「基準総則・集団規定の適用事例」が2022年版にパワーアップしてます

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設計時の用途の適法性や確認申請の法規チェックなどで役に立つ、必携図書である「基準総則・集団規定の適用事例 」が2022年版としてパワーアップしてます。

どういった部分が変わっているか、確認していきます。

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「基準総則・集団規定の適用事例」2022年版の変更点

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上の画像は2022年版の目次の一部ですが、今回の改訂ではホテル用途の定義の拡大、法令集から読み取ることが難しい用途や判断に悩むような用途の定義などが主な改訂、追加要素となっています。

数としては少なくないのですべてをご紹介するのが難しいですが、ケースとして多くなりそうなものについて抜粋して取り上げてみます。

「ホテル、旅館」の定義について

(法第2条第二号、法別表第1(い)欄(2)項)
【内容】
・ホテル、旅館とは、旅館業法の旅館・ホテル営業の施設をいう。旅館業法の簡易宿所営業の施設は旅館として扱う。ただし、下記に該当す
るものについては、ホテル、旅館と取り扱わない場合がある。
 ◆法別表第1(2)項のホテル、旅館と取り扱わなくてもよい例
  ○宿泊施設とは別敷地に単独で設置するホテル・旅館のフロント代替設備の部分
  ○宿泊施設とは別敷地に単独で設置する簡易宿所の共同玄関帳場の部分

【解説】
・ホテル・旅館のフロント代替設備の部分や簡易宿所の共同玄関帳場の部分を、宿泊施設とは別敷地に単独で設置する場合は、宿泊者など不特定多数の出入りがあっても、就寝を伴う宿泊部分がなく、火災等が発生した場合でも災害覚知に問題がないこと、宿泊者への鍵の受渡しや本人確認等のみで滞在時間も短いこと、さらに、窓口対応業務を行うサービス店舗や事務所等に利用形態が類似することから、法別表第1(2)項のホテル、旅館がもつ特性とは異なると判断し、ホテル、旅館と取り扱わなくてもよい。

・なお、法別表第1と第2では規制目的が異なるため、建築基準法第48条に基づく判断(法別表第2)とは用途判断が異なる場合があることに留意されたい。

コロナ禍以降のインバウンド需要への期待や、大阪万博での外国人観光客増加への対応などにより、宿泊施設の運営形態の多様化がますます進むことが考えられますので、確認申請においても様々なケースを想定して解釈をある程度まとめておこうという狙いかと思います。

内容は文面通りですが、注意点として【解説】の2項目目にもあるように、法別表1の分類と法48条の用途規制とは完全にリンク(一体化)しているわけではないので、それぞれの法文ごとに用途を判断していく必要があります。

「軽微な変更」について

(法第6条第1項、規則第3条の2、(平28国交告第1438号))
【内容】
・法第6条第1項の「軽微な変更」とは、計画の変更が規則第3条の2第1号~第16号のいずれかに該当するものであって、変更後も建築物の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなものをいう。

・「軽微な変更」の対象となるかどうかについては、一体性のある「一の変更」ごとに判断する。

・一体性のある「一の変更」において、計画の変更が規則第3条の2第1号~第16号のいずれかに該当するが、当該変更及び当該変更に伴い付随的に生じる変更が規則第3条の2の他の号に該当しない場合であっても、変更後の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなものであれば、「軽微な変更」の対象となる。

・一体性のない計画の変更については、各々の変更に分けて「軽微な変更」の対象となるかどうかを判断する。

・なお、「建築基準関係規定に適合することが明らかなもの」とは、「高度な計算や検討」によらず建築基準関係規定に適合することに関し容易に判断できるものをいう。したがって、高度な計算や検討を要する変更については計画変更の手続が必要となる。

 ◆「高度な計算や検討」の例
【解説】
・計画の変更が「軽微な変更」に該当するかどうかについて、計画の変更に基づく工事の着手前に申請する審査機関と協議を行うことが望ま
しい。
・特に、「建築基準関係規定に適合することが明らかなもの」であっても、安全上、防火上及び避難上の危険の度並びに衛生上及び市街地
の環境の保全上の有害の度が高くなるものが「軽微な変更」に該当するかどうかについては慎重に判断する必要がある。
・一体性のある「一の変更」の考え方は、平成22年3月発行の「建築確認手続き等の運用改善マニュアル「一般建築物用」」並びに「建築確認手続き等の運用改善マニュアル「小規模建築物用(木造住宅等)」」及び平成23年5月発行の「建築確認手続き等の運用改善(第二弾)及び規制改革等の要請への対応についての解説」(以下「運用改善マニュアル」という。)に示されている。
・付随的に生じる変更と判断できない場合やそもそも各々の変更に一体性のない場合については、当然一体性のある「一の変更」に該当しない。
・規則第3条の2第16号に該当する軽微な変更は、平成28年国交告示第1438号より建築基準法令の規定に係る変更を伴わないため、一体性のある「一の変更」の適用の際には注意する必要がある。

◆軽微な変更の事例
・以下に、一体性のある「一の変更」ごとに、規則第3条の2第1項各号のいずれかに該当し、かつ、「建築基準関係規定に適合することが明らかなもの」として軽微な変更の対象として考えられる変更の事例について示す。
・これらの事例では付随的に生じる変更の主な例を記載しているため、付随的に生じる変更の全てが例示されていない可能性があるが、それらの規定についても当然に建築基準関係規定に明らかに適合する必要がある。
・なお、その他の事例が運用改善マニュアルに掲載されているため、参考にされたい。
①構造耐力上主要な部分以外の部分(庇)の位置の変更
※庇の大きさの変更により、当該庇を構造耐力上主要な部分として取り扱うことになる場合には、付随的に生じる変更に該当せず軽微な変更の対象とはならないので注意が必要。
②構造耐力上主要な部分以外の部分(パラペット)の材料の変更
※材料の変更について、不燃材料を準不燃材料にする変更等を行う場合は規則第3条の2第10号に該当しないこととなり軽微な変更の対象とならないため、注意が必要。
③主要構造部又は防火上主要な間仕切壁以外の間仕切壁の位置の変更

