設計図書押印不要に関連する技術的助言など(令和3年2月:電子申請関連)

過去記事「【朗報】2021年(令和3年)元日より確認申請書の押印が不要に!!」に関連する技術的助言として、「確認申請手続き等における電子申請の取り扱いについて(国住指第3661号)」が令和3年2月1日に発出されました。

押印廃止の改正とどのように関連するかや同技術的助言のQ&Aの内容も含め、紹介していきます。

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確認申請の押印廃止と電子申請

「確認申請手続き等における電子申請の取り扱いについて(国住指第3661号)」は平成26年5月7日付の「確認申請手続き等における電子申請の取り扱いについて(技術的助言)」の見直しという位置づけになっています。

そして、今回の告示をもって平成26年分の技術的助言は廃止ということになりました。

記載内容としては全文を詳らかにご紹介するほどのものではないと考えます。

というのも、そもそも特定行政庁や確認審査機関向けの内容となっており、設計事務所をはじめとする申請者側が特に留意すべき点はほぼなく、いわゆる行政サイドの運営にかかわるものばかりとなっています。

そうはいっても気になる方もいらっしゃるでしょうから、4項目の見出しだけでもご紹介しておきます。

1.署名等の代替措置について
2.電磁的記録の長期保存について
3.電子申請に係る秘密の保持について
4.確認済証、中間検査合格証及び検査済証の交付について

このうち、1はこれまでは押印が必要でしたのでそれに代わる措置としていわゆる電子署名が必要でしたが、申請データに氏名又は名称を記録する措置によっても替えることができるようになりました。

電子署名もこれまで通り運用できますが、なくてもいいのにわざわざお金をかける必要もないのですぐに廃れることでしょう。

2は完全に審査側への要求、3については次のQ&Aの項目で触れます。

4については、国が「電子申請がなされた場合であっても、確認済証等は書面で交付すること」と明言していますので、すべて完全にデジタル化(ペーパーレス)にはならない、ということがハッキリしています。

さしずめ「紙と墨」が最強の記録媒体といったところでしょうか。

確認申請の電子申請にまつわる取り扱いなど(国交省Q&Aによる)

次に、Q&Aの内容についてですが、全15項目のうち重要そうな部分を抜粋して記載します。

Qの立場は特定行政庁や確認審査機関、Aの立場は国交省ですが、確認申請の実務者が知っておいて損はない項目もありますので、ざっと目を通していただくと役に立つと思います。

№2
Q:
建築確認の申請をデータで受け付ける場合、電子署名のないデータを受け付けることができるか。

A:
可能です。申請データに氏名又は名称の記録がされていることをご確認ください。例えば、以下の方法が考えられます。
・図面等に氏名又は名称が記載されていること。
・データのプロパティに、作成者等が記録されていること。

押印不要化に伴い、電子申請における電子署名は不要となりましたが設計者の氏名や名称がわかるようなデータとする必要があります。

№3
Q:申請図書を訂正する場合、訂正印は必要か。

A:申請図書の訂正印は法令上定めがありません。適切な者が訂正していることの確認はトラブル防止のため必要と考えますが、確認方法は行政機関等の判断によります。

電子申請に限って言えば、部分的に訂正するというよりは訂正された書類を差し替えるということになるでしょう。

書面による申請であれば、手書きの訂正部分には訂正印を押印するのが現状の対応策となっています。

№4
Q:委任状への押印は必要か。

A:行政機関等は委任状への押印の有無を確認する必要はありませんが、行政機関等の判断により、適切な方法で委任者の意思確認を行ってください。なお、委任者・受任者間のトラブル防止のため、必要に応じ、委任者・受任者間で押印の要否を判断いただくようお伝えください。

申請書、設計図書の押印が不要になり、委任状も基本的には同様に不要となりました。

しかし、これまで散々押印不要になればと思っていたものの、いざ委任状に建築主の印鑑がいらなくなると急に不安に駆られるのは、非常に日本人的と言えましょう。

これまでも、委任状に印鑑証明を付けてもらっていたわけではないので、無いなら無いで作業が省けると考えましょう。
当然ですが、建築主に黙って確認申請するのはやめましょう。

