採光無窓居室(法35条の3、令111条1項)の緩和がやっと登場。

令和2年4月1日施行の改正法で、木造系建築物にとって鬼門ともいえる「法35条の3の採光無窓居室」に一筋の光が差し込んでくれました。

しかしながら、適用するためには少々条件がありますので、ここは慌てず条文と告示を紐解いてみましょう。

(とはいっても木造の耐火構造仕様については、すでに告示で規定されてはいますが…)

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これまでの法35条の3に対するまとめ記事

法35条の3(採光無窓居室)の適用がいかに厳しかったか、過去記事もいくつかありますのでまずはまとめておきます。

無窓居室の判定、検討のうち、採光無窓に関する重要チェックポイント

間違えてはいけない 無窓居室の解釈の補足

建築基準法第35条の3の意味や取扱、対応策について改めて調べました

とにもかくにも、「木造で無窓居室は基本NG」というのがこれまでの建築基準法のスタンスでした。

それがやっとのことで緩和されることになったということです。

令和2年4月施行の無窓居室の合理化について

それでは本題の緩和規定についてみていきましょう。

まずは法35条の3

(無窓の居室等の主要構造部)
第35条の3 
政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない。ただし、別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供するものについては、この限りでない。

続いて令111条

(窓その他の開口部を有しない居室等)
第111 条
法第35条の3(法第87 条第3 項において準用する場合を含む。)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号のいずれかに該当する窓その他の開口部を有しない居室(避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室その他の居室であつて、当該居室の床面積、当該居室の各部分から屋外への出口の一に至る歩行距離並びに警報設備の設置の状況及び構造に関し避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものを除く。)とする。
以下略

そして令111条のただし書きについての告示249号(ただし・・・という記載にはなっていませんが…)

国土交通省告示第249号
主要構造部を耐火構造等とすることを要しない避難上支障がない居室の基準を定める件
建築基準法施行令(以下「令」という。)第111条第1項に規定する避難上支障がない居室の基準は、次に掲げるものとする。

次のイからハまでのいずれかに該当すること。

床面積が30平方メートル以内の居室(寝室、宿直室その他の人の就寝の用に供するものを除く。以下同じ。)であること。

避難階の居室で、当該居室の各部分から当該階における屋外への出口の一に至る歩行距離が30メートル以下のものであること。

避難階の直上階又は直下階の居室で、当該居室の各部分から避難階における屋外への出口又は令第123条第2項に規定する屋外に設ける避難階段に通ずる出入口の一に至る歩行距離が20メートル以下のものであること。


令第110条の5に規定する基準に従って警報設備(自動火災報知設備に限る。)を設けた建築物の居室であること。

法と施行令は見ての通りですので、緩和の条件はすべて告示に書いてあります。

条件は、一号と二号はどちらも満たす必要があり、一号についてはイロハのいずれかを満たせば良いこととなります。

一号の条件は


寝室、宿直室その他の人の就寝の用に供するものを除く、床面積が30㎡以内の居室


避難階に存在する居室で、その居室の一番奥から建築物の屋外への出口まで30m以内で到達できるもの(上記イに「以下同じ」とあるので就寝室は不可)


避難階の直上または直下の階に存在する居室で、その居室の一番奥から建築物の屋外への出口まで、または屋外避難階段に通じる出入り口まで20m以内で到達できるもの(上記イに「以下同じ」とあるので就寝室は不可)

条件をよく見るとハはかなり厳しめなので、イまたはロでなんとかしたいところですが、就寝用途の場合はどちらにせよ適用できません。

その居室が就寝用途の場合は、無窓にするなら基本的な構造仕様を見直す必要があります。

そして、もっと厳しい条件を突き付けてくる二号の条件は以下のようになっています。

二号
令110条の5に規定する「自動火災報知設備」を設置すること

せっかくなので令110条の5も確認してみます。
皮肉なことに、令111条のひとつ前の条文となっています。

(警報設備の技術的基準)
第110条の5 
法第27条第1項第1号の政令で定める技術的基準は、当該建築物のいずれの室(火災の発生のおそれの少ないものとして国土交通大臣が定める室を除く。)で火災が発生した場合においても、有効かつ速やかに、当該火災の発生を感知し、当該建築物の各階に報知することができるよう、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる警報設備が、国土交通大臣が定めるところにより適当な位置に設けられていることとする。