軽微変更についても基準総則で取り上げられるようになりました。
単純に規則に記載されている内容から判断できるものならいいのですが、変更内容が複雑な場合簡単には判断できないものもあります。

審査機関によっては(またはその担当者によっては)、「一の変更」を柔軟に判断してくれて、一連の変更の一部を取り上げると計画変更になってしまうようなものでも、軽微変更として取り扱ってくれる場合もあります。

この辺りは、審査担当者との人間関係もある程度関係しますので日頃からあまり敵対心をむき出しにしないほうがいいでしょう。

例えば、避難安全検証法を採用しているような物件で、最終出口の建具幅が広くなったり、内部建具位置が多少ずれて歩行距離が短くなるような場合、再計算をしても明らかに適合になるような有利な変更なので柔軟な対応をしてくれる審査担当なら、軽微変更で対応してくれることもあると思います。
一方、ガチガチのマニュアル対応だと、高度な計算を再計算するということで計画変更にされてしまうでしょう。

話の持って行き方で、軽微となるか計画変更となるかが変わってくることもあり得ます。業務負荷や費用にかなり差があるので、軽微変更になるよう上手に進めるのも設計者のスキルと言ってもいいでしょう。

「ネイルサロン」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・ネイルサロンは、「理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらに類するサービス業を営む店舗」に該当する。
・なお、名称によって形式的に判断するのではなく、当該サロンや駐車場の規模、広範囲からの利用や夜間の利用などによって近隣の良好な住居の環境を害するおそれがないかどうかなどに着目し、実態に応じて判断する。

【解説】
・ネイルサロンとは、手や足の爪の手入れ、爪の造形、爪の修理、補強、爪の装飾など爪に係る施術を行う施設をいい、首から下の容姿を美しくする施術サービスを提供するものである。
・当該サービスが美容師法第2条第1項に規定する美容の定義に該当するか否かについては、「美容師法の疑義について」昭和42年2月16日(環衛第7030号)において「例示の方法は通常首から上の容姿を美しくするために用いられるものであり、それが多少拡張される場合にもマニキュア、ペディキュア程度にとどまるものと解すべきである」とあり、美容師法の美容の定義に該当すると解される。
・さらに、厚生労働省がトラブル防止のために平成22年9月15日(健発0915第4号)に発出した「ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針」において施設や作業場、設備などの基準が示されている施設である。
・事例によると、サロンの規模は比較的小規模のものが多く、利用者も特定少数の場合が多いことから、近隣の良好な住居への影響は美容院と同程度と考えられる。
・このため、近隣の良好な住居の環境を害するおそれはないとして、「理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらに類するサービス業を営む店舗」に該当するとした。
・なお書については、比較的規模が大きく、広範囲から利用者が来所するネイルサロンも想定されることから、施設の規模や営業時間などの実態を踏まえ、個別に判断することとした。
【参考】
・「美容師法の疑義について」昭和42年2月16日(環衛第7030号)

「こども食堂」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・こども食堂は、地域のこどもなどを対象に食事の提供やこどもの学習支援、相談支援、地域住民との交流などを行う場合は、公民館や集会所に類似する施設として、「学校、図書館その他これらに類するもの」に該当する。
・公民館や地域の集会所、児童館などを一時的に使用する場合は、使用期間や頻度などに基づき主たる用途との主・従の関係や補完関係など、建築物の機能上の関係性に着目し、個別に判断する。
・なお、こども食堂は対象者や利用形態が多様なことから、名称などによって形式的に判断するのではなく、広範囲からの不特定多数の者の利用や、施設利用時の騒音や夜間・早朝の利用の有無などによって、近隣の良好な住居の環境を害するおそれがないか、実態に応じて判断する。

【解説】
・こども食堂とは、児童福祉法など他法令の位置づけはないが、経済的な理由や家庭の事情により十分な食事ができない、あるいは一人で食事をするこどもの支援を目的として、地域の町内会やNPO法人、社会福祉団体などが、一人親家庭のこどもや貧困家庭などを対象に、栄養バランスの取れた食事を無料又は材料費(実費)程度の利用料で提供する施設である。
・施設の開設や運営に係る経費(会場使用料や賃料、人件費、備品購入費など)を補助する自治体も増えつつあるが、提供する食事の食材は寄付、調理は地域のボランティアなどが支援する場合が少なくない。
・事例によると、毎日運営するこども食堂専用の施設は少なく、多くは月1~3回程度の頻度で地域の集会所や公民館、児童館などの公共的施設の厨房設備付きの部屋を使用するケースや、喫茶店や食堂の定休日などに既存の厨房設備や食事机を利用し開設するケースとなっている。
・運営時間は、平日の放課後(午後5時から8時30分頃まで)が多く、給食がない土・日の昼間や夏休みなどの長期休暇の昼間なども開設する場合もある。
・定員は20名~30名程度が多く、地域内でのこどもの居場所として、食事の提供以外に学習支援、相談支援、交流の場の提供を行うなど、運営形態が多様化していることから、高校生や高齢者など利用者も多様である。
・以上のように建築形態や利用形態が多様であるため、食事の提供を行うが、地域のこどもの学習支援や相談支援、地域住民との交流などを主とする場合は、公民館や集会所に類似する施設として、「学校、図書館その他これらに類するもの」に該当するとした。
・さらに、公民館や地域の集会所、児童館などを一時的に使用する場合は、使用期間や頻度などに基づき主たる用途との主・従の関係や補完関係など、建築物の機能上の関係性に着目し、個別に判断するとした。