№7
Q:建築士法第 20 条、第 20 条の 2、第 20 条の 3の規定に基づく設計図書への建築士の記名・押印は不要となっていないが、確認申請の添付図書は建築士法で規定する設計図書には当たらないため、添付図書への建築士の押印は不要と考えてよいか。

A:貴見のとおりです。

これは過去記事「【朗報】2021年(令和3年)元日より確認申請書の押印が不要に!!」にも記載した通りで、申請書、委任状のみならず、添付図書(図面や計算書など)にも押印は不要です。

№8
Q:建築士法第 20 条第 2 項の規定に基づく構造安全証明書への押印は引き続き必要か。

A:民民間の手続であり、引き続き押印は必要ですが、建築確認を電子的に行う場合、押印した証明書をスキャンしたデータを行政機関等に送付することで提出することができます。

安全証明書の押印は省略できませんが、もともと写しの添付で良かったので電子的に取り扱うことは可能ということになります。

№11
Q:確認済証、中間検査済証、完了検査済証は引き続き紙で交付する必要があるか。

A:紙で交付する必要があります。

上の項目でも記載しましたが、何だかんだで「紙」は残ります。

№12
Q:電子メールに PDF 等のデータを添付して提出する方法、アップロードサービスを使ってデータをアップロードすることで提出する方法で申請を受け付けることも可能か。

A:可能です。具体的な提出方法については、事前に行政機関等のホームページ等で案内するようにしてください。

上の項目で、国は特定行政庁や確認審査機関に秘密保持について「しっかりやりなさいよ」と言っています。
そうなると、実際問題として電子メールに添付して申請というのは情報漏洩の危険性は高いと考えられます。添付ファイルがあるとパスワードを自動生成して送信してくれるサービスもありますが、メールアドレスが誤っていればパスワードごと誤送信されてしまうわけですから、片手落ちと言えます。

したがって、各審査機関が準備するデータアップロードのシステムなどを利用して申請書データを送付するという方法がスタンダードになるように思われます。

一方で、民間の審査機関は収益をあげなくてはなりませんから、顧客サービスと称してメール添付による申請を認める会社も出てくることも十分に考えられます。

利便性を取るか、リスクを取るかの非常にシビアなラインのせめぎあいになってくることが考えられ、審査機関と申請者(設計者)の情報セキュリティに対する考え方・方針の2極化が進む弊害が発生するのでは、との懸念もあります。

№14
Q:電子署名のない、申請データに氏名又は名称の記録のあるデータを受け付けるために、業務規程の改訂が必要となるか。

A:署名等の代替措置として、「申請データに氏名又は名称を記録する措置」を業務規程に規定する必要があります。
上記規定を業務規程に示す際のサンプルの素案を近日中に国交省から提示する予定です。

これは完全に審査機関側の取り扱い方法となりますが、逆に申請者の立場として考えると上の№12の項目にも関連し、審査機関側が許容している方法でなければ電子申請ができないということになるので、今後電子申請に取り組もうとしている申請者(設計事務所等)は申請先にしっかりと確認しておく必要があります。

№15
Q:電子申請として受理したデータを行政機関等が印刷して書面申請として受け付けることができるか。

A:できません。No.14 を踏まえ、業務規程を改訂し、電子申請として受け付けるようにしてください。

基本的には電子なら電子、紙なら紙で申請を使い分けなさいという意味合いです。
しかし№12の項目にも関連しますが、民間の審査機関の場合、収益を上げるには申請者の利便性を高める必要がでてきます。
そうなると「サービス」と称して、PDFで送ってもらったデータを「審査機関側で印刷して申請書の体裁として差し上げる」ということがまかり通る可能性もあります。
ただし、かつてある審査機関がお得意様の確認申請書そのものを代わりに作成していて業務停止となったこともあることから、行き過ぎたサービスは仇となる危険性を孕んでいますので、申請者側もリスクを理解しておかなくてはならないと言えるでしょう。

【まとめ】
確認申請が今後電子化してしていくことはもはや火を見るよりも明らかですが、情報管理、情報漏洩対策はますます重要な要素となっていくことでしょう。

あまり安易に考えず、セキュリティ対策をしっかりと行っている審査機関に対して電子申請を依頼するのが、結局は最善の策になるのではないでしょうか。

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