そぞろさんの「逆引き 住宅設計のための建築法規」をレビュー

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SNSで話題のそぞろさんの初の書籍である、「逆引き 住宅設計のための建築法規」を幸運にもご提供いただくことができましたので、どこがいままでの建築法規参考図書とちがうのか、レビューしたいと思います。

上の写真からもわかるように、さまざまな建築法規関連の書籍とならべて本棚に置いてもひときわ目立つ鮮やかなカラーがまず目を引きます。
建築法規の図書は渋いカラーリングの本が多いため、かなり攻めたデザインであると感じます。

そして、今風のぶっとい帯には、そぞろさんと思しき「とらのまき。」を咥えた女性があしらわれています。

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さあ、一体どんな本になっているのでしょうか。

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「逆引き 住宅設計のための建築法規」の最大の特徴

一番の特徴はやはり、そぞろさんのサイト(建築基準法とらのまき。)構成にも見られる、メッセージアプリ(つまりラインのような)風の会話形式で、親近感を持たせた表現となっているところでしょう。

建築基準法もれっきとした法律ですので、お堅いイメージの法律をできるだけわかりやすく紐解いてくれる工夫をこらしています。

つまり、確認審査機関の親切な女性確認検査員が親身になって相談に乗ってくれているような、そんな感覚でややこしい建築基準法について理解を深めていくことができる本になっているのが特徴かと思います。

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↑導入部分の、設計士の先輩後輩による会話の一例

そして未だかつて目にしたことが無い、建築基準法の解説本で「ざっくり言うと」とか言っちゃうフレンドリーかつワイルドな味付けで、肩の力を抜いて建築基準法という難敵に立ち向かっていける本なのではとも思います。

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↑衝撃的な「ざっくり言うと」の部分(要点部分はぼかしを入れてます)

ただ、それだけでは当然終わるわけはなく、しっかりと「まとめ」によって項目ごとに締めくくられており、宙ぶらりんになることはありません。

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↑アバウトのまま終わらせることなく、きっちりと締めくくられていきます

こんな風に、「これって何ですか」→「簡単に言うとこういうこと」→「詳しくいうとかくかくしかじか」→「つまりここを押さえておけ」というような流れで、小難しい法解釈などをわかりやすく嚙み砕いてくれているわけです。

例えるなら、ぱっとしない老人が実は水戸のご老公だった、とか、22世紀のネコ型ロボットの秘密道具でガキ大将にぎゃふんと言わせるつもりが結局失敗しちゃう、みたいな最後は落ち着くところに落ち着くという安心感のある構成になっている、ということです。

では、より具体的に好印象なポイントも見ていきます。

「逆引き 住宅設計のための建築法規」のここが気に入った

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やはり、一番の売りでもある「逆引き」一覧表が、実務設計者の助けになること請け合いですし、気に入りました。(画像は著作権的にアレなので、ぼかしてあります)

普段木造2階建ての住宅ばかり手掛けていると、3階建てになった途端、浴びせかけられる法規制の多さにめまいを覚えることはよくあることです。

しかし、この「逆引き」表をうまく活用すれば実際は建つはずがない(法に適合していない)提案をしてしまうミスを未然に防ぐことができるわけです。

確認申請書を作成するときに役立つことはもちろんですが、プラン提案時の基本的な法チェックでも役立つことこの上ないのです。

この「逆引き」表こそ、若い設計者の救世主になること請け合いです。

そのほかにも、これはなかなか他にない、という部分を列記してみます。

・誰に聞いていいかわからない、建築士の代理業務のことにも言及しており、ためになる

・2025年に施行予定の法改正についてもページを割いており、将来に備えることができる。また、この頃に「逆引き 住宅設計のための建築法規」の改訂版が発行されるであろうことも予想される。

・コラム欄のミニ知識コーナーが個人的にツボ。特に、法文の読み方講座のコラムは、kenkihou.comでも書いてあったりするが、やはりそもそも読んでも面白くないので閲覧数は非常に少ない。にもかかわらず、そぞろさんもページを割いておりなんかちょっとうれしかったりする。

・層間変形角の検討の項目では、なぜその検討が必要なのか、法律のウラガワまで踏み込んで解説していて勉強になった。こういうトリビア的な知識に紐づけていけば、ややこしい法律も理解が深まると思う。

・基本、住宅設計のための本なのに、排煙設備の項目も非常に詳しい。住宅関係の用途であればなんだかんだで排煙はあっさりと緩和が受けられることがほとんどだが、いずれその他用途の設計では避けて通れないことと捉え、説明を削りすぎていないところも感心した。

・法文の一覧と、用語一覧の索引があり、逆引き表と組み合わせて使うことでかなり目的ページにたどり着きやすい。索引がない参考書籍もあるので、この本を見習ってほしい。

「逆引き 住宅設計のための建築法規」のここをもっとこうして欲しい

長所と短所は表裏一体、読みながらここはもっとこうだったら良いのではという部分も書いてみたいと思います。

・共同住宅以外の特殊建築物についても説明が欲しい。

恐らく、特殊建築物にまで使用範囲を広げた逆引き解説も企画中なのではないかと勘繰ったりしていますが、現状では「住宅設計のための」となっているため、解説が限定的になっている部分がどうしてもあります。

本を参照する人によって、住宅のことだけで足りるという人もいるでしょうし、せっかくだから特殊建築物についてもあったほうが1冊で足りるのにと考える人もいるでしょう。

すべてを網羅しようとすると、解説ばかりでゆるい部分が無くなってしまいますから、コンセプトを忠実に表現していくとなると1冊にまとめるよりも分冊とするほうが使い勝手もよくなるものと理解し、今後の情報を待ちたいと思ったりします。

・A4サイズで作って欲しかった。

これはかなり個人的な要望ですが、紙の面積が大きければ字も大きくなり、結果読みやすいという、おっさんのボヤキみたいなものです。

防火避難規定の解説とか、集団規定の適用事例はA4サイズのため非常に読みやすいのです。また、開いたままで置いておきやすく、勝手に本が閉じてしまわないので図面などを広げながら本を参照するときに便利なのです。

特殊建築物バージョンが出版されるあかつきには、A4サイズで発行されることに期待します。

・せっかくの会話形式なのに色(カラー)がなく、ちょっと寂しい

フルカラーとまではいかなくても、重要な部分とか、そぞろさんがしゃべっている部分とか、2色刷りっていうんでしょうか、ちょっとでも色がついていたら、もっと楽しげな誌面になったのではと思ったりしました。

ネットやSNSに慣れ親しんだ世代の方が多く手に取る本なのではないかとも思われるので、もうちょっと華やかでも良かったのかなと思いました。

・ネットやSNS、スマホアプリとの連動企画があれば面白いかも

書籍購入者だけが閲覧できる専用サイトがあるとか、購入者専用のスマホで使える逆引きアプリとか、そんな特典があったりしても面白いのかな、とも思いました。アプリなら割引販売でもいいかもしれません。

やはりデジタルネイティブな世代であれば、スマホ連携にはまったく抵抗がないわけなので、アナログとデジタルの融合があるとより独自性が高まるのではと思いました。

とはいっても、電子書籍となるとやっぱり違ってくるので、仕事で参照するなら紙の書籍のほうが使い勝手は良いと思います。

「逆引き 住宅設計のための建築法規」kenkihou的まとめ

「逆引き 住宅設計のための建築法規」はこんな方に最適だ

・住宅メインの設計業務が多い方
・読んでいて眠くなりにくい建築基準法解説を探している方
・建築基準法をやさしく、フレンドリーに解説してくれる本を探している方
・これから2級または木造建築士の資格を取りたい方

書籍のタイトルにも「住宅設計のための」とありますので、住宅設計メインの方にはうってつけです。逆引き表を使えば、仕事の効率も爆上がりでしょう。

何があってもとりあえずはメッセージアプリの確認は怠らないという若い方たちであれば、この会話形式の解説本なら眠くならずに読み進められるのではないかと思います。

もういっそのこと、全部LINE風に解説している本があってもいいくらいです。

世知辛い世の中、みんなやさしさに飢えていますから、そぞろさんのやさしい切り口で説明してくれるこの本で、建築基準法への抵抗感を少しでも減らすことができれば、そぞろさんの言うところの「一周回って楽しく感じる」日も近づくのではないかと思います。

そして、住宅設計に特化して解説してあるということは、2級または木造建築士試験の副読本としてかなり役に立つと思いました。独学にしろ、建築士予備校に通うにしろ、試験対策テキストは読んでもまったく面白くなく、眠くなります。

ややこしい用語や過去問も、「逆引き 住宅設計のための建築法規」を傍らに置いてテキストを読んだり過去問を解いたりすれば、勉強もはかどり、着実に合格に近づくのではないでしょうか。

これまで建築基準法の参考書はどれも結局堅苦しくて読まなくなった、とか、これから実務や試験で勉強していきたいがどの本がいいのか迷っている、とか、そんなみなさんはひとまず書店で「逆引き 住宅設計のための建築法規」を手に取ってみるといいのではないかと思います。

最後に、本邦初公開、かはわかりませんがそぞろさんにサインをいただいたのでこっそり写真を載せたいと思います。

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