こちらも最近注目の用途ですので、内容を知っておいて損はないでしょう。

「プリスクール」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・プリスクールで児童福祉法に規定される保育所(無認可施設を含む)の場合は、「老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類するもの」に該当する。
・認定こども園のうち、幼保連携型や幼稚園型の認定こども園の場合は、「保育所」と「学校」との複合建築物に該当し、保育所型や地方裁量型の認定こども園の場合は、「保育所」に該当する。
・学校教育法に規定される各種学校の場合は、「大学、高など専門学校、専修学校その他これらに類するもの」に該当する。
・保育所や各種学校には該当せず、幼児向けの英語教育を目的とする英語教室などの場合で、地区外からの人や車の集散や施設利用者による騒音の発生などにより近隣の良好な住居の環境を害するおそれがない場合は、「学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設」に該当する。
・なお、名称によって形式的に判断するのではなく、保育や教育などの機能や利用形態、規模など、さらには地区外から一時に多数の人または車の集散のおそれがないなど、実態に応じて判断する。

【解説】
①建築物の概要
・プリスクールとは、欧米では5歳以下の子どもが通う幼稚園や保育所を指すが、我が国では概ね3歳から就学前の子どもを対象に英語を基本とした環境で保育又は教育を行う施設の総称であり、インターナショナルスクール(幼稚部)やキンダーガーテンなどと呼ばれる施設もある。
・プリスクールは、「英語環境」、「少人数制」「外国人講師(海外の幼稚園教諭又は保育士資格者など)と英語を話せる日本人スタッフによる構成」が特徴となっている。
②用途判断
・事例によると、認可外保育施設として児童福祉法に基づく届出がある「無認可保育施設」だけではなく、届出がない施設もある。また、インターナショナルスクール(幼稚部)の場合も、「各種学校」として学校教育法に基づく認可を受けている場合だけでなく、認可を受けていないインターナショナルスクールもある。その他に単なる幼児向けの英語教室などの場合もあるなど、運営形態や建築形態が多様であることから、児童福祉法や学校教育法の位置づけなどによって、判断することとした。
・「学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設」に該当する場合は、騒音の発生などにより近隣の良好な住居の環境を害するおそれがない建築物に限るとした。
・なお、確認申請時点では、児童福祉法や学校教育法による認可・届出などの手続き中の場合もあることから、例えば認可外保育施設の届出や各種学校の認可などの手続き状況を含めて、事前に関連部局に確認するなど、総合的に判断する必要がある

「日本語学校(日本語教育機関)」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・日本語学校(日本語教育機関)は、学校教育法に規定される各種学校や専修学校の場合は、「大学、高等専門学校、専修学校その他これらに類するもの」に該当する。
・上記に該当せず、外国人を含む近隣住民を対象とし、地区外からの人や車の集散や施設利用者による騒音の発生などにより近隣の良好な住居の環境を害するおそれがない場合は、「学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設」に該当する。
・なお、名称によって形式的に判断するのではなく、当該建築物の規模や学生数、駐車場の有無や規模、さらには地区外から一時に多数の人または車の集散のおそれがないかどうかに着目し、実態に応じて判断する。

【解説】
・日本語学校とは、日本語の学習を主な目的として来日し、滞在する外国人を対象に日本語教育を行う教育機関である。外国人が日本語教育機関に通うために必要な在留資格「留学ビザ」を付与することができる機関として、法務省の告示(平成2年法務省告示第145号)に記載された教育機関を指す。
・一般的には法務省の告示認可を得るとともに、学校教育法に基づく「各種学校(同法第83条)」や「専修学校(第82条の2)」の都道府県の認可を得た日本語教育機関を指す。学校の設立は学校法人や準学校法人だけでなく、株式会社、NPO法人、一般社団、財団法人・宗教法人など法人格の縛りはなく、個人でも設立可能である。
・法務省の告示認可を得るためには、同省の告示基準に適合する必要があり、同基準には生徒数や生徒一人当たりの校舎や教室の面積基準などが定められている。
・なお、法務省の告示認可を得た(予定含む)日本語学校にあって、学校教育法の無認可校であっても、規模や利用形態が学校教育法に基づく学校と変わらないものは、「大学、高など専門学校、専修学校その他これらに類するもの」に該当すると考えられる。
・施設の規模や利用する学生数、駐車場の有無や規模などに着目し、騒音の発生などにより近隣の良好な住居の環境を害するおそれがない建築物の場合は、「学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設」に該当する。
・事例によると、確認申請時点では法務省の認可や学校教育法による認可・届出などの手続きの場合もあることから、例えば各種学校の認可などの手続き状況を含めて、事前に関連部局に確認するなどして、総合的に判断する必要がある。
【参考】
「日本語教育機関の告示基準」法務省出入国在留管理庁(平成28年7月22日策定)、
平成30年7月26日・令和元年8月1日・令和2年4月23日に一部改定

「病児保育事業の用に供する施設」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・病児保育事業の用に供する施設は、「老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類するもの」に該当する。
・保育所、診療所、病院、乳児院などの施設内に専用スペースを設置、又は同一敷地内に併設し、病児保育事業を実施する場合、認定こども園、小規模保育事業所、事業所内保育事業所内の医務室、余裕スペースなどで体調不良となった乳児や幼児などを一時的に預かる場合にあっては、主たる用途との主・従の関係や補完関係など、建築物の機能上の関係に着目し、個別に判断する。

【解説】
・病児保育事業とは、児童福祉法第6条の3第13項に規定され、保育所に通っている乳児・幼児や小学校に通っている児童(以下、「児童など」という。)が病気になった時に、仕事が休めない親に代わって一時的に病児の保育を行う事業である。
・病児保育事業の用に供する施設のうち、児童などが病気の「回復期に至らない場合」かつ当面の症状の急変が認められない場合(病児対応型)や、児童などが病気の「回復期」であり、かつ集団保育が困難な期間(病後児対応型)は、保育所、病院、診療所、児童養護施設、乳児院などの施設内に設置する専用スペース、又は病児保育事業のための専用施設で対応する。
・児童などが保育中に微熱を出すなど「体調不良」となった場合(体調不良児対応型)は、認定こども園や事業所内保育施設内の医務室、余
裕スペースで対応する。
・上記のとおり、病児保育事業の主な対象は保育を必要とする児童などであり、事業内容も児童福祉法に「保育を行う事業」と規定されているとおり保育所と変わらないことから、病児保育事業のための専用施設は「老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類するもの」に該当するとした。
・一方、病児保育事業の用に供する施設の形態は、保育所、診療所、病院、乳児院などの施設内に専用スペースを設置又は同一敷地内に併設し、病児保育事業を実施する場合、認定こども園、小規模保育事業所、事業所内保育事業所内の医務室、余裕スペースなどで体調不良となった児童などを一時的に預かる場合など、建築形態や利用形態が多様であるため、用途判断にあたっては、主たる用途との主・従の関係や補完関係など、建築物の機能上の関係に着目し、個別に判断することとした。
【参考】
・児童福祉法第6条の3第13項

