令和3年12月31日までの期間で、「屋外に設ける直通階段」に関連した、建築基準法施行規則一部改正におけるパブコメ意見募集が実施されています。
主な内容は以下のようになっています。
1.確認申請時添付書類・明示事項の明確化(屋外に設ける直通階段に関する規則改正)
2.確認申請書・建築計画概要書への記載事項追加(屋外に設ける直通階段に関する規則改正)
3.中間検査申請書・完了検査申請書への記載事項追加(屋外に設ける直通階段に関する規則改正)
4.軽微な変更と取り扱う計画の変更の追加
概要では図書への明示事項や申請書、関係の内容改正となっていますが、つまるところ「屋外に設ける直通階段」についてもっとしっかり確認申請や検査だけでなく維持保全においてもチェックしなければならない、という国の決意表明となっています。
屋外に設ける直通階段にまつわる事故を踏まえて、確認していきます。
「屋外に設ける直通階段」に関連する法改正について
詳細はパブコメの資料に詳しいので、まずはそちらをご覧いただきたいと思います。
建築基準法施行規則の一部を改正する省令案等に関する意見募集について
以下、添付資料の改正の背景について抜粋、要約すると、以下のようになります。
令和3年4月に発生した東京都八王子市の木造共同住宅の屋外階段崩落事故を受け、国交省では特定行政庁に対し調査を命じた。また、共同住宅の所有者に対し適切な対応を求めるよう要請するとともに、今後の事故防止のため、再発防止策を講じることとした。
国交省の再発防止策として挙げられているのが・設計時における防腐措置等の内容明確化・工事監理及び完了検査時における屋外階段のチェック内容明確化・適切な維持管理の確保です。
それぞれ、どのように規則改正に絡んでくるかというと、
設計時における防腐措置等の内容明確化
1.建築確認申請に必要な添付図書が明確化される
→施行規則第1条の3の内容が増える見込み
2.建築確認の様式の見直し
→確認申請書第4面【19.備考】欄に、屋外に設ける直通階段が木造である場合は追記する必要が出てくる見込み
→建築計画概要書の第2面に「建築基準法第12条第1項の規定による調査の要否」が追加される見込み
1は、これまで明確に図示すべきとされていなかった内容が明確になり、設計者は図面に明示する必要があるとともに、特定行政庁や確認審査機関は確実に審査時にチェックしなければならない、ということになります。
こういう場合のパブコメのQ&Aには、これまで曖昧になっていた取り扱いについてビシッと見解が示されることがあります。
ですから、パブコメの結果についてもチェックしておくと今後の設計業務に役立ちます。
2は、「またか」と思ってしまいますが確認申請書の書式が改訂される見込みです。
似たような書式改訂は、定期報告の対象とすべき防火設備の有無の欄が記憶に新しいですが、確認申請書のみならず建築計画概要書も改定される予定です。
書式改訂は大々的にアナウンスされることがないので、せめてこのサイトではお知らせしたいと思いますが、施行予定は令和4年の4月となっていますので近くなりましたら新書式とともにお伝えします。
古い書式で確認申請を提出したときの恥ずかしさはなかなかのものがありますから、このサイトをお読みいただいている皆様にはそのような思いをして欲しくないと切に願います。
その他、工事監理、完了検査、維持管理の各段階で諸改正がありますが、追って情報を更新していく予定です。
パブコメ募集サイト(PDFファイルが開きます)の参考資料(再発防止策案)も参照いただくと、わかりやすいかと思います。
また今回のパブコメで、屋外階段の件とは別に、軽微変更対象の拡大も提案されています。
確認申請手続きにおいての労力軽減につながる改正なので、その点は喜ばしいことです。
軽微変更に該当することとなる変更については案が挙がっていますが、これについては決定してから改めて記事にしたいと思います。
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再確認「屋外に設ける直通階段」について
八王子の事故の概要
国交省が調査結果を公表しています。
八王子市内階段崩落事故の共同住宅の施工者等が関与した共同住宅に係る調査結果等について
その他、ネットニュース的なものは検索すればたくさん出てきますが、野次馬的な話は今回の話題にそぐわないので割愛します。
しかしながら、適当な設計、ずさんな施工が人命を危険にさらし最悪奪うということは火を見るより明らかです。
事故概要も含め、改正について説明している日経の記事がありましたので、リンクも張っておきます。
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施行令121条の2の詳細
せっかくの機会ですので、基準法施行令第121条の2について再確認しておきましょう。
まずは条文
(屋外階段の構造)
第121条の2
前2条の規定による直通階段で屋外に設けるものは、木造(準耐火構造のうち有効な防腐措置を講じたものを除く。)としてはならない。
ここでいう「前2条」は令第120条および第121条で、それぞれ「直通階段」と「2以上の直通階段」という、避難関係規定の最重要法令です。
そして、上記120、121条について検討が必要な建築物の要件は、令117条に記載されています。
第117条
この節の規定は
・法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
・階数が3以上である建築物
・前条第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室を有する階又は
・延べ面積が1000平方メートルをこえる建築物
に限り適用する。
3番めの前条はいわゆる「排煙無窓の居室」についての規定で、法文では第35条によるものです。
つまり、今回法改正の対象となっている「屋外階段」は何も共同住宅の階段だけが対象になるわけではない、ということを理解しておく必要があります。
国交省の発表では共同住宅ばかりが取り上げられていますが、繰り返しになりますが、上記のように対象となる建築物は共同住宅には限りません。
規則や書式改訂でどのようになるかは不明ですが、法文通りに考えれば、共同住宅についてのみ改正が行われるということにはならないかと思います。
逆に考えれば、令117条に記載のない用途や規模の建築物に設置される屋外階段については、今回の改正の対象にはならないということになります。
例えば、一般的な木造2階建ての戸建住宅や2階建ての長屋といった用途であれば対象外になります。
(なお地域特性として、条例で屋外階段に何らかの規制が付加される場合もありますので、併せて確認する必要はあります。)
改めて法令集に目を通すなどして関連条文を整理しておくと良いでしょう。
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「屋外階段」とは
最後に、改めて屋外階段の定義を確認しておきます。
屋外階段とは「所定の条件を満たす、外気に有効に開放されている階段」とされています。
若干取り扱いに地域性による差異がありますが、基本は「基準総則 集団規定の適用事例」のとおりで、次のような条件となっています。
a)外気に有効に開放されている部分の長さが、当該階段の周長の1/2以上であること。
b)外気に有効に開放されている部分の高さが1.1m以上、かつ、当該階段の天井の高さの1/2以上であること
新宿区の解説がわかりやすいと思いますので、リンクを張っておきます。(図は抜粋です)
屋外避難階段の開放性について(PDFが開きます)
バルコニーや外部廊下の開放性の定義にも通じる内容となっており、設計者としては確実に押さえておきたい事項です。
上記のように屋外階段は「吹きさらし」となるわけですから、耐久性に対する措置は確実になされて然るべき部分といえます。