現代アートの聖地?江之浦測候所で五感を研ぎ澄ませ

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意識高い系の皆さんの間で話題の?江之浦測候所に行ってきました。

日本のみならず、世界の現代アートシーンで欠かせない存在となっている杉本博司氏の財団が作った、美術館などの総合アート施設が江之浦測候所です。

どうして「測候所」なのか、というようなことや、そもそもこの施設のコンセプトは何なの?というようなことは、公式サイトやメディア記事、雑誌などを読むとよくわかります。

ついでに言うと、瀬戸内の杉本博司作品を見ておくと、なお一層楽しめます。

江之浦測候所 公式サイト

産経ニュース
「小田原文化財団 江之浦測候所」 人に心が生まれた風景

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江之浦測候所のことを、ざっくりと紹介

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いきなりお金の話で恐縮ですが、江之浦測候所の入場料はお一人様、なんと3000円+税となかなかのお値段です。

駐車場利用や最寄りの駅からの送迎は無料ですが、普通の美術館の倍くらいのお値段がしますが、はっきり言いましょう、高くないです。

しかも、2時間入れ替え制という、どこかの飲み屋のような制度で運営されていますが、2時間なんてあっという間。

行けばわかります。また行きたくなります。

上の写真のように、サイトで予約したチケットはセブンイレブンで購入、当日受け付けでかなりしっかりした作りのパンフレットを渡されます。

入館証の代わりにシールをもらえるので、パッと見でわかるように胸のあたりなどに貼っておきます。

施設は開館中は誰でも入れるような作りなので、このシールによってお金を払った人かどうかを見分ける仕組みです。

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あらかじめ本やネットで予習しておいたほうが絶対に良いと思いますが、パンフレットにも敷地内の展示について解説があります。

番号順にかなりしっかりした解説がついていて、一つ一つ確認しながら鑑賞していると、時間が足りなくなります。

敷地内は広く、段差も多いので歩きやすい靴で行きたいですね。

また、別紙には立ち入れる範囲が説明されています。うっかり、入ってはいけない場所に立ち入らないよう、注意が必要です。

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パンフレットの冒頭の写真ですが、よく見ると杉本さんが危ない!!