「こども送迎ステーション(送迎保育ステーション)」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・こども送迎ステーション(送迎保育ステーション)は、「老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類するもの」に該当する。
・保育所や幼稚園などに併設する場合や学校、児童館などの公共施設の空き部屋を活用する場合、駅近接地の事務所や店舗などの建築物に複合する場合などは、主たる用途との主・従の関係や複合建築物内の単体区分用途に着目し、実態に応じて判断する。
・なお、こども送迎ステーションは機能・形態が多様であるため、名称などによって形式的に判断するのではなく、他の保育所などへの送迎までの間の一時預かり保育や事務・調理などの保育機能の有無、当該施設の規模や運営時間、送迎バスの乗降・駐車スペースの位置・形態や送迎バスの乗降頻度など、実態に応じて判断する。
【解説】
・こども送迎ステーション(送迎保育ステーション)とは、市町村(特別区含む)が駅近接地などの保護者にとって利便性が良い場所に整備されるもので、地域内の他の保育所などへの送迎バスの乗降・駐車スペース及び乗降前後に児童を一定時間預かる保育室からなる施設である。
・同施設は、厚生労働省の「広域的保育所など利用事業実施要綱」に基づき市町村(特別区含む)が事業主体となって整備・運営する施設であり、「1施設あたりの登録児童数は概ね20人以上とし、複数の保育所などが共同で利用する」ことなどを実施要件としている。なお、同要綱には「学校や児童館などの公共施設の空き部屋などを利用して事業を実施することも差し支えない」と規定されている。
・送迎バスへの乗降機能はあるものの、主な機能は「乗降の間の一時預かり保育」にあることから「老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類するもの」に該当するとした。
・ただし、保育所や幼稚園などに併設する場合や学校、児童館などの公共施設の空き部屋を活用する場合、駅近接地の事務所や店舗等との建築物に複合する場合など、建築形態が多様である。また、施設の登録児童数やバスの台数が多く、乗降頻度が高い場合などは、人や車の出入りなどにより近隣の良好な住居の環境を害するおそれがあることから、実態に応じて慎重に判断する必要があるとした。
【参考】
・広域的保育所など利用事業実施要綱(雇児発0413第9号 平成27年4月13日)

「高齢者向けふれあいサロン」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・高齢者向けふれあいサロンは、主として地域の高齢者を対象とし、心身の健康の増進やいきがい活動、介護予防や認知症予防などを主たる目的とする施設で、施設利用時の騒音などにより近隣の良好な住居の環境を害するおそれのない場合は、「老人福祉センター」や「老人憩いの家」の類似施設として、「老人福祉センター、児童厚生施設その他これらに類するもの」に該当する。
・ただし、対象者や利用形態が多様な施設であることから、名称などによって形式的に判断するのではなく、広範囲からの不特定多数の者の利用や、施設利用時の騒音や夜間・早朝の利用などによって、近隣の良好な住居の環境を害するおそれがないかどうかなどに着目し、実態に応じて判断する。
【解説】
・高齢者向けふれあいサロンとは、老人福祉法など他法令の位置づけはないが、高齢者が抱える孤独感や孤立感の解消、地域の高齢者相互の日常的な交流や親睦を通じたコミュニティの維持・向上の支援などを目的として、町内会や自治会、各地の社会福祉協議会、NPO法人、ボランティア団体などが、地域の高齢者を対象に、茶話会、軽い体操、工作(手芸など)、ゲームなどの交流、ふれあいの場や機会を、無料又はお茶代やお菓子代程度の利用料で提供する施設である。
・地域の町内会や自治会が運営しているサロンや老人会活動の一環として実施する場合の他に、開設や運営に係る経費(会場使用料や賃料、人件費、備品購入費など)を補助、助成する自治体や社会福祉法人もある。
・事例によると、ふれあいサロンを専用施設で開設する場合は少なく、地域の集会所や自治会館、コミュニティセンター、公民館などの公共施設において、月に1~2回程度サロンを開催する場合が多い。
・さらに、地方公共団体の補助などを受けるなどして、空き建物や空き室などのスペースを賃借し、開催する場合もある。
・主な利用者は地域在住高齢者だが、運営目的によっては子育て中の親子などの地域住民も利用することから、利用形態は多様である。
・定員はサロンの開催プログラムにより異なるが、10名~20名程度が多い。
・以上のように、主として地域の高齢者を対象とし、心身の健康の増進やいきがい活動、介護予防や痴呆予防などを主たる目的とする施設で、施設利用時の騒音などにより近隣の良好な住居の環境を害するおそれのない場合は、「老人福祉センター、児童厚生施設その他これらに類するもの」に該当するとした。

「就労移行・継続・定着支援事業の用に供する施設」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型・B型)及び就労定着支援事業の用に供する施設は、障害者の就労移行支援や就労継続支援、就労定着支援を主たる目的とする施設で、騒音の発生などにより近隣の良好な住居の環境を害するおそれがない通所施設の場合は、「老人福祉センター、児童厚生施設その他これらに類するもの」に該当する。
・施設内の訓練・作業場については、作業場の床面積(50㎡以下)、原動機の使用の有無や出力(0.75kw以下)、作業の目的(訓練か、製造・販売かなど)や内容(軽作業に留まるのかなど)、作業の継続性などに着目し、「工場」、「老人福祉センター、児童厚生施設その他これらに類するもの」、「飲食店」、「店舗」、「事務所」など、実態に応じて判断する。
・また、生活介護や他の障害福祉サービス事業を一体的に実施する多機能型の施設、入所型の障害者支援施設や福祉ホーム、工場や飲食店、店舗、事務所などとの併設・複合施設などの場合は、主たる用途との主・従の関係や当該複合建築物内の単体区分用途に着目し、実態に応じて判断する。
【解説】
以下省略

