平成30年の建築基準法改正を予習しておきましょう

平成30年の建築基準法改正法案が閣議決定されました。記事作成時点(平成30年3月末)時点では国会審議中ですが、恐らく可決されるものと思われます。

国交省の示す概要は以下の通りとなっています。詳細は国交省の報道発表で確認できます。
「建築基準法の一部を改正する法律案」を閣議決定

概要
(1) 建築物・市街地の安全性の確保
[1] 建築物を常時適法に維持するための維持保全計画の作成等が求められる建築物の範囲を拡大
[2] 防火地域・準防火地域※1において延焼防止性能の高い建築物の建ぺい率※2制限を10%緩和 等
※1  防火地域・準防火地域:市街地における火災の危険を防除するために定める地域
※2  建ぺい率:建築物の建築面積の敷地面積に対する割合
(2) 既存建築ストックの活用
[1] 戸建住宅等(延べ面積200㎡未満かつ3階建て以下)を他の用途とする場合に、在館者が迅速に避難できる措置を講じることを前提に、耐火建築物等とすることを不要とする
[2] 用途変更に伴って建築確認が必要となる規模の見直し 等
(3) 木造建築物の整備の推進
[1] 耐火構造等とすべき木造建築物の対象の見直し(高さ13m・軒高9m超 →高さ16m超・階数4 以上)
[2] [1]の規制を受ける場合についても、木材をそのまま見せる(あらわし)等の耐火構造以外の構造を可能とするよう基準を見直し 等
(4) その他
[1] 老人ホーム等に係る容積率※制限を緩和(共用廊下等を算定基礎となる床面積から除外)
※  容積率:建築物の延べ面積(床面積の合計)の敷地面積に対する割合
[2] 興行場等の仮設建築物の存続期間(現行1年)の延長


ただ、これだと非常にわかりにくいのでもう少しわかりやすく列記すると以下のようになります。上の概要の記載順とは、順番が入れ替わっています。

(1)法第6条第1項第一号の面積緩和
(2)老人ホーム、福祉ホーム等容積率緩和等
(3)建蔽率規制の緩和等
(4)長屋又は共同住宅の各戸の界壁に関する規制緩和等
(5)防火地域等内の建築物に関する規制緩和等
(6)防火関係規定の合理化、緩和等
(7)仮設建築物・用途変更に関する緩和等
(8)接道規制に関する合理化等
(9)日影規制の適用除外について
(10)用途規制(48条許可の合理化)について
(11)建築物の維持保全に関する規定の整備


今回は、上の11項目のうち、特に大きな影響がありそうな1から4、6、7について簡単に説明します。

なお、現時点では政令等は未制定ですので、詳細については不明です。
あくまで、今後のための参考ということで参照してください。

正式に公布されましたら、改めてまとめると思います。

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法第6条第1項第一号の 面積緩和

法第6条第1項第一号中「100㎡」を「200㎡」に改正

今回の法改正で、この項目が最大の目玉と言えそうです。

以前、民泊に関連する建築基準法の情報をまとめましたが、この改正で、民泊界隈もより活気付きそうです。

民泊関連のサイトだと、200㎡以内であれば用途変更の確認申請が不要ですよ、と大プッシュしています。

国交省の資料「概要」では、「用途変更に伴って確認申請が必要な規模の見直し」とあります。
しかし、「要綱」には以下のように記載されています。

第一建築確認を要しない特殊建築物の範囲の拡大
別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物のうち確認を要するものを、当該用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるものとすること


とあります。
これを文面通りに捉えれば、用途変更に限らず、新築、増築等で確認申請が必要になる特殊建築物の床面積が200㎡超になるということです。

例えば、コンビニエンスストアを例に考えてみます。
現行法では、物販店舗用途で100㎡を超えると特殊建築物となります。

ただ、鉄骨造平屋建てであれば、200㎡を超えなければ構造計算書の添付は不要のため、構造図書はある程度簡略化できます。
当然、建築士の設計による特例は受けられません。
設備図等も一式添付する必要があります。

しかし、この改正により、200㎡以下であれば特殊建築物にさえならないということになり、巷でよく見かける規模のコンビニは4号建築物になってしまうわけです。
(独立店舗タイプのコンビニは、ほとんどが200㎡以下になるように設計されています)

つまり、令10条1項4号の特例に該当します。

言い換えるなら、小規模な物置や事務所と同じようなレベルの申請図書でコンビニの確認がおりてしまいます。
木造2階建ての一戸建て住宅の確認申請に毛が生えた程度の真正図書で足ります。

もはや、セブンイレブンが3万店舗達成するのも時間の問題ですね(笑)

