建築確認申請にも脱ハンコの流れが来てます!!

パブコメ脱ハンコ

2020年(令和2年)11月16日に以下のパブコメ募集が公示されました。

押印を求める手続の見直しのための国土交通省関係省令の一部を改正する省令案(仮称)に関する意見募集

記事タイトルにも書きましたが、「押印を求める手続の見直し」とあるように菅内閣の目玉施策である「脱ハンコ」に関するものです。

様々な分野で脱ハンコが進みつつありますが、このパブコメでは「国土交通省関係省令」とありますから国交省が管轄する法令手続きについてのものとなっています。

さらに以下のようなパブコメもあります。

確認審査等に関する指針及び申請者が工場等において行う試験に立ち会い、又は工場等における指定建築材料の製造、検査若しくは品質管理を実地に確認する必要がある場合及びその費用を定める件の一部を改正する告示案に関する意見募集について

非常に長いタイトルですが、「確認審査等に関する指針」とあるように直で建築確認の審査について言及しています。

早速概要を見てみましょう

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脱ハンコに向けての背景

押印を求める手続の見直しのための国土交通省関係省令の一部を改正する省令案

規制改革実施計画(令和2年 7 月 17 日閣議決定)において、「原則として全ての見直し対象手続(※)について、恒久的な制度的対応として、年内に、規制改革推進会議が提示する基準に照らして順次、必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行う」こととされているところである。
これを踏まえ、国土交通省が単独で所管する省令において、国民や事業者等に対して押印を求めている手続について押印を不要とする等の所要の改正を行うものとする。
※所管する行政手続等のうち、法令等又は慣行により、国民や事業者等に対して紙の書面の作成・提出等を求めているもの、押印を求めているもの、又は対面での手続を求めているもの

パブコメ募集サイトの概要資料には上記のようにありますが、菅内閣発足時に急に降って湧いた「脱ハンコ」の流れが本格的に動き出しました。

この記事を書いている時点ではコロナ感染第3波への対応の遅れで菅内閣の評判はすっかり落ち込んでしまいましたが、当初の脱ハンコ関連のスピード感は安倍内閣にはないものだったので、期待が膨らんだことを少しばかり思い出しました。

政治のことはこれくらいにして、脱ハンコが進むのははんこ屋さんには申し訳ないですが、かなり行政手続き関係の利便性があがるので大歓迎です。

では、意見募集概要を確認してみます。

脱ハンコのパブコメ募集の概要

1.記名押印、署名の廃止等
○ 別添①に掲げる省令において、国民や民間事業者等に対して押印、署名等を求めている手続について、押印等を不要とするための規定(様式を含む。)の見直しを行う。
※別添①に掲げる省令のうち別添②に掲げる省令において、押印、署名等を求めている手続であって、厳格な本人確認を行う必要性から印鑑証明の添付が必要となるもの及び国際条約上申請者の署名等が必要なものについては、引き続き押印又は署名を求めることとする。
※別添①に掲げる省令のうち別添③に掲げる省令において、押印及び本人確認書類として印鑑証明の添付を求めている手続については、押印を廃止することとし、他の添付書類等による本人確認が困難な手続については、運転免許証や旅券等の写し等の本人確認書類の提出を求めることとする。

大項目として二つあり、まずは押印や署名を不要とするための見直しについて、となっています。

サイトのPDFを見ていただくとわかりますが、国交省が管轄する法令がずらっと並んでいまして、当然建築設計関係以外の法令も多岐にわたります。

特に建築設計に関連するもののうち、建築確認手続きに影響すると思われる法令を抜粋してみますと、

別添①
・建築士法施行規則(昭和 25 年建設省令第 38 号)
・建築基準法施行規則(昭和 25 年建設省令第 40 号)
・土地区画整理法施行規則(昭和 30 年建設省令第5号)
・都市公園法施行規則(昭和 31 年建設省令第 30 号)
・宅地造成等規制法施行規則(昭和 37 年建設省令第3号)
・河川法施行規則(昭和 40 年建設省令第7号)
・都市計画法施行規則(昭和 44 年建設省令第 49 号)
・都市緑地法施行規則(昭和 49 年建設省令第1号)
・建築物の耐震改修の促進に関する法律施行規則(平成7年建設省令第 28 号)
・住宅の品質確保の促進等に関する法律施行規則(平成 12 年建設省令第 20 号)・土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律施行規則(平成 13 年国土交通省令第 71 号)
・屋外広告物法施行規則(平成 16 年国土交通省令第 102 号)
・長期優良住宅の普及の促進に関する法律施行規則(平成 21 年国土交通省令第3号)
・建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律施行規則(平成 28 年国土交通省令第5号)