「居宅介護・重度訪問介護又はこれに相当するサービスの事業を行う施設」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・居宅介護・重度訪問介護又はこれに相当するサービスの事業を行う施設のうち、騒音の発生などにより近隣の良好な住居の環境を害するおそれがないものについては、「老人福祉センター、児童厚生施設その他これらに類するもの」に該当する。
・なお、名称などにより形式的に判断するのではなく、当該施設の規模やホームヘルパーなどの待機・休憩スペースなどの有無、施設の利用時間などに着目し判断することとし、ホームヘルパーなどのサービス提供機能がない場合は「事務所」と判断するなど、実態に応じて判断する。
【解説】
以下省略

「スポーツ振興くじ及び宝くじ売り場の用に供する施設」について

(法第48条・法別表第2)
【内容】
・スポーツ振興くじ及び宝くじ売り場は、第1種中高層住居専用地域内に建築することができる「物品販売業を営む店舗」及び「銀行の支店、損害保険代理店、宅地建物取引業を営む店舗その他これらに類するサービス業を営む店舗」には該当しない。
・法別表第2(い)(ろ)(は)(ち)項に限定列記する用途にも該当せず、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域及び田園住居地域内では建築不可となる。
・一方、法別表第2(に)~(と)、(り)~(か)項に限定列記する用途にも該当せず、第2種中高層住居専用地域から用途地域の指定のない区域内(市街化調整区域を除く)では建築可となる。
・なお、事務所や店舗などとの併設・複合施設の場合は、主たる用途との主・従関係や複合建築物内の単体区分用途に着目し、実態に応じて判断する。

【解説】
・スポーツ振興くじ及び宝くじとは、当せん金付証票法第2条に規定される「当せん金付証票」であり、都道府県又は政令指定都市、並びに総務大臣が指定する市が総務大臣の許可を受けて発売することができる。
・また都道府県知事又は特定市の市長は、自ら当せん金付証票を販売する他に、販売などの事務を銀行などに委託することができる(同法第6条)。
・日本標準産業分類上、宝くじの販売は「サービス業(大分類)」に該当するため、物品販売業を営む店舗には該当しないと判断した。
・スポーツ振興くじ及び宝くじ売り場は、第1種中高層住居専用地域に必要な日用品を総合的に供給するための店舗などではなく、夏期や年末などの繁忙期には不特定多数の者が出入し、良好な住居の環境を害するおそれがあることから、「物品販売業を営む店舗」及び「銀行の支店、損害保険代理店、宅地建物取引業を営む店舗その他これらに類するサービス業を営む店舗」には該当しないと判断した。
・日本標準産業分類上「他に分類されない生活関連サービス業」に該当するスポーツ振興くじ及び宝くじ売り場は、風営法の位置づけがなく、また日本標準産業分類上「娯楽に付帯するサービス業」に該当する「勝馬投票券発売所」や「場外車券売場」と異なることから、「マージャン屋、ぱちんこ屋、射的場、勝馬投票券発売所、場外車券売場その他これらに類するもの」には該当しないと判断した。

この用途については、建築確認うんぬん以前に宝くじの正式名称が「当せん金付証票」だということを知れたのがちょっとした収穫でした。
好奇心は無くさないようにしたいものです。

「eスポーツ施設」について

(法第48条・法別表第2)
【内容】
・eスポーツ施設は、遊興施設であるとして風営法第2条第1項第5号に規定する「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備」としての営業許可を受けている又は受ける予定の場合は、「マージャン屋、ぱちんこ屋、射的場、勝馬投票券発売所、場外車券売場その他これに類するもの」に該当する。
・風営法の適用外の場合は、施設の主たる機能や規模によって、下記のいずれかと判断する。
 ○固定の観客席を設置するもののPCゲーム機などは設置せず、PCゲームなどの対戦競技を大画面モニターなどで鑑賞することを主とする場合は、「劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場又はナイトクラブその他これに類する政令で定めるもの」に該当する。
 ○eスポーツカフェとの表示があっても、飲食を主とする場合は、「食堂又は喫茶店」、「飲食店」に該当する
 ○上記の何れにも該当しない場合は、「遊技場」に該当する。
・ただし、施設の規模や収容人数、夜間営業や深夜の酒類の提供の有無などに着目し、不特定多数の人が集散し、継続的な騒音などの発生により良好な住居の環境を害するおそれなどに着目し、実態に応じて判断する。

