読者様から以下のようなお問い合わせをいただきました。
(内容が変わらない程度に若干の修正を加えています。I様、ありがとうございます。)
ロ準耐の2の技術的基準(令109条の3第二号ロ)において、屋根にあっては、法22条第1項に規定する構造とありますが前文の「主要構造部が準不燃材料で造られ、…」が屋根にも係るのでしょうか。
言い換えれば、ロ準耐の2の屋根は「準不燃材料」かつ「法22条第1項に規定する構造」とする必要があるのでしょうか。
DW認定品である材料は、材料そのものが準不燃材に該当しないため、使用できないのでしょうか。計画建物の用途は、DW認定の条件である「不燃性の物品を保管する倉庫等」に該当するのですが、ある行政庁では、使用不可との判断をされてしまいました。
というものです。
「いつも折半屋根だから特に気にしたこともない」という方も、ちょっと考えてみると発見があるかもしれません。
準耐火建築物ロ-2で要求される屋根の構造・仕様
準耐火建築物ロ-2で要求される屋根の構造・仕様について、条文を辿ってみると非常に遠回りをさせられることに驚きます。
条文では「屋根にあっては、法22条第1項に規定する構造としたもの」となっていますが、内容を確かめるべく辿るそのルートは、
法第22条→施行令第109条の8 or 告示1361号→法第62条→施行令第136条の2の2→告示1365号
と、非常にまどろっこしいことになってます。
ここで、まずはご相談の「前文の『主要構造部が準不燃材料で造られ、…』が屋根にも係るのか?」については、条件イロハに分かれる前に完結していると読むのが通常かと思います。(この時点では)
主文中にある「その他の主要構造部が準不燃材で造られ」に屋根が含まれるとしたら、わざわざロで屋根を登場させる意味がありません。
したがって、この時点では屋根が準不燃材料に制限される理由はないと考えられます。
が、ご相談いただいた読者様が問い合わせした特定行政庁では、主文の「準不燃材料で造られ」が大前提であるととらえたのだと思います。
最初の相談文には記載していませんが、ご連絡いただいた内容に、特定行政庁の担当者が「国交省のQ&Aや新日本法規『建築関係規制・基準チェックの手引き』など」も参照したうえで準不燃材料と判断した、とあるので解釈が差しはさまる余地がある部分なのだと思われます。
また、屋根を「造る」か「葺く」かで条件が変わってくることについて、われらがバイブル、防火避難規定の解説にも記載があります。
防火避難規定の解説2016(第2版)のP25では、ロ-2の屋根について解説がありますが、ここでは屋根ふき材が不燃材料の場合、下地は不燃又は準不燃にせよ、とありここでもやはり「準不燃」という言葉が出てきます。
こうなってくると、準不燃材料の要求が屋根に対してもかかってくるのはおかしい、という私の読み方のほうが分が悪いような気もしなくなってきてしまい、やや劣勢のようで弱気になってきました。
補足として、防火避難規定の解説の上記部分では、屋根を造るか葺くかで、仕様の影響範囲が変わることが記載されています。
一方で、そもそもの告示(1365号)ではなんとかいてあるかを簡単にまとめると、
①不燃材料で造るか、又はふく
②準耐火構造にする
③耐火構造にする
となっており、準不燃どころか不燃材料で造るか、またはふかなくてはならないことがわかります。
これが22条区域を「屋根不燃区域」と呼んだりする理由と思われます。
つまり、認定品を利用しないのであれば、準不燃どころか不燃材を使うか、屋根だけ準耐火構造以上にするというおかしなことになってくるわけです。
不燃性の物品を保管する倉庫その他これに類するもの
ここまでだと、準耐火ロ-2で要求される屋根の構造は、最も厳しい条件(解釈)で考えれば、「準不燃材料以上であり、法22条(法62条)で要求される屋根の仕様」と読むことができ、DW認定品では難しいということで終わってしまいます。
(その認定品が準不燃材料としての認定を有していない場合)
しかし、ご相談の内容によれば、検討中の建物用途は令136条の2の2でいうところの「不燃性の物品を保管する倉庫その他これに類するもの」だというのです。
こうなると、話は変わってきます。
令136条の2の2を読むと本文の長いカッコ書きが不燃性物品倉庫等の条件を示しており、詳細が告示693号に記載されています。
告示を見てみると第1で用途、第2で第1の用途ごとに構造方法の条件を規定しています。
ご相談の用途は第1の一号から三号までに該当する用途であることはわかっていますから、それを踏まえて第2の第一号を読むと、
「屋根以外の主要構造部が準不燃材料で造られたものとすること」
とあり、令109条の3第二号の「その他の主要構造部が準不燃材料で造られ」から、「屋根」を除外していると読むことができるわけです。
つまり、まずここで屋根が準不燃材料でなくてもよくなります。
さらに、今回の計画では屋根はDW認定品を採用するとのことなので、告示1365号の「不燃材料でふく」にも縛られません。
なぜならDW認定の認定書には「法63条(現行の62条)および令136条の2の2第一号の規定に適合する」ものと記載されているからです。
認定品は、その他諸々の条件があるものの、それらを満たした設計とするならば、今回の計画建物においては屋根材が準不燃かどうかは不問になるものと考えられるわけです。
補足:告示仕様と認定仕様
上で書いたように、法22条の屋根の仕様は法62条の仕様、ということになるのですが認定仕様はそれぞれ、UR、DRと別々に認定コードが設定されており、混乱に拍車をかけています。
法文では結局法62条に帰結してしまうのに、どうしてこうなっているかは勉強不足のため定かなことが言えないため、調査が進んだら記事にするかもしれません。
告示の仕様どおりの材料で設計できない場合に認定品を使用する場面は多々ありますが、認定品は用途、規模、材料の組み合わせなど、認定を受けるにあたっての条件が細かく設定されているのはみなさまご存じのとおりです。
ご相談の件で、特定行政庁の担当者が認定品であることと告示の仕様を満たすことを混同していることがなければいいのですが、すべての認定条件を確かめる方法はメーカーに聞くしかなく、難しい部分もあります。
しかも、建材メーカーによっては
「使用にあたっては、各申請先に確認してください」
と逃げを打っている場合も多々あるため、慎重にならざるを得ない事情もあります。
kenkihou的結論
長くなりましたが、ご相談についての当サイトとしての結論をまとめると以下のようになります。
1.準耐火ロ-2における屋根の構造・仕様は、準不燃以上であることと判断されることが多い
2.令136条の2の2による「不燃性物品倉庫等」用途においては、屋根の準不燃材料についての制限が告示において緩和される
3.上記2の場合においては、DW認定品を使用することが可能となり屋根材の選択肢が広がる
特に告示693号(不燃性物品倉庫等)は、最終改正が令和元年なので木造推進による緩和が行われたものと思われます。
以上のように結論しましたが、諸先輩方でこの問題に詳しい方がいらっしゃいましたら、ご意見いただければと思います。
※追記※
記事作成後、質問者様が再度告示693号をもって屋根の仕様が緩和されると判断できないか、申請先に問い合わせたようです。
しかし、結果は「不可」。
理由は、当該告示も根本は法22条に基づくものだから、だそうです。
ただ、そうであればこの告示の意味が無いな、とも思いました。
具体的なケースがあれば私も今後、行政や確認審査機関の見解を聞いてみたいと思います。
参考にしたサイト、参考になりそうなサイト:
建築基準法に基づく構造方法等の認定に係る帳簿等
施工と管理2015年2月(pdf 6ページ目 DR認定について)
飛び火認定番号とは何でしょうか?
認定番号の付番方法(pdf 国交省)