建築確認Tips 小規模な倉庫の建築基準法上の取扱い:国交省の技術的助言

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小規模な倉庫が建築物ではなくなりました!!

ちょっと衝撃的な取り扱いが公表されました。
タイトルのとおり、小規模な倉庫を建築物として取り扱わない、という国交省の技術的助言が公布されたのです。

国土交通省住宅局建築指導課長による発信で、技術的助言の番号、日付は以下のとおりです。

国住指 第4544号
平成27年2月27日

では具体的な内容はというと、以下の様な記述となっています。

土地に自立して設置する小規模な倉庫(物置等を含む。)のうち、外部から
荷物の出し入れを行うことができ、かつ、内部に人が立ち入らないものについ
ては、建築基準法第2条第1号に規定する貯蔵槽に類する施設として、建築物
に該当しないものとする。したがって、建築確認等の手続きについても不要で
ある。
この取扱いについては、当該倉庫が既製のものであるか否か、及びその構造
種別にかかわらず、上記に従って判断するものとする。

つまり、以下の条件を満たす小規模な倉庫は建築物として扱わないということです。

・土地に自立して設置する小規模な倉庫(物置を含む)
・外部から荷物の出し入れができる
・内部に人が立ち入らない

条件をみたすことで、法2条1号に記載されている「建築物」ではなく、本文カッコ書きの「貯蔵槽その他これらに類するもの」に該当することとなるのです。


集団規定の適用事例2017年度版で、より具体的に明記されました。

結論!「小規模な倉庫は建築物に該当しない」:基準総則・集団規定の適用事例2017年度版

この技術的助言が交付されるまではどのような取り扱いだったか

このサイトの以下の記事では、この技術的助言が出されるまでの小規模物置等の取り扱いについてまとめています。

建築確認Tips  庭先のプレハブ物置は建築物なのか?

上の記事では、土地に定着するものは建築物とみなす、と記載しました。
また、地上の土地にかぎらず、港に係留し続けレストランとして利用する船も建築物とみなすとしています。

ここでもう一度法2条第1号、建築物の定義を確認してみましょう。

一  
建築物 
土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

今回の技術的助言では、これまで当然建築物として考えられてきた「小規模な倉庫」を、条文中の「貯蔵槽その他これらに類する施設」とみなす、としたわけです。

小規模な倉庫は建築物として扱わない技術的助言を受けて、確認申請はどうなるのか

小見出し通り、この技術的助言を受けて、今後の確認申請はどうなるのかを足りない頭で考えてみました。

まず、今回の技術的助言の背景にあるのは「災害に強いまちづくりの推進」です。その中で、防災用の備蓄倉庫として、既成品の鋼製物置を活用するケースが多いようです。

そしてここからは完全に推測なのですが、各自治体や市町村の町内会組織なんかが市民のための備蓄倉庫を公民館や地元の神社の敷地に建築しようとする場合に、建築物として申請だなんだと手続きをすると、様々な障害があり、大変手間がかかる現実があるのではないでしょうか。
敷地境界が不明瞭だったり、調整区域だったり、既存建物の素性が不明だったり等々。

防災用の備蓄倉庫を建築しやすくするのが一番の目的ですが、敷地条件や具体的用途、規模を絞ってしまうと、それはそれで公式文書の表現がシビアになりすぎるので、ざっくりと「小規模な倉庫」なら建築物に該当させないことにした、という流れではないかと思われます。
(あくまで推測なので、これをもって行政に打合せに行ったりしないでくださいね)

そして、小規模な倉庫が建築物とならないことで、例えば今工事中の案件で、敷地内に小規模な倉庫がある場合軽微な変更で面積を減少させなければならないのか、物置の位置の移動で計画変更していたこれまでの面倒は何だったのか、共同住宅のなが~く連なる連棟型物置も人が中に入らない奥行きなら建築物とみなさないのか、などと様々な疑問や不平不満が湧いてきます。

結局は、申請先(特定行政庁、指定確認検査機関)に問い合わせて、それぞれの見解を確認するしか無いということになります。
指定確認検査機関はだいたいが、その建築地の特定行政庁の方針に従うことが多いので、特定行政庁に聞いてしまうのが早いかもしれません。

いずれにせよ、
・土地に自立して設置する小規模な倉庫(物置を含む)
・外部から荷物の出し入れができる
・内部に人が立ち入らない
という条件を満たすものはもはや「建築物」では無い、との取り扱いは明文化されました。

一定の規制緩和と捉えつつ、しばらくは手探りの状況が続きそうな気がします。
小規模がどの程度なのか、内部に人が立ち入らないことの要件など、気になることはその都度特定行政庁に確認するしかなさそうです。

また、道路斜線のセットバック対象になるのかどうかで、メインの建築物への影響も出てくる場合もあります(令130条の12)
それからまだ新しい技術的助言のせいか、ネットで検索してもヒットしません。

私がどうしてこの文書を入手できたのかは、お察しいただくこととしつつ、嘘やデマではないことはお約束します。

具体的な取り扱いは、特定行政庁にお尋ねいただくのが最善かと思います。

※追加情報
神奈川県の地域ニュースで次のような記事がありました。
公園の防災倉庫『建築確認が不要』に!

この記事によりますと、「防災倉庫の建築にあたり、確認申請費用がかかりすぎるために断念せざるを得なかった」ということが読み取れ、国交省の助言の前提条件である事例と一致します。

防災倉庫である用途や規模を限定し始めると収拾がつかなくなるため、やんわりとした表現で、大胆な規制緩和を行ったものと考えられます。

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