実際は立ち入ることは出来ない場所ですが、アートは命がけなんです、たぶん。

ちなみに江之浦測候所で測候しているのは「天空」です。
なんか、カッコいい。

江之浦測候所は建築だけでなく、ただの石や階段にも意味や歴史がある

普通の庭園だったら、何も考えずに素通りしてしまいそうな石や構造物も、江之浦測候所ではことごとく意味や歴史があります。

それらの歴史を踏まえつつ、小田原の素晴らしい景観と合わせ、感覚を研ぎすませて過ごす時間は特別です。

冬至光遥拝隧道と夏至光遥拝100メートルギャラリーを同時に眺められる位置に立つと、冬至と夏至でこれだけ日の出の際の角度が違うということが体感できます。

日々の生活では、「日が長くなったな」とか「暗くなるのが早くなったな」としか思いませんが、天空を測候するとこれだけの違いがあるということがよくわかります。

ちなみに、夏至光遥拝100メートルギャラリーは海抜100mに位置しているとのことで、杉本氏のこだわりには脱帽です。

建築やそのインテリアにも妥協がありません。

素材や納まりが徹底的に吟味されているのがよくわかります。

構造的にどうなっているのか全く想像も出来ない部分もあったり、危うささえ感じさせる仕上がりは流石ですね。

車椅子利用者用のトイレにはオストメイト対応の器具も備えられ、ユニバーサルデザインにも配慮されていました。

男性用トイレのステンレス製手洗いは、メチャクチャカッコ良かったです。

江之浦測候所の遊び心がニクイ

駐車場の入口さえ、石に「P」が彫られています。ただの看板ではないのです。

案内板ならぬ、案内石。

膝下くらいの高さで、さりげなく、しかし存在感があります。

インターホンには「御用」の文字。これは、今後流行るかもしれないですね。

私も自宅のインターホンに「御用」の表札を掲げてみようかしら。名前を「御用」さんだと間違えられる恐れがありますが・・・。

日本庭園で見られる、「ここから先は入っちゃダメですよ」という意味の止め石が要所要所に配置されています。

杉本氏の名声は、もしかしたら日本国外のほうが広まっているのかも、と思わせるくらい外国の方が多く来場されていました。

実際、下手な日本庭園を見るより、ずっと日本古来の歴史や自然観を感じられる空間になっていると思います。

あまり気にしてはいけない、「止め石の待機所」。

群れをなす生き物のように見えてくるから不思議です。

敷地の外れにあった、「巨大な止め石」。
かと思いきや、クレーンかなんかで移動するための玉掛けロープでした。

まだ工事中、造成中の場所もあり、最終的な完成を見た暁にはまた訪れたいこと、この上なし、と言った感じです。

江之浦測候所の入り口の坂を登って最初に見えてくる、この「明月門」。

室町時代に建てられたこの門は、数奇な運命を経てこの江之浦測候所に移築されたわけですが、幕にある「まるとさんかく」の紋が鬼瓦などの瓦にも見られます。

これは、確かめたわけではないのですが、小田原文化財団を英語で表記したときの「Odawara Art Foundation」のOとAを組み合わせたものであると思われます。

スタッフの皆さんは、背中にこの紋が入ったイカしたハッピを着ています。

先程、こだわりが云々と書きましたが、これこそがまさにこだわり中のこだわりではないでしょうか。

よーく目を凝らすと、右側に立つスタッフの方の背中に、小田原文化財団の紋が見て取れます。

スタッフの方に、ハッピなどのグッズ販売は無いのか問い合わせてみたところ、営利目的の財団ではないため物品の販売はできないのだそうです。

いずれにせよ、こういった随所に見られる遊び心、ウィットに富んだ工夫や設えにはたまらなく感情をゆさぶられます。

安全上の配慮ということで中学生未満は入場できませんが、施設や庭園の意味合いを理解できるという意味でも、ある程度人生を経験してから訪れるべき場所なのかな、とも思いました。

江之浦測候所でいちばん心揺さぶられる、「冬至光遥拝隧道」

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冬至の日の日の出が拝める、「冬至光遥拝隧道」。
この角度から見ても、夏至の日の日の出とこれだけ角度が違うということがよくわかります。

夏至光遥拝100メートルギャラリーの下を貫通する、分厚い鉄板の隧道を歩いていく時の高揚感は、忘れがたいものがあります。

上から順を追って、歩いて通ったような感覚になれましたでしょうか。

途中には光井戸があります。雨が降っていると、雨滴の一粒一粒が目視できる仕組みとのことで、雨の日にも来てみたいと思わせます。

ぜひとも実際に現地を訪れて、体感していただきたいですね。

ちなみに入口側の背後には巨大な石が立てられていて、冬至の日には太陽光がこの隧道を突き抜けてその石を照らすというのですから、これもいつか見てみたいものです。

暗いところと明るいところを否が応でも認識させられる、人間の原初の感覚を蘇らせてくれる「アート」です。

まずは騙されたと思って、江之浦測候所に行ってみて

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最初は入場料3000円の価値がなかったらどうしよう、などと考えていましたが、まったくの杞憂でした。

素直に杉本博司氏を信じて、訪れて、体感すれば、3000円がどうとかそんな小さなことはどうでもよくなります。

アートを鑑賞するとか、意識高い系がどうとか、そういうことはもうこの際どうでも良いのです。

小田原市の江之浦という場所から眺める海と、杉本博司氏が工夫を凝らしてくださった建築と庭園を味わえば良いのです。

何度でも言いますが、とにかく行ってみましょう。まずはそこからです。

ちなみに、伊豆熱海方面から車で江之浦測候所に行く場合、サイトの道案内どおりに根府川駅の方まで行ってから戻るようなアクセスを「強く」オススメします。

というのも、伊豆熱海方面から国道135号線経由での江之浦測候所までの道程をグーグルマップで設定すると、寿命が縮むほど狭くて急勾配の山道を通らされます。対向車が来たらすれ違いできません。

電車などの公共交通機関で行けばこんなひどい目には会いません。小田原市街方面から来る際も、何も問題ありません。

もし伊豆熱海方面から車で行こうという方は、ぜひお気をつけ下さい。

そして、江之浦測候所で杉本博司氏の設計意図を体感してみて下さい。

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空間感/杉本博司 スター建築家の採点表 (CASA BOOKS)
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