【解説】
・eスポーツ(esports)とは、(一社)日本eスポーツ連合によると「エレクトロニック・スポーツ(ElectronicSports)」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム(以下、「PCゲーム」という。)やビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称であり、スポーツ競技や対戦型のPCゲームを個人戦や団体戦で競うものである。
・事例によると、事業者が利用者から料金を徴収して、スポーツ競技や対戦型のPCゲームを個人戦や団体戦で競う様子を大画面モニターで利用者に見せるパブリックビューイング形式の施設であり、観客席は様々なイベントなども開催可能なように固定せず移動式又は立ち見形式のものが多い。ただし、eスポーツ観戦のみの施設ではなく、他のスポーツ観戦や様々なイベント開催を主としながら、一時的にeスポーツ観戦を開催する事例がある。
・大画面モニター設置の観戦スペースなどに複数のゲーム機を設置し、対戦型のPCゲームを教えたり、複数人で楽しませる施設や飲食サービスも提供する「eスポーツカフェ」と称する施設も出現するなど、施設形態やサービス内容は多様である。
・風営法の適用対象か否かの判断は、当該eスポーツ施設の所在地を管轄する警察署の判断となるが、「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備」の営業許可を受けている、又は受ける予定の場合は、「マージャン屋、ぱちんこ屋、射的場、勝馬投票券発売所、場外車券売場その他これらに類するもの」に該当するとした。
・なお、風営法の営業許可申請時期は、建築工事などが終了し、ゲーム機などの遊戯施設を設置した後となり、建築確認申請や相談時に許可の要否は分からないことから、計画図書の内容や申請者にヒアリングするなど、注意が必要である。
・風営法適用外の施設については、スポーツ施設やカフェといった名称により形式的に判断するのではなく、ゲーム機での遊興を主とするのか、固定席を設ける形で鑑賞を主とするのか、飲食を主とするかなどの機能に着目し、実態に応じて判断することとした。また、主たる用途を判断できない建築物もあると考えられるが、ゲーム機の設置スペースや、飲食提供スペースなどの規模や間取りの構成、利用の反復継続性などに着目し、実態に応じて判断する。
・なお、飲食店のうち、深夜0時以降に酒類を提供する場合は、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に「深夜酒類提供飲食店」の届出(風営法第33条第1項)が必要となるが、建築基準法の立地規制とは別に、都道府県の条例により、原則、住居専用地域・住居地域(都道府県によっては準住居地域を含まない場合あり)内での営業が禁止されることから、注意が必要である。

これも新しい用途で、興味深いですね。オリンピック種目にも採用されるのではという話もあります。昨今の超商業的イベントという意味でのオリンピックでなら採用されることも不思議ではなく、商売になるとなれば関連施設も投資先としてより注目されていくことと思います。
プロeスポーツ選手養成のための専門学校もありますので、より社会的認知度が高まることでしょう。

「レンタルスペース」について

(法第48条・法別表第2)
【内容】
・レンタルスペースは、時間貸しによる場の提供(賃貸)を主たる目的とする施設で、時間や曜日、利用者によって多目的に利用される空間・施設であり、法別表第2(い)(ろ)(は)(ち)項に限定列記する用途には該当せず、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域及び田園住居地域内では建築不可となる。
・一方、法別表第2(に)~(と)、(り)~(か)項に限定列記する用途にも該当せず、第2種中高層住居専用地域から用途地域の指定のない区域内(市街化調整区域を除く)では建築可となる。

【解説】
・レンタルスペースとは、不特定多数の者が多目的に利用する施設であり、事例によると、貸しビルなどの1室若しくは1フロアーを活用する
場合が多いものの、戸建住宅などからの用途変更例もある。
・パーティーやイベント、食事会などを目的とする集客性の高い空間であり、利用定員は5~10人程度の貸し会議室のタイプのものから定員50人を超えるイベントスペースのようなものまであり、規模も10㎡~100㎡など多様である。
・集会所に類似するが、近隣住民など一定の範囲の者が主に利用するものではなく、不特定の者が時間や曜日によって入れ替わり利用する施設であること、さらには、夜間の人の出入りや入退去時の人の滞留や騒音なども想定され、近隣の良好な住居の環境を害するおそれがあるなど、機能面と近隣の良好な住居の環境を害するおそれの両面から「近隣住民を対象とした集会所」には該当しないと判断した。
・また、戸建住宅を用途変更するケースも想定され、外形や規模が戸建住宅と変わらないものもあるが、上記と同様の理由により「住宅」には該当しないと判断した。

「インターネット通信販売を行う兼用住宅の非住宅部分」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・兼用住宅の非住宅部分においてインターネットによる通信販売を行う建築物で、次の全てに該当するものは、令第130条の3第1号に掲げる事務所に該当する。
 ①物品販売などの店の構えがない
 ②商品の製造を行わない
 ③対面での商品の受け渡しなどを行わない
 ④商品の在庫保管や陳列を行わない

【解説】
・インターネット通信販売とは、インターネットなどの通信手段によって個人からの注文を受け、商品を販売する販売形態であり、無店舗で商品の受注・発注業務をする場合だけでなく、店構えの有無や当該建築物内での商品の販売、製造、商品の在庫保管や陳列を行う場合など、機能や形態は多様である。
・第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域及び田園住居地域内において立地可能な兼用住宅の非住宅部分については、住宅部分に対する面積割合や規模が制限され、用途についても、近隣の良好な住居の環境を害するおそれがない事務所、日用品の販売やサービス店舗などに限られている。
・このため、広域からの不特定多数の人や車の集散、商品の搬出入などに伴う交通の集中や騒音の発生、商品の製造などによる継続的な騒音や振動などの発生などにより、近隣の良好な住居の環境の悪化のおそれがない用途に限るとして、【内容】に示す①~④の全ての条件を満たす場合に限り、令第130条の3第1号に掲げる事務所に該当するとした。

すっかり市民権?を獲得した「転売ヤー」という方たちも、このような事務所を構えていることになるのでしょうか、とふと考えたりしました。ただ、転売ヤーの方たちは限定品や品薄品をあらゆる手段で確保して在庫しておくこともありますから、条件4には該当しないこととなるような気もします。

「ホテル・旅館のフロント代替設備を有する建築物」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・ホテル・旅館のフロント代替設備を有する建築物で、フロント代替設備を宿泊施設と同一建築物内に設置する場合は、「ホテル又は旅館」に該当する。
・また、フロント代替設備を宿泊施設とは別敷地に設置する場合にあって、同建築物に宿泊者の出入りがある場合は「ホテル又は旅館」に該当し、同建築物に宿泊者の出入りがない場合は「事務所」に該当する。
・なお、フロント代替設備を宿泊施設とは別敷地に設置する場合で、飲食店や事務所などの一部の空間を利用するケースについては、主たる用途との主従の関係や補完関係など、建築物の機能上の関係性に着目し、個別に判断する。