令110条の5を読むとよくわかりますが、無窓居室となる部屋にだけ自動火災報知設備を設置してもダメなんです。そんな設置の仕方をする設計が存在するとも思えませんが、とにかく、住宅用火災警報器のようにその部屋でだけ音が鳴るだけというようなショボい設備ではダメなのです。

つまり、ある程度公共性の高い建築物であったり利用者や在館者が多い用途の建築物であれば対応可能なものの、戸建て住宅や小規模の店舗などでは結局のところ適用できない緩和である、と言わざるを得ないのが実際のところです。
(もちろん、予算が潤沢であれば話は別です。なお、寝室利用の居室はそもそも適用できません)

自動火災報知設備の設置ができない場合はこの告示を適用できないことになりますから、冒頭でも述べたように木造耐火を検討するか、無窓状態を解消するか、のいずれかを検討することになるというわけです。

ただ、ここで要求される自動火災報知設備は令和元年6月21日 国土交通省告示第198号に記載があるように、「特定小規模施設用自動火災報知設備」で構いません。

建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第110条の5の規定に基づき、警報設備の構造方法及び設置方法を定める件を次のように定める。
令和元年6月21日 国土交通省告示第198号 
警報設備の構造方法及び設置方法を定める件

第1 

第2 令第110条の5に規定する警報設備は、次の各号に掲げる警報設備の種類の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める規定に適合するように設けるものとする。
一 
自動火災報知設備 次に掲げる規定
イ 消防法施行令第21条第2項第三号の規定
ロ 消防法施行規則第23条第4項第一号(ヘを除く。)以下略

二 
特定小規模施設用自動火災報知設備 次に掲げる規定
イ 特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令第3条第2項第二号の規定
ロ 特定小規模施設用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準第二第一号(消防法施行規則第23条第4項第一号ヘに係る部分及び構造方法に係る部分を除く。)並びに第二号、第四号、第五号及び第七号から第九号まで(いずれも構造方法に係る部分を除く。)の規定

参考までに能美防災やパナソニックのサイトを貼っておきます。
能美防災 特定小規模施設用自動火災報知設備

パナソニック 特定小規模施設用自動火災報知設備 : 連動型 ワイヤレス感知器

住宅用火災警報器でも、無線連動で設置個所のすべてから警報音が鳴るものがありますが、ほぼそれと同等の機能ですのでコストも心配するほどではありません。オプションで消防署等に通報できたりします。

注意
読者様からの情報で、用途が「物販店以外の店舗」の建築物に特定小規模施設用自動火災報知設備を採用して法35条の3を緩和しようとしたところ、行政からNGがかかったとのことです。
(建築地は「横浜市」。確認審査機関および消防との事前協議では問題無しとして進めていたそうです。NGの理由の詳細は分かり次第追記予定です。)

このことから、この緩和がまだ施行されて日が浅いこと、また特定小規模施設用自動火災報知設備を設置するにはまさに「特定小規模施設」に該当する用途なのかどうか、といった点がネックになる可能性があると思われます。

緩和の適用をご検討の方は、念の為特定行政庁にも事前に相談していただくのがベストであるということを、お伝えしたいと思います。

2020/4/17追記
T様のご指摘により、緩和告示の適用条件の説明を修正しました。
ご指摘ありがとうございます。
皆様のご協力によりサイトの質が保たれています。
2020/6/14
特定小規模施設用自動火災報知設備について追記しました。それほどハードルが高くない設備であるため、記事を適宜修正しました。
2021/10/08
特定小規模施設用自動火災報知設備を採用するにあたり、申請先が行政でない場合は確認審査機関だけでなく所轄の特定行政庁にも確認していただくのが望ましい件、追記しました。T様、ありがとうございます。

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