一に定める構造方法
ロ 防火戸が枠又は他の防火設備と接する部分が相じやくり、又は定規縁若しくは戸当りを設けたもの等閉鎖した際にすき間が生じない構造で、かつ、防火設備の取付金物が、取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付けられたもの(シャッターにあつては、内のり幅が五メートル以下で、別記に規定する遮煙性能試験に合格したもの又はシャッターに近接する位置に網入りガラスその他建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の二ロに規定する防火設備を固定して併設したもので、内のり幅が八メートル以下のものに限る。)とすること。

二 令第百十二条第十四項第一号イ及び第二号ロに掲げる要件を満たす防火設備の構造方法は、次に定めるものとする。
イ 昭和四十八年建設省告示第二千五百六十三号第三に定める構造方法
ロ 前号ロに定める構造方法

1号イと2号イで、また別の告示を読まなければならなくなりました。
いずれも建設省告示第2563号ですので、早速見てみましょう。

昭和48年 建設省告示第2563号 防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件

建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百十二条第十四項第一号、第百二十九条の十三の二及び第百三十六条の二第一号の規定に基づき、防火区画に用いる防火設備等の構造方法を次のように定める。

第一 建築基準法施行令(以下「令」という。)第百十二条第十四項第一号イからハまでに掲げる要件(ハに掲げる要件にあつては、火災により煙が発生した場合に、自動的に閉鎖又は作動をするものであることに限る。)を満たす防火設備の構造方法は、次の各号のいずれかに定めるものとする。
一   面積が三平方メートル以内の常時閉鎖状態を保持する構造の防火戸で、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖するもの(以下「常時閉鎖式防火戸」という。)とすること。
二 次に掲げる基準に適合する構造の防火戸とすること。
イ 随時閉鎖することができること。

居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路に設けるものにあつては、当該戸に近接して当該通路に常時閉鎖式防火戸が設けられている場合を除き、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖する部分を有し、その部分の幅、高さ及び下端の床面からの高さが、それぞれ、七十五センチメートル以上、一・八メートル以上及び十五センチメートル以下である構造の防火戸とすること。
ハ 煙感知器又は熱煙複合式感知器、連動制御器、自動閉鎖装置及び予備電源を備えたものであること。
ニ 煙感知器又は熱煙複合式感知器は、次に掲げる基準に適合するものであること。
(1) 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第二十一条の二第一項の規定による検定に合格したものであること。
(2) 次に掲げる場所に設けるものであること。
(i) 防火戸からの水平距離が十メートル以内で、かつ、防火戸と煙感知器又は熱煙複合式感知器との間に間仕切壁等がない場所
(ii) 壁(天井から五十センチメートル以上下方に突出したたれ壁等を含む。)から六十センチメートル以上離れた天井等の室内に面する部分(廊下等狭い場所であるために六十センチメートル以上離すことができない場合にあつては、当該廊下等の天井等の室内に面する部分の中央の部分)
(iii) 次に掲げる場所以外の場所
(イ) 換気口等の空気吹出口に近接する場所
(ロ) じんあい、微粉又は水蒸気が多量に滞留する場所
(ハ) 腐食性ガスの発生するおそれのある場所
(ニ) 厨房等正常時において煙等が滞留する場所
(ホ) 排気ガスが多量に滞留する場所
(ヘ) 煙が多量に流入するおそれのある場所
(ト) 結露が発生する場所
ホ 連動制御器は、次に定めるものであること。
(1) 煙感知器又は熱煙複合式感知器から信号を受けた場合に自動閉鎖装置に起動指示を与えるもので、随時、制御の監視ができるもの
(2) 火災による熱により機能に支障をきたすおそれがなく、かつ、維持管理が容易に行えるもの
(3) 連動制御器に用いる電気配線及び電線が、次に定めるものであるもの
(i) 昭和四十五年建設省告示第千八百二十九号第二号及び第三号に定める基準によるもの
(ii) 常用の電源の電気配線は、他の電気回路(電源に接続する部分及び消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)第七条第三項第一号に規定する自動火災報知設備の中継器又は受信機に接続する部分を除く。)に接続しないもので、かつ、配電盤又は分電盤の階別主開閉器の電源側で分岐しているもの
ヘ 自動閉鎖装置は、次に定めるものであること。
(1) 連動制御器から起動指示を受けた場合に防火戸を自動的に閉鎖させるもの
(2) 自動閉鎖装置に用いる電気配線及び電線が、ホの(3)に定めるものであるもの
ト 予備電源は、昭和四十五年建設省告示第千八百二十九号第四号に定める基準によるものであること。
(中略)
第三 令第百十二条第十四項第一号イ及びハに掲げる要件(ハに掲げる要件にあつては、火災により煙が発生した場合に、自動的に閉鎖又は作動をするものであることに限る。)を満たす防火設備の構造方法は、次の各号のいずれかに定めるものとする。
一 常時閉鎖式防火戸とすること。
二 第一第二号イ及びハからトまでに掲げる基準に適合する構造の防火戸とすること。