【解説】
①建築物及び設備などの概要
・これまでホテルや旅館において、宿泊者が必ず通過する場所に面して設置(=通常、宿泊施設内に設置)する必要があった玄関帳場又はフロントが、旅館業法施行令及び同法施行規則の一部改正により、平成30年6月15日以降、宿泊施設から離れた場所(敷地外含む)に厚生労働省令で定める基準を満たすフロント代替設備を設置することで対応することが可能となった。
・このフロント代替設備を設けることにより、玄関帳場又はフロントの設置は不要(宿泊者との直接対面も不要)となるため、宿泊施設の敷地外など宿泊施設とは別の離れた場所に設けることが可能となり、この設備を設けた建築物をフロント代替設備を有する建築物という。
・なお、ホテル又は旅館を営業する場合は、都道府県知事などの許可が必要であり、許可に際して設置されるフロント代替設備の基準が旅館業法施行規則第4条の3の基準に適合していることが求められる。
・建築形態としては、大きくはフロント代替設備をⅰ)宿泊施設と同一建築物内に設置する場合とⅱ)宿泊施設とは別敷地に設置する場合(「宿泊者の出入りの有無」)の計3パターンある。
・このうち宿泊者の出入りの有無とは、例えば宿泊者の本人確認や鍵の受渡しを対面(宿泊客の出入あり)で行うのか、通信などの非対面(宿泊客の出入なし)で行うかによる。
・非対面とは、宿泊者への鍵の受け渡しや本人確認などについてICT(情報通信技術)を活用することで、宿泊者が本人確認など設備設置場所に直接赴かなくても宿泊可能な場合であり、本人確認書類をモニターなどで監視する管理室のみ設置されている場合が該当する。

②用途判断理由
・フロント代替設備を宿泊施設と同一建築物内に設置する場合は、宿泊施設とフロント代替設備を有する建築物が機能上一体性を有すると考えられることから、宿泊者の出入りの有無にかかわらず「ホテル又は旅館」と判断した。
・フロント代替設備が宿泊施設とは別敷地に設置される場合は、単体での機能や利用形態に即して判断することになる。宿泊者の出入りがある場合は、ホテル又は旅館営業を営業する場合に必要な施設であり、宿泊者の出入りが比較的短期間に集中するとしても、宿泊施設は24時間利用可能な施設であり、不特定多数の宿泊者の出入りなどに伴う騒音などが発生するおそれがあるため、「ホテル又は旅館」と判断。一方、宿泊者の出入りがない場合は、ホテル又は旅館営業のために必要な施設であるとしても、機能や利用形態が一般的な事務所と変わらないことから、「事務所」と判断した。
・なお、法別表第1と第2では規制目的が異なるため、特殊建築物の判断(法別表第1)とは用途判断が異なる場合があることに留意されたい。その際、建築計画概要書の用途区分に「その他(フロント代替設備を有する建築物)」と補記させることが考えられる。
【参考】
・簡易宿泊所(昭和39年9月19住指発168号)
・旅館業法施行令第1条第1項第2号
・旅館業における衛生など管理要領(平成12年12月5日生衛発1811号・平成30年1月31日生食発0131第2号一部改正)
・簡易宿所営業における玄関帳場などの設置について(都道府県知事など向け厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知平成29年12月15日生食発691215第3号)

「簡易宿所の共同玄関帳場」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・簡易宿所の共同玄関帳場は、宿泊施設と同一敷地内に設置する場合又は敷地外に単独で設置する場合のいずれの場合にあっても「ホテル又は旅館」に該当する。
【解説】
①建築物及び設備などの概要
・簡易宿所の共同玄関帳場とは、平成29年12月15日の厚生労働省の都道府県知事など向け通知により、複数の簡易宿所営業施設が設置する共同の玄関帳場である。
・簡易宿所の営業施設の玄関帳場の構造設備はホテル・旅館の玄関帳場又はフロントと同様であることが多く、原則としてチェックインカウンター(受付台)において宿泊者との直接対面が必要となるが、宿泊施設から離れた場所(敷地外を含む)で複数の簡易宿所営業施設の玄関帳場を共同で設置する考え方が通知により示された。
・なお、共同玄関帳場を簡易宿所営業施設から離れた場所に設置する場合は、宿泊者からの求めや緊急時の対応として、施設従業者や管理会社が徒歩、自転車、バイク、自動車などにより、おおむね10分程度で駆けつけることができる体制を整える必要があるとされている。

②用途判断理由
・宿泊施設と同一敷地内に設置する場合は、共同玄関帳場は簡易宿所営業施設の一部であり、機能上一体性を有すると考えられることから「ホテル又は旅館」と判断した。
・また、宿泊施設とは別敷地に設置する場合にあっても、共同玄関帳場のチェックインカウンターにおいて宿泊者との直接対面が必要となり、宿泊者の出入りが比較的短期間に集中するとしても、宿泊施設は24時間利用可能な施設であり、不特定多数の宿泊者の出入りなどに伴う騒音などが発生するおそれがあるため、「ホテル又は旅館」と判断する。
・なお、法別表第1と第2では規制目的が異なるため、特殊建築物の判断(法別表第1)とは用途判断が異なる場合があることに留意されたい。その際、建築計画概要書の用途区分に「その他簡易宿所の共同玄関帳場」と補記させることが考えられる。
【参考】
・簡易宿所営業における玄関帳場などの設置について(都道府県知事など向け厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知平成29年12月15日生食発1215第3号)
・旅館業における衛生など管理要領(平成12年12月5日生衛発1811号
・平成30年1月31日生食発0131第2号一部改正)

「全天候型の屋内ドッグラン」について

(法第48条、法別表第2)
【内容】
・全天候型の屋内ドッグランは、「畜舎」には該当せず、近隣住民の生活に必要不可欠なサービス業を営む店舗である「理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらに類するサービス業を営む店舗」にも該当しない。
・法別表第2(い)(ろ)(は)(ち)項に限定列記する用途にも該当せず、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域及び田園住居地域内では建築不可となる。

