ブロック塀を含む「塀」と建築基準法に関するまとめ

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Photo by Matthias Rhomberg on Foter.com / CC BY

建築士向けにコンクリートブロック塀を含む「塀」と建築基準法について、いろいろとまとめてみました。

大きな地震のたびに話題に上るもののすぐに忘れられてしまうのも事実ですが、少しでもブロック塀に対する知見を深め、現在の法規制について理解しておきましょう。

既存コンクリートブロック塀の耐震診断指針(案)・同解説
by カエレバ

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塀と建築基準法

塀は建築物なのか

建築基準法第2条、61条、62条に、塀に関する記述があります。

(用語の定義)
第二条 
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 
建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線僑、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

第五節 防火地域
(防火地域内の建築物)
第六十一条 
防火地域内においては、階数が三以上であり、又は延べ面積が百平方メートルを超える建築物は耐火建築物とし、その他の建築物は耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない。ただし、次の各号の一に該当するものは、この限りでない。
一 延べ面積が五十平方メートル以内の平家建の附属建築物で、外壁及び軒裏が防火構造のもの
二 卸売市場の上家又は機械製作工場で主要構造部が不燃材料で造られたものその他これらに類する構造でこれらと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途に供するもの
三 高さ二メートルを超える門又はで不燃材料で造り、又は覆われたもの
四 高さ二メートル以下の門又は

(準防火地域内の建築物)
第六十二条 
準防火地域内においては、地階を除く階数が四以上である建築物又は延べ面積が千五百平方メートルを超える建築物は耐火建築物とし、延べ面積が五百平方メートルを超え千五百平方メートル以下の建築物は耐火建築物又は準耐火建築物とし、地階を除く階数が三である建築物は耐火建築物、準耐火建築物又は外壁の開口部の構造及び面積、主要構造部の防火の措置その他の事項について防火上必要な政令で定める技術的基準に適合する建築物としなければならない。ただし、前条第二号に該当するものは、この限りでない。
2 
準防火地域内にある木造建築物等は、その外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分を防火構造とし、これに附属する高さ二メートルを超える門又はで当該門又は塀が建築物の一階であるとした場合に延焼のおそれのある部分に該当する部分を不燃材料で造り、又はおおわなければならない。

法2条第1項1号に、「これに付属する門若しくは塀」とあり、塀は確かに建築基準法における建築物に含まれていることがわかります。

ただし、「付属する」という部分が建築確認の要否と関係してきます。

61条、62条では塀に対する防耐火性能について言及しています。

その他、法52条、53条にも登場しますが、位置に関する規定となっています。

塀と建築確認

素朴な疑問として、塀は建築確認の対象となるのかどうか、という点があります。

建築確認に関する条文、法6条を見てみましょう。

(建築物の建築等に関する申請及び確認)
第六条 
建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合

法6条1項の各号に該当する建築物を建築(増築等を含む)しようとする場合、建築確認が必要になります。

法2条で、塀も建築物に含まれていますが、「付属している」塀が対象となっているのです。

極端なことを言えば、建築物が存在しない敷地に突如として建っている塀は建築物ではないということです。(建築物に付属していない)

また、すでに住宅などが建っている敷地で、塀だけを新たに構築する場合については建築確認は必要ではないのです。(この場合は建築物の付属となるので、建築物に該当する。)

ただし、建築確認が必要ではないだけで法の適用は受けますから、建築基準法に定める構造方法で施工しなければならないのですが、実際は外構業者が建築基準法を無視して(もしくは知らずに)施工してしまうことも多々あると考えられます。

ここで気をつけたいのは、防火・準防火地域内においては住宅の付属の塀のみを工事する場合でも、建築確認が必要になるという点です。
塀は床面積が発生しませんから、防火・準防火地域「以外」であれば10㎡以下ということとなり建築確認は不要ですが、防火・準防火地域内となると話は変わります。
聞かれたことがある方もいらっしゃるかもしれませんがいわゆる「0㎡増築」と言われるもので、申請面積0㎡で確認申請書を作成するパターンとなります。