既存建物の用途変更をしやすくしてストックの有効活用が可能になると同時に、小規模店舗や小規模児童福祉施設の確認申請が非常に簡略化されることになります。

さまざまな方面に恩恵がありそうですが、改正を逆手に取ってうまいことやってやろうというヤカラが現れる可能性もあります。

老人ホーム、福祉ホーム等容積率緩和等(法52条)

老人ホーム、福祉ホーム等の共用の廊下又は階段の用に供する部分の床面積については、共同住宅と同様に、容積率算定の基礎となる延べ面積に算入しない

これは読んで字の如く、老人ホーム・福祉ホーム用途に対する緩和規定となります。

この改正も、用途変更、増築等で恩恵がありそうです。

建蔽率規制の緩和等(法53条)

建蔽率に10%を加えることができる建築物として以下の建築物を追加
①防火地域(建蔽率80%を除く)内にある耐火建築物と同等以上の延焼防止性能を有する建築物

②準防火地域内にある耐火建築物、準耐火建築物等

建蔽率を適用しない建築物として以下の建築物を追加
防火地域(建蔽率80%)内にある耐火建築物と同等以上の延焼防止性能を有する建築物

新登場の「耐火建築物と同等以上の延焼防止性能を有する建築物」が、どれほどの緩和規定になるかがポイントでしょう。

また、準防火地域でも建ぺい率サービスが実施されるようで、商業地の建築物はまだしも、都会の戸建て住宅などはさらにみちみちに建て込んでしまうのかが気になります。

長屋又は共同住宅の各戸の界壁に関する規制緩和等(法30条)

長屋又は共同住宅の天井の構造が、遮音性能に関して政令で定める技術的基準に適合する場合、各戸の界壁を小屋裏又は天井裏に達するものとしなくてもよい

これも民泊や小規模住宅の用途変更にとっての緩和措置と考えられます。

防火上主要な間仕切り壁についてはすでに、強化天井などを用いることで小屋裏等まで達せしめなくて良いと緩和されており、遮音性に関連する法30条だけ取り残されていたわけですね。

よって、遮音性についても所定の性能を有する天井とすることで、小屋裏、天井まで界壁を作る必要がなくなったということになります。

防火関係規定の合理化、緩和等

「延焼のおそれのある部分」の定義の見直し(法2条6号)

詳細は不明ながら、例えば、同一敷地内で低層と高層の建築物が混在するような場合、高層建物側の延焼ラインが発生する範囲を一律2階以上は5mとしないで、火災の影響がある高さまでにする(低層建物からの火災の影響が及ぶ範囲まで)、というような緩和と考えられます。

「要綱」には、外壁面と隣地境界線等との角度に応じて定めるとありますので、詳細は政令、告示等により定められると思います。

耐火構造等とすべき木造建築物の対象・規制内容の見直し(法21条)

木造建築物の高層化促進という意味合いで、耐火建築物とすべき木造建築物の規模を、高さ16m超、階数4以上に緩和するというものです。

さらに、「概要」には、あらわし構造躯体が採用できるとの記載もあります。

また、建築物の周囲に延焼防止上有効な空地がある場合も耐火要求の対象外となるようです。

木造建築物等である特殊建築物の外壁等に関する規制の廃止(法24条)

これは単純な緩和ですね。

延べ面積が1000㎡超である建築物を区画する方法として防火壁だけでなく「政令で定める防火床」による区画も可能とする(法26条)

防火壁は自立する壁である必要があり、建築物をタテに分断していました。しかし、それでは木造建築物の高層化の足かせとなるため、水平に区画しても良いということになるようです。

最終的には、木造とそれ以外という構造の区別もなくなれば簡単でいいですね。

耐火建築物等としなければならない特殊建築物の対象の緩和(階数が3で延べ面積が200㎡未満の建築物)を耐火建築物等としなければならない特殊建築物の対象から除く(法27条)

こちらも、ストック活用、用途変更をしやすくするための緩和です。

主に、3階建ての戸建て住宅を児童福祉施設等に用途変更する場合のハードルをぐぐっと下げてくれます。

ただし、「政令で定める技術的基準に従って警報設備を設けたものに限る」という条件が付いてきます。

仮設建築物・用途変更に関する緩和等


既存建築物の用途を変更して一時的に他の用途の建築物として使用する場合について、仮設建築物を建築する場合(第八十五条)と同様に、法の全部又は一部の適用除外を認める(法87条の3)

この項目は3つほどありますが、そのうちの一つ、一時的な用途変更の場合は、仮設建築物と同様に大幅な法的緩和を受けられるというものです。

仮設建築物は特定行政庁の許可が必要なので、このような用途変更も許可が必要になるのではないかと思われます。


法改正後の設計、確認申請で影響が大きそうな項目は以上となります。

繰り返しますが、いずれもまだ詳細は未決定(平成30年3月末時点)なのであくまで参考程度とされてください。

今後、パブコメ募集などを経て公布、施行されるものと思われます。

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