「既存不適格建築物の増改築」で最初にすべきことと、役立つ本

確認申請が必要な増改築、用途変更の計画が好きじゃない、避けている、見たくもないという方も少なからずいらっしゃると思います。
しかし、好き嫌いで仕事を選べないのも事実。

だったら、こっちから歩み寄ったら良いことがあるかもしれません。

そんなみなさんのために、日経BP社の「プロが読み解く 増改築の法規入門」が、なかなか役立ちそうなのでご紹介しつつ、私なりに、既存不適格建築物の増築で注意すべき点もまとめました。

プロが読み解く 増改築の法規入門 (NA一生BOOK)
by カエレバ

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「プロが読み解く 増改築の法規入門」の特徴

増築表紙

表紙に「新時代のバイブル」とまで書かれているので、期待も膨らみます。
中身についても、ざっくりと見ていきます。

法改正年表、遡及緩和一覧が面白い

法改正年表
遡及緩和一覧

巻頭のとじ込みのアイドルポスターならぬ、法改正年表がけっこう面白いです。
ズルっと伸ばしてみると、1950年から65年の間によくもまあ、これだけ改正してきたなというのが圧巻です。
これこそが、建築基準法を読みにくくしている諸悪の根源ですが、悪態をついても始まらないので、頑張って理解するしか無いですね。

裏面の遡及緩和一覧も、増築と用途変更の場合で記載されているので便利です。
東京建築士会も同じような資料を公開しているので、参考にしてみてください。(pdfファイルです)
既存不適格・用途変更遡及緩和条文リスト

このような表は、紙の書籍ならではのもで、電子書籍に勝る部分だと思います。

前半は15件の実例紹介

増築 目次

目次を見てみると、前半は増築、改築、耐震改修などの実例が15件ほど紹介されています。
実例部門はバリエーションが多岐にわたっており、眺めているだけでもなかなか興味深いです。
案件によっては、総工費なども記載されていて、9億円超の計画から、1850万円の住宅の案件まで様々です。

増築 一例

確認申請が必要な計画、不要な計画にわかれ、用途変更、増築、減築、耐震改修など多岐にわたります。
ただし、日経アーキテクチュアの記事になるような案件ですから、住宅案件は少なく、むしろ特殊な案件が多めとなっています。
即座に実務に役立つかというとそうも言えなさそうですが、設計者の苦労とか、行政との調整が鍵を握っていることが多いな、とかにじみ出る「困難」を知るにはうってつけです。
耐震改修については、青木茂建築工房の案件が3件もありエキスパートぶりを発揮しています。
「これ、本当に良いの?」というちょっと?な案件も無いことは無いですが、あまり外野からは追求しないことにしておきます。

後半はよくある質問、Q&A

増築QA
増築 目次2

後半は計画、設計にあたりぶち当たる壁、疑問を取り上げています。
中でも気になったもの、役に立ちそうかなというものの例として

減築なのに確認申請が必要なケース
主要構造部と構造耐力上主要な部分の違い
→これはこのサイトにも記事があります。(主要構造部と構造耐力上主要な部分
マンションの界壁をいじるときの注意点
申請をスムーズに進めるコツ
既存不適格建築物と違反建築物
既存不適格調書とは
構造遡及について
主な規定の詳細な履歴、変遷
検査済証のない建築物の法適合について
用途変更での注意点
「構造耐力上の危険性が増大しない」ためのポイント
パターン別構造遡及緩和について

といった部分が挙げられます。
詳しい中身はぜひ手にとってご覧いただきたいですね。
コピペすると著作権的にもアレなんで。

プロが読み解く 増改築の法規入門 (NA一生BOOK)
by カエレバ

「既存不適格建築物の増改築」で特に注意したいこと

「プロが読み解く 増改築の法規入門」にも詳細に記載されていますが、「既存不適格建築物の増改築」の計画で確認すべき最優先事項をまとめます。
それは「既存建築物の適法性を証明すること」です。
どんなに素晴らしいアイデア、設計でも、既存建築物が違反建築物であればどうにもならないことがほとんどです。
見た目には適法でも、それを証明する根拠がなければどうしようもありません。
それを証明するためには

1 検査済証、またはその行政の記録
2 1がなければ確認済証や建築確認の副本、図面、確認済みの行政の記録

が必要です。
検査済証、または検査済みの行政の記録がないと、増改築のハードルはぐぐっと上がります。
2の確認済み、図面類が無い場合は、ハードルどころか高さ不明の巨大な壁となって立ちふさがります。
大阪府の資料(増築申請の取扱)(pdf)にもあるように、何らかの方法で適法性を証明しなくてはなりません。
そうでなければ、既存不適格でなく、違反・違法となる可能性すらあるわけです。
増改築の確認申請を行わないのであれば、もし違反であっても明るみにはでませんが、確認申請を行うということは敷地全体を適法状態、もしくは建築時には適法であったことを証明する必要があります。
そのために、まずは既存建築物の適法性を調べ、資料がなければ行政や申請先に増改築が可能かを打診、相談するべきです。
諸々片付き、進められそうになってから、具体的なプランニングにとりかかるのが得策でしょう。

法適合調査という制度もありますが、図面すら無い建築物の場合、まずは図面作成が必要ですね。
しかし、基礎や躯体の詳細を知るには、内装を剥がしたり、地面を掘って基礎の大きさを調べたりと、多くの時間と労力そして費用が必要です。
調査をした結果、不適合ということさえあり得ます。
法適合調査があるから大丈夫、という認識も持たないほうが良いと思います。

兎にも角にも、上記の1,2を確認しながら、「プロが読み解く 増改築の法規入門」で知識を補完していくのが最初の段取りとしてふさわしいのではないかと思います。

プロが読み解く 増改築の法規入門 (NA一生BOOK)
by カエレバ

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