また、住宅の建て替えで建築確認を申請する場合、既存の塀についてどの程度の指摘があるかは、地域差があるのが現状といえます。

建築確認申請の審査において、既存の塀が建築基準法の規定を満たしていない場合、改修を指摘する行政機関もあれば、既存の塀については不問としている行政機関もあります。

本来は違法状態な塀については改修を求めたり、作り直させたりするべきなのですが、社会性や経済性など、ある程度のバランスを許容しているのが実態となっています。

塀の仕様・構造について

建築基準法で定められている塀の構造方法について見てみます。

構造規定については施行令に記載があります。

補強コンクリートブロック造の塀の規定

第四節の二 補強コンクリートブロック造

(目地及び空胴部)
第六十二条の六 
コンクリートブロツクは、その目地塗面の全部にモルタルが行きわたるように組積し、鉄筋を入れた空胴部及び縦目地に接する空胴部は、モルタル又はコンクリートで埋めなければならない。
2 
補強コンクリートブロック造の耐力壁、門又はへいの縦筋は、コンクリートブロックの空胴部内で継いではならない。ただし、溶接接合その他これと同等以上の強度を有する接合方法による場合においては、この限りでない。

(塀)
施行令 第六二条の八 
補強コンクリートブロック造のへいは、次の各号(高さ一.二メートル以下のへいにあつては、第五号及び第七号を除く。)に定めるところによらなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

一 高さは、二.二メートル以下とすること。
二 壁の厚さは、十五センチメートル(高さ二メートル以下のへいにあつては、十センチメートル)以上とすること。
三 壁頂及び基礎には横に、壁の端部及び隅角部には縦に、それぞれ径九ミリメートル以上の鉄筋を配置すること。
四 壁内には、径九ミリメートル以上の鉄筋を縦横に八十センチメートル以下の間隔で配置すること。
五 長さ三.四メートル以下ごとに、径九ミリメートル以上の鉄筋を配置した控壁で基礎の部分において壁面から高さの五分の一以上突出したものを設けること。
六 第三号及び第四号の規定により配置する鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、縦筋にあつては壁頂及び基礎の横筋に、横筋にあつてはこれらの縦筋に、それぞれかぎ掛けして定着すること。ただし、縦筋をその径の四十倍以上基礎に定着させる場合にあつては、縦筋の末端は、基礎の横筋にかぎ掛けしないことができる。
七 基礎の丈は、三十五センチメートル以上とし、根入れの深さは三十センチメートル以上とすること。

組積造の塀の規定

第四節 組積造
(適用の範囲)
第五十一条 
この節の規定は、れんが造、石造、コンクリートブロック造その他の組積造(補強コンクリートブロック造を除く。以下この項及び第四項において同じ。)の建築物又は組積造と木造その他の構造とを併用する建築物の組積造の構造部分に適用する。

(組構造のへい
施行令 第六一条 
組積造のへいは、次の各号に定めるところによらなければならない。
一 高さは、一.二メートル以下とすること。
二 各部分の壁の厚さは、その部分から壁頂までの垂直距離の十分の一以上とすること。
三 長さ四メートル以下ごとに、壁面からその部分における壁の厚さの一.五倍以上突出した控壁(木造のものを除く。)を設けること。ただし、その部分における壁の厚さが前号の規定による壁の厚さの一.五倍以上ある場合においては、この限りでない。
四 基礎の根入れの深さは、二十センチメートル以上とすること。

鉄筋コンクリート造の塀についての規定

第六節 鉄筋コンクリート造
(適用の範囲)
第七一条 
この節の規定は、鉄筋コンクリート造の建築物又は鉄筋コンクリート造と鉄骨造その他の構造とを併用する建築物の鉄筋コンクリート造の構造部分に適用する。
2 高さが四メートル以下で、かつ、延べ面積が三十平方メートル以内の建築物又は高さが三メートル以下のへいについては、この節の規定中第七十二条、第七十五条及び第七十九条の規定に限り適用する。

(コンクリートの材料)
第七二条 鉄筋コンクリート造に使用するコンクリートの材料は、次の各号に定めるところによらなければならない。
一 骨材、水及び混和材料は、鉄筋をさびさせ、又はコンクリートの凝結及び硬化を妨げるような酸、塩、有機物又は泥土を含まないこと。
二 骨材は、鉄筋相互間及び鉄筋とせき板との間を容易に通る大きさであること。
三 骨材は、適切な粒度及び粒形のもので、かつ、当該コンクリートに必要な強度、耐久性及び耐火性が得られるものであること。

(コンクリートの養生)
第七五条 コンクリート打込み中及び打込み後五日間は、コンクリートの温度が二度を下らないようにし、かつ、乾燥、震動等によつてコンクリートの凝結及び硬化が妨げられないように養生しなければならない。ただし、コンクリートの凝結及び硬化を促進するための特別の措置を講ずる場合においては、この限りでない。

