大規模の修繕と大規模の模様替の定義とその違いをみっちり調べてみた

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大規模の修繕と大規模の模様替の定義

修繕とは

修繕という言葉の意味合いは、3つの条件(要件)により成り立っていると考えられています。

すなわち
①同じ材料を用いて
②元の状態に復元し
③建築当初の価値を回復させる

という3つの条件を満たす行為が「修繕」です。

具体的には、サイディング張りの外壁が傷んできたので、新しいサイディング張りを施すような工事です。

模様替とは

一方、模様替とはどのような行為を指すのでしょうか。
模様替はおもに2つの条件(要件)により成り立っていると考えられています。

①建築物の材料や仕様を替えて
②建築当初の価値の低下を防ぐ

これが、模様替の定義です。

具体的には、板張りの外壁をサイディング張りに更新するような工事が該当します。
茅葺きの屋根を鉄板葺きにする工事も同様です。

大規模とは

建築基準法の第2条第14号、15号に大規模の修繕、大規模の模様替について規定されています。

十四  大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
十五  大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。

この条文により、大規模の意味するところは

建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の○○」であることがわかります。

これにより、通常の修繕や模様替と区別をしているとも言えます。
大規模に該当するための条件は上記より、

①建築物の主要構造部の種類区分ごとに
②建築物全体の過半になること

が条件となります。

つまり、柱と壁の2種類について修繕を行う場合、柱については主要構造部に該当する柱の建築物全体の総本数に対して、壁については主要構造部に該当する壁の建築物全体の面積に対して、過半であるかどうかを判定する必要があります。

この場合、柱だけ、もしくは壁だけが上記の①②に該当すれば、他方が該当しなくても「大規模」に該当します。
また、柱については基本的に主要構造部となると思いますが、壁については主要構造部に該当しない壁もあります。

(主要構造部の壁については「防火上主要な間仕切壁の過半の改修は、建築確認申請が必要か?」を御覧ください。)

過半かどうかの判定については、各階や各用途による判断ではなく、建築物全体について判定します。

大規模の修繕、大規模の模様替と建築確認申請

建築確認が必要な建築物、不要な建築物

大規模の修繕、大規模の模様替が建築確認が必要な行為に該当することは皆さんご存知の通りですが、念のため条文を確認します。

(建築物の建築等に関する申請及び確認)
第六条
建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。

さらに、周知の事実ではありますが、条文にあるように4号建築物に対しては、大規模の修繕、大規模の模様替の工事をする場合でも建築確認は不要です。

いわゆる、ビフォアアフター的な工事を行う4号建築物は、屋根や外壁をまるごと新しくし、階段の位置を変えても建築確認不要で工事して良いということになります。

建築確認申請にあたっての法の適用範囲

構造計算の規定

大規模の修繕、大規模の模様替の確認申請では、その工事により建築物に対して、構造耐力上の危険が増大しなければ、構造計算書の添付は不要です。

屋根の葺き替えや、外壁のやり替えのようなケースでは、既存の仕様から荷重が増えないような材料を選ぶことで、構造計算を不要とすることがほとんどのようです。

また、あえて構造耐力上の危険が増大する大規模の修繕や大規模の模様替を行うことはほぼ無いとは思いますが、その場合は現行法の規定が適用されている建築物であれば、構造計算が必要になります。

既存不適格建築物であれば、令137条の12にあるように、構造耐力上の危険が増大しなければ、遡及適用はされません。

逆に、既存不適格建築物で、構造耐力上の危険性が増大するとなると、かなり厄介なことになるのでわざわざそのような工事をすることは稀でしょう。

用途の規制

用途について既存不適格である建築物に対して、大規模の修繕、大規模の模様替を行う場合も遡及適用はありません。
なお、用途を変更する場合でも、類似の用途変更(令137条の17)の範囲内であれば問題ありません。

その他の規定

大規模の修繕、大規模の模様替は、当然建築物の面積や高さには変更がありませんので、法の適用を受ける範囲は限られてきます。
施行令137条の12の規定をよく読めば、ほとんどの法チェックは難なくクリアできます。

(大規模の修繕又は大規模の模様替)
第百三十七条の十二
法第三条第二項 の規定により法第二十条 (構造規定)の規定の適用を受けない建築物について法第八十六条の七第一項 の規定により政令で定める範囲は、大規模の修繕又は大規模の模様替については、当該建築物の構造耐力上の危険性が増大しないこれらの修繕又は模様替のすべてとする。

法第三条第二項 の規定により法第二十六条 、法第二十七条 、法第三十条 、法第三十四条第二項 、法第四十七条 、法第五十一条 、法第五十二条第一項 、第二項若しくは第七項、法第五十三条第一項 若しくは第二項 、法第五十四条第一項 、法第五十五条第一項 、法第五十六条第一項 、法第五十六条の二第一項 、法第五十七条の四第一項 、法第五十七条の五第一項 、法第五十八条 、法第五十九条第一項 若しくは第二項 、法第六十条第一項 若しくは第二項 、法第六十条の二第一項 若しくは第二項 、法第六十一条 、法第六十二条第一項 、法第六十七条の二第一項 若しくは第五項 から第七項 まで又は法第六十八条第一項 若しくは第二項 の規定の適用を受けない建築物について法第八十六条の七第一項 の規定により政令で定める範囲は、大規模の修繕又は大規模の模様替については、これらの修繕又は模様替のすべてとする。

法第三条第二項 の規定により法第二十八条の二 (シックハウス関連)の規定の適用を受けない建築物について法第八十六条の七第一項 の規定により政令で定める範囲は、大規模の修繕及び大規模の模様替については、次に定めるところによる。
一  大規模の修繕又は大規模の模様替に係る部分が第百三十七条の四の二に規定する基準に適合すること。
二  大規模の修繕又は大規模の模様替に係る部分以外の部分が第百三十七条の四の三第三号の国土交通大臣が定める基準に適合すること。

法第三条第二項 の規定により法第四十八条第一項 から第十三項 (用途規制)までの規定の適用を受けない建築物について法第八十六条の七第一項 の規定により政令で定める範囲は、大規模の修繕又は大規模の模様替については、当該建築物の用途の変更(第百三十七条の十八第二項に規定する範囲内のものを除く。)を伴わないこれらの修繕又は模様替のすべてとする。

大規模の模様替 ケーススタディ

例えば、小規模共同住宅(鉄骨2階建て延180㎡)の改装工事の計画があるとします。

建築物全体の用途を一戸建ての住宅に変更するために、共用の外階段を撤去し、屋内に階段を新設するような工事です。
この計画は、建築確認が必要になるでしょうか。

答えは建築確認は不要です。

まず用途変更についてですが、この計画では1号かつ3号建築物が3号建築物となるので、確認申請が必要な用途変更となりません。
特殊建築物だったものが、特殊建築物以外の建築物に用途が変更になったためです。

次に大規模の模様替に該当するかどうかについては、ポイントは2つあります。

まず屋外階段の撤去についてですが、屋外階段は主要構造部ではありません。また、撤去ですから模様替にも該当しません。
次に屋内への階段の新設ですが、これも今ある階段の位置を変えたり、構造を変えたりということではないため、やはり模様替に該当しません。

その結果、上記の計画は、用途変更も含めて、大規模の模様替の確認申請も手続きする必要が無いということになります。

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