別添②
該当なし

別添③
・土地区画整理法施行規則(昭和30年建設省令第5号)

では次に、本丸のパブコメ概要を見てみます。

脱ハンコ 確認

(1)
確認審査等に関する指針(平成 19 年国土交通省告示第 835 号)の一部改正
・建築基準法施行規則(昭和 25 年建設省令第 40 号)の改正により、建築確認等の申請書の添付図書について押印を求めないこととすることを踏まえ、建築確認等の審査において、当該図書に押印があることの確認を要しないこととする。

・建築確認等の申請書等に不備等があり、建築主に申請書等の補正等を求める場合について、電磁的方法により求めることができるようにする。

(2)
申請者が工場等において行う試験に立ち会い、又は工場等における指定建築材料の製造、検査若しくは品質管理を実地に確認する必要がある場合及びその費用を定める件
(平成 27 年国土交通省告示第 1164 号)の一部改正

・指定建築材料の認定手続において、工場等における実地確認を不要とする場合に書類で確かめることが必要となる事項について、電磁的記録により確かめることができるようにする。

建築確認をはじめ、申請書や添付図書に記名や押印を求めるもので厳密に本人確認書類を添付するものなどほぼありませんので、決まりとはいえ「なんだかな」と思っていたので、上記のように多岐にわたり押印が不要になるのは実に良いことだと思います。

大規模な建築物となると、確認申請に添付する図面の枚数もかなりの枚数になりますからそこに1枚1枚はんこを押す時間と労力はバカになりません。

設計者が1枚ずつ確認しながらはんこを押すことなんでまず無いんですから、なくてもいっこうに構わないのです。

改正案資料の中にも、新旧対象として
旧:「申請書又は通知書の正本に添えられた図書に当該図書の設計者の記名および押印があること」
新:「申請書又は通知書の正本に添えられた図書に当該図書の設計者の氏名が記載されていること」
となっていますから、申請書、設計図書への押印は全カットできる見込みです。

特定行政庁や確認審査機関側も、はんこの有無のチェックという不毛な作業も省けますし、修正資料をメールで送って申請先で印刷してもらえば差し替えが完了するんだったら、こんなに楽なことはないですよね。

いちいち持参や郵送に時間とお金をかけていたのが、非常にばかばかしいものだったことを懐かしむ日々が早く来て欲しいものです。

また最初のパブコメにもどって、その2番目の概要を見てみます。

2.国土交通省の所管する法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則(平成 15 年国土交通省令第 25 号)の一部改正
○ 情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成 14 年法律第 151 号)における署名等の代替のための同法第6条第4項の氏名又は名称を明らかにする措置として、電子署名等に加えて、行政機関等の指定する方法による措置を規定することとする。

2番目の項目では「情報通信技術を活用した行政の推進」とあるように、いわゆるデジタル化の促進のためのものとなっています。

これは他の法令ではどうかはわかりませんが、建築確認申請で言えば、電子とアナログで逆転現象が起こるかもしれませんね。

つまり、電子化された確認申請では電子署名が必要になり事前の登録やそれに伴う出費があるのに対して、紙での申請の場合ははんこ不要なので、審査機関側のサービスとしてメールで送られてきたPDFを印刷して確認申請を引き受けてしまうことができてしまうかもしれない、ということです。

メール等のデジタル技術は使うものの、電子申請の仕組みは使わない、という微妙な状況を生む可能性もあるかな、と思いました。

今後どのように手続きが簡便化されるか、非常に興味深いですね。

確認申請の脱ハンコスケジュールは??

公布・施行:12 月下旬

どちらの改正案ともに、令和2年12月下旬が公布・施行が予定されています。

このスピード感もなかなかのもので、ちょっとだけ政府を見直してしまいます。

このままいけば年明け(2021年)に提出する建築確認申請には、押印が不要になっているかもしれません!!

中途半端に記名押印を残すようなことなく、スパッとすべての押印が不要になってくれればと切に願います。

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