(鉄筋のかぶり厚さ)
第七九条 鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、耐力壁以外の壁又は床にあつては二センチメートル以上、耐力壁、柱又ははりにあつては三センチメートル以上、直接土に接する壁、柱、床若しくははり又は布基礎の立上り部分にあつては四センチメートル以上、基礎(布基礎の立上り部分を除く。)にあつては捨コンクリートの部分を除いて六センチメートル以上としなければならない。
2 前項の規定は、水、空気、酸又は塩による鉄筋の腐食を防止し、かつ、鉄筋とコンクリートとを有効に付着させることにより、同項に規定するかぶり厚さとした場合と同等以上の耐久性及び強度を有するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部材及び国土交通大臣の認定を受けた部材については、適用しない。

建築基準法で構造が規定されている塀は、補強コンクリートブロック造、組積造、鉄筋コンクリート造の塀です。

なぜか、「塀」と「へい」の2種類の記述が混在しています。

組積造と補強コンクリートブロック造の違いが最初はややわかりにくいですが、組積造は石積みやレンガ積みを想定したもので、塀を作る場合の高さは1.2mが上限です。

一方で、補強コンクリートブロック造の塀は2.2mまで高くすることが出来ます。

この部分を良いように解釈して、補強コンクリートブロック造に該当しない材料、施工方法にもかかわらず背の高い塀を作ってしまうケースが多くあります。

建築基準法の規定は最低限のものとなっていて、日本建築学会などがこれまでの知見等を踏まえたより安全なブロック塀の構造について資料を公開しています。

しかし、安全に作るためには費用や手間もかかります。

残念なことに、安全性を蔑ろにしたコスト優先で作られた塀が日本中にあるわけです。

以下の東洋経済の記事でも、ブロック塀が抱える闇について言及されています。

参考:「危ないブロック塀」が野放しになる深刻原因

ブロック塀に関する役立つ資料、情報

日本建築学会をはじめ、行政等の各種団体がブロック塀に関する資料を公開しています。

非常に役に立つものが多くありますので、ぜひ参考にしていただき、塀の安全性について認識を高めていただければと思います。

全国建築コンクリートブロック工業会
ブロック塀に関して一般の方でもわかりやすいように書かれています。

組積造と補強コンクリートブロック造の違いについてもわかりやすいです。

実際の被害状況についても写真が公開されていて、危険性を認識するのに役立ちます。

Q2.一般にブロック塀とよばれているものにはどのようなものがありますか。

A 世間一般にブロック塀と呼ばれているのは

a.コンクリートブッロクを使ってつくる塀で、このホームページで解説しているブロック塀です。この塀には日本建築学会が設計規準や施工マニュアルで設計および施工規則を決めています。

b.通常のコンクリートブロックの空洞を大きくして、この大きな空洞部に鉄筋を入れコンクリートを全充填する型枠コンクリートブロック(メーソンリー)造といわれる塀があり、補強コンクリートブロック塀の一種として日本建築学会が設計基準や施工マニュアルで設計および施工の規則を決めています。

c.天然石を積んでつくる塀で、日本建築学会で組積造として設計規準があります。この塀は地震で倒れないように補強する鉄筋が入らず、ダボといわれる短い鉄筋で上下の石をつなぐ工法を採用しています。このダボが規定どおりに施工されていない塀が地震時に倒壊し、これをブロック塀の倒壊とニュース報道され、通常のブロック塀とよく混同されています。

d.ブリックと呼んでいるレンガ状のもの、石塀に似せた大き目のブロックをつかったもの、高さが低く長さが短いブロックなどのコンクリートブロックの範囲に入らないもので、各ブロックメーカーが工夫した塀があり、この設計規準や施工方法などはメーカー仕様でつくられます。

また、建築主向け、設計者向けに各種情報も公開されていますのでありがたく活用しましょう。

[blogcard url=”https://www.jcba-jp.com/dictionary/safety.php”]
ブロック塀大事典 安全なブロック塀とは

block guide[2]

世田谷区 ブロック塀の資料
pdfファイルが開きます。
塀の施工についての法改正経緯や、現行の規定、補強方法等について詳しいです。
以下のような図解も豊富です。

塀の補強 世田谷区

補強コンクリートブロック造 設計施工資料
pdfファイルが開きます。
クボタセメントの公開している資料です。

cement

地震時の通学路「危険箇所」をチェックできるイラストが評判
『心配学』(光文社新書)の著書がある島崎敢さん(防災科学技術研究所の特別研究員)が作成したイラストが、ブロック塀に限らず、地震の際の身の回りの危険な箇所に対する気づきを与えてくれます。

危険箇所について親子で考えてみようという狙いから、大人でも子供でもわかりやすいようなイラストになっています。

きけんなへい

更新情報:
O様からのご指摘により、防火・準防火地域内における付属の塀を作る際には確認申請が必要な点について、記事を修正しました。ご指摘ありがとうございます。
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(2019/7/3)

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