給湯器の転倒防止措置も設計者の責任だよ、というお話

国交省から特定行政庁や業界団体に、給湯器の転倒事例に関する通達がありました。

今回の通達は、今般の熊本地震で給湯器の転倒事例が多く見られたため、緊急に行われたものとのことです。
国民生活センターの調査によると、転倒が見られた給湯器のうちほぼ半数が東日本大震災後に設置されたもので、約20%が新告示施行後のもののようです。

給湯器の転倒 グラフ

国民生活センター 該当記事
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20161020_1.html
報告書pdf(PDFファイルが開きます)
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20161020_1.pdf

リフォームや給湯器の更新等の場合は、建築確認はおろか建築士も関与せず、持ち主と設備業者とのやりとりだけですから、転倒防止措置がなされるかどうかはその業者の誠実さに左右されてしまいます。
告示が施行されてから2年余り経ってもこの有様ですから、なかなかに歯がゆいのが現状です。
設計に携わるものとしては、改めて給湯器の転倒防止措置についての認識を新たにする必要があるでしょう。

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給湯器の転倒防止に関する基本的事項のおさらい

対象となる告示は、以下のシステムを利用して原文を確認できます。
告示検索システム

平成12年 告示1388号
建築設備の構造耐力上安全な構造方法を定める件
附 則(平成24年12月12日 国土交通省告示第1447号)

この告示の本文に、給湯器のアスペクト比や質量別に固定方法の一覧表が掲載されています。

また、このサイトの過去記事にも記載があります。
建築確認ニュース 給湯器転倒防止の改正告示が本日施行。

建築確認に絡み、今後起こりうるであろう変化と対応策

・確認申請時、完了検査時に細かく指摘されるようになる、かもしれない

建築士が設計を行うことにより、構造審査が省略される特例物件は、給湯器の転倒防止措置は当然行われるものとして建築確認でも審査がされません。
構造計算書が添付される案件では、必要な資料の添付や、その措置の方法の記載が必要です。
しかし今後は、特例物件についても、図面への記載が求められるようになるかもしれませんし、さらには完了検査時にチェックが行われることになるかもしれません。
これは、行政や確認審査機関ごとに対応が異なる場合もあるとは思いますが、より厳しくチェックされるようになることは想像に難くありません。

・確認申請書に記載される建築主、設計者の責任が問われる、かもしれない

戸建住宅を始めとする案件では、建築士が1件1件の給湯器の施行をくまなく管理しているとは到底考えられません。設備施工会社におまかせしてしまっているのが実情ではないでしょうか。
本当はダメですよ、管理しないと。もちろん、それはみんなわかっていると思います。
ただ、どうしてもそこまでの指示、監理は仕事上の優先順位が低くなりがちです。
しかし、地震がどこでいつ起こるかは結局のところ誰にもわかりません。
であれば、設計者としては給湯器の転倒防止に対して、必要な措置が行われるよう指示し、実施状況を確認しなくてはならないのです。

理想と現実、本音と建前、いろいろあると思いますが、今回の対策についてはそんなに手間がかかる手配も必要ないと思います。
例えば、告示に適合した施工方法の説明書があるメーカーの給湯器しか採用しない、施工業者を1度集めて誠実な施工を行うよう指示する、などです。
給排水設備図の給湯器の近くに転倒防止措置についての特記を記載しても良いかもしれません。
設計の際はぜひ給湯器の転倒防止措置についても心に留めておくようにしたいものです。

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