第一、第三で言わんとしていることを簡単にまとめるといずれも、「常時閉鎖式の防火戸」か「随時閉鎖式の煙感知器連動の防火戸」にしなさいということです。
第三では特に感知器の種類を「煙感知器」に限定しているのがポイントです。

ここまででなんとなくわかりますが、さらに最初の告示「昭和48年 建設省告示第2564号」の各号の「ロ」に記載されている
防火戸が枠又は他の防火設備と接する部分が相じやくり、又は定規縁若しくは戸当りを設けたもの等閉鎖した際にすき間が生じない構造で、かつ、防火設備の取付金物が、取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付けられたもの
という表現について見ていきます。

平成12年建設省告示第1360号と同1369号

この2つの告示は、防火設備と特定防火設備の仕様を定めたものです。
それぞれの告示をよく読むと、昭和48年 建設省告示第2563号に出てきた記載が両方共記載されています。

告示1369号 特定防火設備
第二 第一(第六号及び第七号を除く。)に定めるもののほか、防火戸が枠又は他の防火設備と接する部分は、相じゃくりとし、又は定規縁若しくは戸当りを設ける等閉鎖した際にすき間が生じない構造とし、かつ、防火設備の取付金物は、取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付けなければならない。

告示1360号 防火設備
第二 第一に定めるもののほか、防火戸が枠又は他の防火設備と接する部分は、相じゃくりとし、又は定規縁若しくは戸当りを設ける等閉鎖した際にすき間が生じない構造とし、かつ、防火設備の取付金物は、取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付けなければならない。

防火設備も特定防火設備も、枠周りの密閉性等については同じ仕様が求められていることがわかります。
つまり告示仕様での防火設備の差は、戸の材質の違いのみということになります。

4つの告示を図にまとめる

ここまで頑張って読んで下さり、お疲れ様です(笑)
満を持して、これまでに登場した告示の関連を図にしてみましたので御覧ください。
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防火設備の遮煙性能を告示しようだけで満足させようとするためには、これだけの告示の関連を理解する必要が有ることがわかりました。

では、結局どのような防火設備ならば良いのでしょうか。

遮煙性能を有する防火設備のまとめ

大臣認定ではない、告示仕様による「遮煙性能を有する防火設備」の要件は

・防火設備、もしくは特定防火設備であること
・常時閉鎖もしくは煙感知器連動閉鎖式であること

と読むことが出来そうです。

防火設備と特定防火設備の使い分けは、令112条14項2号をよく読んで正しく設置する計画としなければなりませんが、常時閉鎖式の特定防火設備ならまず間違いないということになります。

告示の組み合わせで言えば、「建設省告示第2564号+建設省告示第1369号」で、令112条14項2号の要件を満たしているということになります。

建設省告示第2564号を満足するということは建設省告示第2563号第一を満足するということです。

建設省告示第2563号第一は第1号か第2号のいずれかを満足させればOKです。

ただここで気をつけなければならないのは、大臣認定を受けている防火設備が必ずしも上記の告示の組み合わせを満たしているとは限らないということです。

認定品を使う場合は、防火設備(遮炎)の認定と、遮煙性能の認定の両方が取れているもの、もしくは遮炎の認定が取れていて遮煙性能の告示仕様を満たしていることの、いずれかが必須となります。

もっとも簡単なのは、両方共認定を取っているものを選べば良いのですが、設計上の問題や施主からの要望によりいずれかの組み合わせを選ぶことで、解決できることもあるということです。

遮煙性能を有する防火設備を、告示仕様で満足させようとすると、施行令と告示が入り乱れているため大変わかりにくいです。

建築基準法をもっとさらりと読みこなせる能力を身につけなければいけないとは思いつつ、建築基準法そのものがもっと抜本的に改正される日が早く来て欲しいとも願ってしまいます。

(それから、建築基準法の法令集は平成26年版がもう出ていますので、平成24年よりも古い法令集を使っている方は買い替えたほうが良いかもしれません。告示もよく読んでみたい方は、ネットで告示検索でも良いですが、告示だけ別冊で買ってみるのもためになりますのでオススメです。)

建築物の防火避難規定の解説2016
by カエレバ

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