【解説】
・全天候型の屋内ドッグランとは、飼い主が天候に左右されることなく、犬を自由に運動させることができる施設である。
・事例によると、利用者は1頭及び時間(又は1回)当たりの利用料を支払い、犬を運動させる施設である。
・同施設では、犬同士の事故やトラブル防止のために、利用者一人当たりの入場頭数の制限やリードの着用、ドッグラン内でのおもちゃやおやつの使用禁止などの利用ルールを設けており、トラブル防止などのための見守り要員としてトレーナーを常駐する場合もある。
・建築形態は、殆どがペット美容室やペットホテルなどのペット関連施設との複合建築物となっている。また、ドッグランの規模は、犬の種類(小型犬~大型犬)や利用人数・頭数によって、40~50㎡程度の小規模なものから500~600㎡程度の大規模なものまで多様である。
・屋内ドッグランにはケージや介護スペースはなく、犬を運動させる施設であるため、「畜舎」には該当しないと判断した。さらに、日常生活に必要不可欠なサービス業を営む店舗とは言い難く、かつ多くの犬が集まり、施設内外で犬の鳴き声などの騒音など近隣の良好な住居の環境に影響を与えるおそれがあるため、法別表第2(い)(ろ)(は)(ち)項に限定列記する用途にも該当しないとした。

「用途上可分・不可分の関係にある2以上の建築物」について

(法第48条)
(1)企業の従業員向けの複数棟の寮と管理・厚生施設
【内容】
・寮に台所(食堂)・浴室・トイレが設置されるケースA(図2-5-3・表2-5-1参照)の場合は、独立した住宅の用途機能を有することから、複数棟の寮と管理・厚生施設は用途上可分の関係にあるものとして取り扱う。
・ただし、管理・厚生施設が寮利用者専用であって、敷地内の複数の寮と管理・厚生施設を一体利用することが明らかな場合は、複数の寮と管理・厚生施設とは機能上の関係性が強いとして、用途上不可分の関係にあるものとして取り扱う。
・寮に寝室、トイレのみ設置されるケースB(図2-5-3・表2-5-1参照)の場合は、台所(食堂)・浴室は管理・厚生施設に設置されているため、複数棟の寮と管理・厚生施設とは機能上の関係性が強いとして、用途上不可分の関係にあるものとして取り扱う。

【解説】
・ケースAは、寮が独立した住宅の用途機能を有し、管理・厚生施設がなくても成立することから「併設関係」にあるとし、原則として複数の寮と管理・厚生施設とは用途上可分の関係にあると判断した。
・ただし書については、管理・厚生施設が寮利用者専用で、複数の寮と管理・厚生施設とを一体利用することが明らかな場合は、機能上は「附属関係」にあるとして用途上不可分の関係にあると判断した。
・管理・厚生施設が寮利用者専用であるかどうかの判断は、①管理・厚生施設の出入口の位置、②管理人室などの設置による管理体制の確保(寮利用者以外の者の利用を排除可能な管理体制)、③敷地内の寮の延べ面積の合計や寮の部屋数と管理・厚生施設の面積規模と
のバランスなどをもとに、総合的に判断する必要がある。
・複数の寮と管理・厚生施設とを一体利用することが明らかであるかどうかの判断は、①敷地の出入口や接道状況などの配置計画、②敷地全体をフェンスで囲むなどの外構計画、③敷地内に設置する管理施設や管理人室などにおいて寮の部屋の鍵の受け渡しを行うなどの利用(管理)形態などをもとに、総合的に判断する必要がある。
・ケースBは、管理・厚生施設は主要用途建築物と考えられる寮の台所(食堂)、浴室の一部を構成するため、「附属関係」にあるとして用途上不可分の関係にあると判断した。

(2)病院敷地内に別棟で建築する調剤薬局
【内容】
・病院敷地内に別棟で建築される調剤薬局は、主要用途建築物である病院とは用途上可分の関係にあるものとして取り扱う。
・ただし、独立した運営を行わず、病院が閉鎖した際には、調剤薬局も閉鎖する場合など、病院と調剤薬局の一体性、運営形態にも着目し、相互の機能上の関係性について実態に応じて判断する。

【解説】
・病院敷地内に別棟で建築される調剤薬局は、主な利用者が病院利用者であっても、設置・運営主体が病院と異なり、仮に病院が閉鎖されても他の病院や診療所での処方箋をもとに薬を販売するなど、独立して機能することが可能であるため主要用途建築物である病院とは併設関係にあると考え、用途上可分の関係にあると判断した。

(3)小学校敷地内に別棟で建築する放課後児童クラブ
【内容】
・小学校敷地内に別棟で建築する放課後児童クラブは、主要用途建築物である小学校とは用途上可分の関係にあるものとして取り扱う。
・ただし、建築物相互の動線計画や敷地・施設の利用形態などにも着目し、相互の機能上の関係性について実態に応じて判断する。

【解説】
・学校施設である小学校と児童福祉施設である放課後児童クラブは、いずれも設置主体が市町村であっても、教育と福祉と目的・機能が異なるとともに、利用時間も放課後や休日、長期休暇時など小学校とは異なることから、主要用途建築物である小学校とは併設関係にあり、用途上可分の関係にあると判断した。

こちらの解説では図が添付されていますが、それを複写して載せるわけにもいかないので現物で確認してください。
可分不可分もなかなかに悩むところですので、これら参考資料をもとにしても判断できない場合はさっさと行政に確認しに行くほうがてっとり早いと思います。
多分に裁量的な判断が行われる内容でもありますので、自分で考えるより行政に聞く、というスタンスが良さそうです。

他にも、改訂版で追加、更新された内容もありますので詳細は実際の書籍で確認してください。

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毎年新しくなっているわけでもないので、改訂されるたびに購入するのが良いのではないでしょうか。

併せて、防火避難規定の解説が古い方はそれも新しくし、建築法規界のスーパーアイドルそぞろさんの「逆引き! 住宅設計のための建築法規」もゲットしておくとさらに業務が捗ることでしょう。

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