【令和元年改正】政令12月公布分(令和2年4月1日施行分)のまとめ

令和元年度改正の未施行分が交付され、施行日が決まりました。

こちらの記事「平成30年改正法の全面施行にあたっての注意点など 」で、まだ未施行の分がありますよとお知らせしましたが、未施行分の施行日が確定しました。

「建築基準法施行令の一部を改正する政令」を閣議決定

上記リリースによりますと、スケジュールはとおりです。
閣議決定   令和元年12月 6日(金)
公  布   令和元年12月11日(水)
施  行   令和2年 4月 1日(水)

内容はリンク先の概要を参照してもわかりますが、例によって縦書きで読みにくいため多少の補足なども加えながら列記したいと思います。

意外と重要なことも書いてあったりするので、しっかりと目を通すことをおすすめします。
ただし、現時点(令和元年12月)では公布されたものの告示が未制定な規定が多くありますので、併せて確認しておいてください。

令和2年版 建築関係法令集 法令編S
総合資格学院
総合資格 (2019-11-06)
売り上げランキング: 6,885
スポンサーリンク

令和元年度改正 令和2年施行 防火・避難関係規定について

法35条の3(令第111条第1項)の無窓居室の緩和

(窓その他の開口部を有しない居室等)
第111 条
法第35 条の3(法第87 条第3 項において準用する場合を含む。)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号のいずれかに該当する窓その他の開口部を有しない居室(避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室その他の居室であつて、当該居室の床面積、当該居室の各部分から屋外への出口の一に至る歩行距離並びに警報設備の設置の状況及び構造に関し避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものを除く。)とする。

木造の建築物をこれでもかと苦しめてきた規定もついに緩和対応がなされます。

ただし、肝心の「国土交通大臣が定める基準」、すなわち告示が未制定のため、具体的な対応策が不明です。

検討案はいくつか示されているようですが、パブコメ→告示制定の流れを待つしかない状況です。

アトリウム等によるみなし面積区画(令第112条第3項)

施行令 第112 条
1,2項省略

3
主要構造部を耐火構造とした建築物の2 以上の部分が当該建築物の吹抜きとなつている部分その他の一定の規模以上の空間が確保されている部分(以下この項において「空間部分」という。)に接する場合において、当該2以上の部分の構造が通常の火災時において相互に火熱による防火上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、当該2以上の部分と当該空間部分とが特定防火設備で区画されているものとみなして、第1項の規定を適用する。

令112条の第2項と第3項の間にあらたな条文が割り込んできました。
おかげで、ついこの間ズレたばかりの条文がまたズレました。
(詳しくはこちらの記事を参照 【令和元年改正】防火区画:令112条の要点まとめ
その結果、令112条は第21項まである大所帯となりました。

なお、「みなし面積区画」とは私が勝手に考えた呼び方ですので、ご注意ください。

この新第3項では以下の条件を満たすと、その部分は特定防火設備であるとみなし第1項が適用される、すなわち区画が形成されているものとみなされるというものです。

・主要構造部を耐火構造とした建築物
・吹抜きとなつている部分その他の一定の規模以上の空間が確保されている部分(以下この項において「空間部分」という。)に接する場合
・相互に火熱による防火上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合

こちらも肝心の「国土交通大臣が定めた構造方法」すなわち告示が未制定のため、具体的な対応策が不明です。

検討案はいくつか示されているようですが、パブコメ→告示制定の流れを待つしかない状況です。

異種用途区画の緩和(令第112条第17項)

令112条
1から17省略
18
建築物の一部が法第27条第1項各号、第2項各号又は第3 項各号のいずれかに該当する場合においては、その部分とその他の部分とを1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした床若しくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従い、警報設備を設けることその他これに準ずる措置が講じられている場合においては、この限りでない。

ついこの間第12項から第17項に引っ越ししたばかりの異種用途区画の規定は、上の「みなし面積区画」の影響もあり早速第18項になりました。

そしてまたしても「国土交通大臣が定める基準」すなわち告示が未制定のため、具体的な対応策が不明です。

これまでの説明会では、物販店舗、飲食店、ホテル、児童福祉施設、事務所といった用途の組合せ時において警報設備があれば区画不要との案が紹介されていますが、あくまでも案の状態です。

小規模建築物の2直の階段の緩和(令第121条第4項)

第121 条
1から3項 省略
4
第1 項(第四号及び第五号(第2項の規定が適用される場合にあつては、第4号)に係る部分に限る。)の規定は、階数が3以下で延べ面積が200 ㎡未満の建築物の避難階以外の階(以下この項において「特定階」という。)(階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)と当該階段の部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。)とが間仕切壁若しくは次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める防火設備で第112条第19項第二号に規定する構造であるもので区画されている建築物又は同条第15項の国土交通大臣が定める建築物の特定階に限る。)については、適用しない。


特定階を第1 項第四号に規定する用途(児童福祉施設等については入所する者の寝室があるものに限る。)に供する場合法第2条第9号の二ロに規定する防火設備(当該特定階がある建築物の居室、倉庫その他これらに類する部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた場合にあつては、10分間防火設備)

特定階を児童福祉施設等(入所する者の寝室があるものを除く。)の用途又は第1項第五号に規定する用途に供する場合戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。)

施行令第121条に新たに第4項が追加されました。
いわゆる2直の階段設置に関する規定ですが、第4項において除外規定が設けられました。
「特定階」という新ワードも登場しています。

まず、私が勝手に名付けた、「ほぼ竪穴区画」や「プチ竪穴区画」が必要な用途規模の建築物については、2直の階段が不要となります。
(黄色のマーカーが塗ってある範囲。その範囲について、第一号、第二号の条件分けが発生します。)
こちらは10分防火設備についてはパブコメ検討中(令和元年12月時点)ですが、基本的には仕様は定まっています。

