意外と知らない昇降機の建築確認申請

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昇降機に建築確認が必要となる根拠を理解する

エレベーターやエスカレーター、ダムウェーター(小荷物専用昇降機)等の昇降機。
これらを建築物に設置する際には、建築確認が必要なことはみなさんご存知の通り。

しかし、申請関係はエレベーター業者に任せていて、確認申請に関わる細かい部分まで理解している人は少ないかもしれません。

ここでは、昇降機の建築確認申請に関してすべてを網羅するというわけではなく、最低限抑えておきたいポイントを説明します。

建築確認が必要な昇降機とは

法2条1号の「建築物」の定義には、建築設備が含まれています。
そして法2条3号により、建築設備には「昇降機」が含まれています。

建築設備は建築物と一体的に確認申請で審査されるべき部分ですが、法87条の2の規定により、「政令で定める昇降機は法6条の規定を準用する」とあり、建築物とは別で確認申請が必要と読み取ることが出来ます。

(建築設備への準用)
第八十七条の二
政令で指定する昇降機その他の建築設備を第六条第一項第一号から第三号までに掲げる建築物に設ける場合においては、
(中略)
第六条(第三項及び第五項から第十二項までを除く。)、
(中略)
までの規定を準用する。

政令で指定する昇降機とは以下のとおりです。

(確認等を要する建築設備)
第百四十六条  法第八十七条の二 (法第八十八条第一項 及び第二項 において準用する場合を含む。)の規定により政令で指定する建築設備は、次に掲げるものとする。
一  エレベーター及びエスカレーター
(以下略)

また、法34条1項で昇降機の安全性や構造等について規定されており、政令は第129条の3~第129条の13の3までが対応しています。
(昇降機)
第三十四条
建築物に設ける昇降機は、安全な構造で、かつ、その昇降路の周壁及び開口部は、防火上支障がない構造でなければならない。

ここで、施行令129条の3から、さらに細かい内容に入っていきます。

第二節 昇降機
(適用の範囲)
第百二十九条の三
この節の規定は、建築物に設ける次に掲げる昇降機に適用する。
一  人又は人及び物を運搬する昇降機(次号に掲げるものを除く。)並びに物を運搬するための昇降機でかごの水平投影面積が一平方メートルを超え、又は天井の高さが一・二メートルを超えるもの(以下「エレベーター」という。)
二  エスカレーター
三  物を運搬するための昇降機で、かごの水平投影面積が一平方メートル以下で、かつ、天井の高さが一・二メートル以下のもの(以下「小荷物専用昇降機」という。)
2  前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる昇降機については、それぞれ当該各号に掲げる規定は、適用しない。
一  特殊な構造又は使用形態のエレベーターで国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの 第百二十九条の六、第百二十九条の七、第百二十九条の八第二項第二号、第百二十九条の九、第百二十九条の十第三項及び第四項並びに第百二十九条の十三の三の規定
二  特殊な構造又は使用形態のエスカレーターで国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの 第百二十九条の十二第一項の規定
三  特殊な構造又は使用形態の小荷物専用昇降機で国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの 第百二十九条の十三の規定

施行令129条の3第2項に登場する「特殊な構造又は使用形態のエレベーター」等については、告示に詳細があります。
以下に、該当告示を抜粋してみます。

特殊な構造又は使用形態のエレベーター及びエスカレーターの構造方法を定める件
平成12年5月31日建設省告示第1413号
最終改正 平成25年10月29日国土交通省告示第1053号

建築基準法令(昭和25年政令第338号)第129号の3第2項第一号及び第二号の規定に基づき、特殊な構造又は使用形態のエレベーター及びエスカレーター構造方法を次のように定める。

一 かごの天井に救出用の開口部を設けないエレベーター

二 昇降路の壁又は囲いの全部又は一部を有しないエレベーター

三 機械室を有しないエレベーター

四 昇降行程が7m以下の乗用エレベーター及び寝台用エレベーター

五 かごの定格速度が240m以上の乗用エレベーター及び寝台用エレベーター

六 かごが住戸内のみを昇降する昇降行程が10m以下のエレベーターで、かごの床面積1.1㎡以下のもの

七 自動車運搬用エレベーターでかごの壁又は囲い、天井及び出入口の戸の全部又は一部を有しないもの

八 ヘリコプターの発着の用に供される屋上に突出して停止するエレベーターで、屋上部分の昇降路の囲いの全部又は一部を有しないもの

九 車いすに座ったまま使用するエレベーターで、かごの定格速度が15m以下で、かつ、その床面積が2.25㎡以下のものであって昇降行程が4m以下のもの又は階段及び傾斜路に沿って昇降するもの

十 階段及び傾斜路に沿って1人の者がいすに座った状態で昇降するエレベーターで定格速度が9m以下のもの

最近のエレベーターは、ハリウッド映画でよく見かけるような天井救出口が「無い」ものが多く、そのような上記1号に該当するエレベーターは、実は「特殊な構造のエレベーター」ということになります。

同様に、6号のホームエレベーターや9号の段差解消機、10号のいす式階段昇降機も「昇降機」の範疇に含まれますので、確認申請が必要な昇降機となっていることがわかります。

ここまで読んでみて、確認申請が必要な昇降機に関連する条文、告示が意外と多く感じられたのではないでしょうか。

すべてを理解する必要はないとは思いますが、意匠設計の方でも大体の流れは知っておいて損はないでしょう。

新築の1~3号建築物に設置する昇降機の場合

ここで今一度法87条の2を見てみますと

「政令で指定する昇降機その他の建築設備を第六条第一項第一号から第三号までに掲げる建築物に設ける場合」

とあります。

つまり、いわゆる1号~3号建築物に昇降機を設置する際は、建築物とは別に昇降機の建築確認が必要になります。

1号建築物となる特殊建築物を始め、一戸建て住宅でも3階建てとなれば、2号や3号に該当してきますので、建築物と昇降機は別申請となります。

ここで、ケースとしては少ないかもしれませんが、木造2階建て500㎡以下の事務所にエレベーターが設置される場合はどうでしょうか。

この建築物が1~3号に該当しなければ、法87条の2の規定に当てはまりませんので、昇降機の建築確認は不要ということになります。

建築物の新築時に昇降機も設置される場合は、通常別申請する昇降機の図書も、建築物の申請書に添付することになります。

なお、勘違いしやすいポイントとして、昇降機の確認申請は建築物とは別に申請するので、建築物には昇降機の図面は添付不要と考えがちです。

しかし、実際は昇降機の平面図や構造詳細図は添付する必要があります。
具体的な図面については、施行規則第1条の3第4項をご覧頂きますと、建築設備に関する添付図書について記載があります。
(いわゆる構造計算までは求められていません)

ちなみに昇降機の確認申請に添付する図書については、施行規則の第2条の2に記載がありますので、読んでみてください。
(こちらは構造計算も添付します)

施行規則はほとんど読む機会がないと思いますので、この際にちょっとでも目を通してみてください。

新築の4号建築物に設置する昇降機の場合

上記「1~3号建築物に設置する昇降機の場合」でも触れましたが、4号建築物に昇降機を設置する場合は、昇降機の確認申請は別申請ではなく、併願申請としなければなりません。

木造2階建ての住宅に昇降機を設置する場合は、4号建築物ですから、併願申請です。

昇降機に含まれる設備、つまり段差解消機やいす式階段昇降機も、新築時に同時に設置する場合は、併願申請しなければなりません。
つまり、昇降機の図面を準備しておかなければならないのです。

鉄骨2階建てやRC造2階建ての小規模住宅は、3号建築物なので、昇降機の設置があれば申請は別申請となります。

1~3号建築物なのか、4号建築物なのかを正しく区別しなければなりませんので、それぞれの要件がいまいちよくわからない方は法6条第1項を10回くらい読みましょう。
5分あれば10回読めます。

既存建築物に設置する昇降機の場合

既存建築物に昇降機を設置する場合は、確認申請はどうなるのでしょうか。

既存建築物が1~3号建築物である場合は、法87条の2により、昇降機の確認申請が必要です。

なお、既存不適格建築物の昇降機の改修(更新)の場合は、下の記事が参考になるはずです。
用途変更では防火区画は遡及適用されない:読者様のご指摘より
”目次2.3 昇降機技術基準の解説2009年版にズバリ明言されていました”を参照下さい

ここで、4号建築物(木造2階建ての一戸建て住宅等)に設置する場合はといいますと、法87条の2に該当しませんので確認申請は不要となります。

ケガや高齢化で足が不自由になれば、段差解消機を設置したり、いす式階段昇降機を設置する場合もあると思います。

そんなときでも、4号建築物への昇降機に関しては、確認申請は不要です。

これは、4号建築物の大規模修繕、模様替えが確認申請不要なのと同様に覚えてしまっても良いかもしれません。

しかし、特定行政庁によっては、4号建築物に昇降機を設置する際に「法12条5号の報告」を求めている場合があります。

いつくか情報を公開している特定行政庁がありましたので、ご紹介します。

橿原市
建物に「段差解消機」や「いす式階段昇降機」を付けたいが、届出や許可が必要ですか。

品川区
「住宅用昇降機」の設置について
住宅用エレベーター申請
上記サイトより抜粋(あくまで住宅用エレベーターに関する一覧表です)

大田区
建物を建てる際の注意点や法律の規制について(ホームエレベーター、いす式階段昇降機)
(大田区はご相談下さい、とあり法12条5項の報告については明記されていない)

紹介した3つの特定行政庁のうち、法12条5項の報告について明記してあるのは品川区だけですが、同様のケースの場合はまずは管轄の特定行政庁に事前に相談すべし、ということです。

報告が求められる場合は、確認申請と同レベルの図書を求められることが大半のようです。

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