今後の基準法大改正を見越したパブコメに注目すべし

2022年1月7日まで意見募集中のパブコメに注目が集まっています。

『今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第三次報告案)及び建築基準制度のあり方(第四次報告案)について「脱炭素社会の実現に向けた、建築物の省エネ性能の一層の向上、CO2貯蔵に寄与する建築物における木材の利用促進及び既存建築ストックの長寿命化の総合的推進に向けて」』に関する意見募集について

2025年頃までの法改正に向けた、省エネ問題を軸とした建築基準法関連の意見募集といったところですが、添付資料の密度がとても濃いものとなっています。

是非とも一読しておくべきだとは思いますが、kenkihou的に確認申請関連の要チェックポイントをまとめます。

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建築基準制度のあり方(第四次報告案)の要チェックポイント

全建築物の省エネ適合義務化

2000㎡以上の建築物の省エネ適判が始まったときからわかっていたことですし、パブコメの資料7ページにも記載があるように、2025年をめどにすべての建築物の省エネ基準適合が義務化されることになっています。

2021年12月時点では、非住宅で300㎡以上の建築物からが省エネ適判の対象となっていますが、結局のところマンション戸建て問わず住宅関連の省エネ性能は建築主または建設会社にお任せといった状況です。

気の利いた住宅メーカーや工務店は省エネ性能を売りにして基準を先取りしているようなところもありますが、昔の公庫基準のような最低限の省エネ性能しかない住宅も依然として作られ続けています。

こうした現状を打破するには義務化するしかないのですが、実際に達成するためには確認申請および完了検査でチェックする必要が出てくるわけです。

パブコメの報告書によれば、自前で省エネ性能を確認できる建築士は5から6割程度しか存在しないとのことですが、業務効率を図るのにも限界があると思われます。

流石に「省エネ建築士」のような資格制度までは創設されないとは思いますが、意匠、構造、設備に加え、省エネ設計事務所の重要性が高まることは容易に想像できます。

省エネ義務化対策としての確認特例対象の縮小

特例対象縮小について、パブコメ資料20ページから抜粋します

構造種別を問わず、階数2以上又は延べ面積 200 ㎡超の建築物は、都市計画区域等の内外にかかわらず、建築確認・検査の対象とし、省エネ基準への適合審査とともに、構造安全性の基準等も審査対象とする

これまでは、都市計画区域外であれば、一般的な規模の木造2階建ての住宅や鉄骨造でも小規模の平屋建て住宅は、建築確認申請が不要でした。

しかしながら、省エネ基準の適合性を確実にするためには、確認申請の対象とするのが手っ取り早いということになりそうです。

確かに、都市部だろうとそうでなかろうと、省エネ性能確保の重要性に違いはありません。

また、構造安全性についても審査対象とする、とあります。

どの程度までが審査対象となるかは現時点ではまったくわかりませんが、木造であれば壁量計算、木造以外であれば構造仕様規定への適合程度は審査の対象となるのではないかと思われます。

理由としては、省エネ性能向上により建物重量が増加していることが挙げられています。

とはいっても、すでに建築士法の改正で、構造関係図書は確認申請への添付の要否にかかわらず保存されることとなっていますので、作成すること自体は負担が増えることにはなりません。

確認申請に添付する図書が増えることで、確認申請が確認済になるまでの時間は増加すると思われますが、電子申請やその他緩和等により、審査時間短縮のための施策も行われて欲しいものです。

構造計算が必要となる木造建築物の対象範囲縮小

木造建築物の構造計算が必要となる範囲縮小については、資料20ページに記載されています。

木造建築物のうち、構造安全性の確保のために構造計算が必要となる建築物の範囲を、500 ㎡超のものから、大空間を有するものも含まれる300 ㎡超のものに拡大する。

これは記載の通りで、対象面積が300㎡超に縮小されます。

坪数でいうと約91坪程度で、一戸建ての住宅としてはかなりの豪邸です。一方で、共同住宅や長屋であれば、300㎡超のものは特に珍しくありません。

規模縮小の理由としては、大空間を有する建築が増加しているとのことですが、どうして大空間にできるかと言えば、省エネ性能の向上も無関係ではなく、結果として建物重量の増加により安全性をチェックする必要が出てくるということになるわけです。

加えて、確認申請に添付する構造図書を作成する必要がありますし、確認申請においても審査手数料が増えることもありえますので、建築士だけでなく、建築主の負担も増加することとなるでしょう。

住宅の居室の採光規定合理化(おそらく緩和)

こちらは資料の24ページに記載されています。

採光規定について、有効な明るさの確保の措置が行われることを前提に、住宅の居室に必要な採光上有効な開口部面積に関する規制を合理化する。

これは住宅の居室における採光規定についてのもので、具体的な条件などはまったく言及されていないものの、「合理化」とありますので規制緩和と考えてよさそうです。

省エネ化で開口部が減少することに対する措置かもしれませんし、関係ないかもしれません。

今後の情報に注意しておくしかありませんが、建築基準法そのものも時代の変化に対応しきれていない部分も多々ありますから、人々の生活に直結する住宅の居室についての規制から修正されていくというのも、理にかなっているような気がします。

今後の基準法大改正を見越したパブコメに注目すべし、のまとめ

省エネ、既存ストック活用、木造推進の3本柱が今後も建築界の主流となる(もしくは国がそうしたい)のは間違いありません。

まだまだパブコメであり、具体的な改正内容については今後詰められていくことになります。

さらに、集まる意見も多岐にわたることが予想され、それらを踏まえて国がどのように改正案をまとめ上げていくのかがしばらくの間、目が離せない状況となりそうです。

設計者としては、もう省エネに関する知識を先送りすることはできなくなってきました。木造の構造規定についても同様です。

また、添付の資料には今回の記事で取り上げなかった内容でも、設計事務所の得意とする業務・設計に大きな影響をおよぼすものもあろうかと思います。

ぜひとも時間を作って、今後の改正により設計業務をはじめとした仕事にどのような影響がありそうか、考えてみていただきたいと思います。

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