加えて、令112条第15項(これもついこの間までは第14項だった規定。黄色のアンダーラインの範囲)に適合する「特定階」も2直の階段が不要となりますが、上記第15項も、またもや告示未制定のため現時点では詳細不明です。

共同住宅におけるメゾネット住戸の階判断基準の追加(令第123条の2)

第123条の2
主要構造部を準耐火構造とした共同住宅の住戸でその階数が2又は3であり、かつ、出入口が一の階のみにあるものの当該出入口のある階以外の階は、その居室の各部分から避難階又は地上に通ずる直通階段の一に至る歩行距離が40m以下である場合においては、第119条、第121条第1項第五号及び第六号イ(これらの規定を同条第2項の規定により読み替える場合を含む。)、第122条第1項並びに前条第3 項第十二号の規定の適用については、当該出入口のある階にあるものとみなす。

メゾネット住戸の階判断の規定に、新たに新たに令121条第1項第六号イも追加されました。

中層の共同住宅の計画が多い方は、よく確認しておく必要がありそうです。

アトリウム等による排煙上別棟とみなす基準(令第126条の2第2項、令第137条の14)

第126条の2
1項省略
2
次に掲げる建築物の部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。

建築物が開口部のない準耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第9号の二ロに規定する防火設備でその構造が第112条第19項第一号イ及びロ並びに第二号ロに掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの若しくは国土交通大臣の認定を受けたもので区画されている場合における当該区画された部分

建築物の2以上の部分の構造が通常の火災時において相互に煙又はガスによる避難上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものである場合における当該部分

令126条の2は排煙設備設置にかかる規定ですが、第2項には排煙上別棟と判断する基準が規定されていました。
その条文が一号、二号に別れ二号として新たな規定が登場しました。

しかし、現時点では「国土交通大臣が定めた構造方法」すなわち告示が未制定のため、詳細は不明です。

なおこの改正により、令第137条の14の記載も改められています。(条文は割愛)

敷地内通路の幅員規定の緩和(令第128条)

第128条
敷地内には、第123条第2項の屋外に設ける避難階段及び第125条第1項の出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が1.5m(階数が3 以下で延べ面積が200㎡未満の建築物の敷地内にあつては、90㎝)以上の通路を設けなければならない。

これは6月施行で各種緩和が行われた規模の建築物に対する、緩和の追加と捉えられます。

既存建築物の用途変更をしやすくするための施策と考えられ、これまでは一律1.5m幅の避難経路幅が必要だったものを、90cmまで縮小(緩和)できるようになります。

内装制限の緩和措置の追加(令第128条の5第7項)

第128条の5
1から6項省略
7
前各項の規定は、火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分として、床面積、天井の高さ並びに消火設備及び排煙設備の設置の状況及び構造を考慮して国土交通大臣が定めるものについては、適用しない。

これまでは、内装制限の緩和規定の条文にはスプリンクラー等の記載が記載がありましたが、具体的な仕様は告示に移ることとなります。

さらに、本文内にあるように床面積や天井の高さといった要件が追加されており、緩和と取れます。

なお、告示は今のところ未制定となっています。

避難安全検証法の計算方法の追加や見直し等(令第129条・令第129条の2)

この改正については、条文が非常に長いため割愛しますがこの記事の最初にある国交省のリンク先にある条文の「新旧」対照から参照できます。

見直し内容はほぼ事前情報のとおりで以下のようなものがあります。

・階避難、全館避難に加えて「区画避難安全検証法」の追加
・計算方法に避難時間による判定に加えて「煙高さによる判定」の追加

なお、具体的な計算方法などは告示が未制定のため、現時点(令和元年12月)では詳細はわかりません。

その他現時点での補足情報

今現在、令和元年度改正の解説本が何冊か出ていますが、大きく2段階に分けて施行されたため改正内容の半分しか解説がありません。
したがって、まだ買わなくてもいいのでは、と私は考えています。

令和元年6月施行 政令・省令対応 Q&A 改正建築基準法のポイント
新日本法規出版 (2019-09-24)
売り上げランキング: 54,167

お値段も結構しますし、改正のうち半分程度しか解説されていないわけです。

手前みそながら、私のサイトを見れば、だいたい分かると思いますのでお金に余裕のある人以外は、完璧版の発行、または各種解説本が法改正に対応してから買っても遅くはないと思います。

このサイトの関連記事のリンクは最後にまとめて張っておきます。

令和元年度改正 令和2年4月施行分 まとめ

令和元年6月施行で先送りになっていた改正内容も、一応約束通り施行されるということは明らかになりました。
しかし、大半の規定は告示が未制定のため具体的な対応が取れない状況です。

先行してパブコメが行われいている規定も含め、年明けから続々とパブコメが実施され、具体的な対応策がわかってくるでしょう。
とりあえずは、こんな改正があったなと再認識する程度に留め、年明けから新たに情報収集に励むこととしましょう。

繰り返しますが、解説本はまだ買わなくて良いんじゃないでしょうかね。

私のサイトがお役に立つはずです!!

(このサイトの解説記事のリンクはこちら)
平成30年改正法の全面施行にあたっての注意点など

令和元年施行の法改正(平成30年改正)の法21条、法27条、法61条をキーワードで理解する

【令和元年改正】防火区画:令112条の要点まとめ

改訂版 図説 やさしい建築法規
今村 仁美 田中 美都
学芸出版社 (2019-11-24)
売り上げランキング: 36,988
スポンサーリンク
関連コンテンツ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする