平成30年度法改正の未施行分を予習しよう+新情報+パブコメもあるよ

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2018年12月07日に「建築基準法の一部を改正する法律の施行に伴う建築基準法施行令の改正に向けた検討案(総則・単体規定関係)に関する意見募集について」と題したパブコメの募集が開始されました。

簡単に言うと、平成30年度の建築基準法の改正のうち、未施行の改正内容について意見を求めますよというものです。改正法の公布から、1年以内に施行されるものとされていた部分になります。
以下の記事から、これまでの経緯を確認できます。

平成30年改正のパブコメで政令などの改正内容を先取り

今回のパブコメ募集で重要なのは、意見募集の検討案にこれまで聞いたことのない改正案が多数ちりばめられているということです。

この記事では、パブコメの概略と新登場の規定、取扱について述べたいと思います。
ちなみに、パブコメ募集の段階ではあくまで「案」であり予習するのは非常に有効ではありますが、すべてこの通りに施行されるとは限らないので「案」が実施されるのを前提に計画を進めるのはやめておきましょう。

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2018年12月07日公示の建築基準法パブコメ概略

まず、こちらがパブコメ募集のサイトです。

建築基準法の一部を改正する法律の施行に伴う建築基準法施行令の改正に向けた検討案(総則・単体規定関係)に関する意見募集について

サイトにも当然ありますが、資料(PDF)へのリンクも張っておきます。

建築基準法の一部を改正する法律の施行に伴う建築基準法施行令の改正に向けた検討案(総則・単体規定関係)について(概要)

上記概略に記載されていることを端的にまとめますと

・維持保全について
・法第21条(大規模木造建築物等)の改正について
・法第27条の改正(小規模特建の緩和)について
・法第30条(界壁の遮音性能)の改正について
・法第61条(防火・準防火地域内の建築物)について
・防火区画等について

といった事項について記載されています。

今回は特に建築確認申請に影響がありそうな項目で、なおかつ、これまで聞いたことのない規定、取扱についてまとめます。

概要PDFを一読いただいてからのほうが、より理解が深まると思います。

2018年12月07日公示パブコメで新登場の規定案、取扱案について目新しいポイント

(3) 特定特殊建築物の主要構造部の性能に関する技術的基準(法第27 条第1項関係)

(3) 特定特殊建築物の主要構造部の性能に関する技術的基準(法第27 条第1項関係)

法第27 条第1項の規定に基づく特定特殊建築物の主要構造部の性能に関する技術的基準に関し、在館者の全てが地上までの避難を終了するまでに要する時間である特定避難時間については、45 分間を下限値とする。

45分間を下限値とする、という考え方が明らかにされました。

(4) 小規模な特定特殊建築物の特例に関する技術的基準

 

① 警報設備を設けた場合に耐火建築物等とすることを要しない用途(法第27 条第1項第1号関係)

警報設備を設けた場合に耐火建築物等とすることを要しない建築物(階数が3で延べ面積が200㎡未満の特定特殊建築物で3階を当該用途に供するものに限る。)の用途は、病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎及び児童福祉施設等(就寝利用するもの)とする。

用途変更をしやすくするための改正ですが、用途がより具体的に示されました。

② 警報設備の技術的基準(法第27 条第1項第1号関係)

上記①で対象とした用途において設置する警報設備の技術的基準は、当該建築物の天井又は壁の屋内に面する部分及び天井裏の部分に、いずれの室(火災の発生のおそれの少ない室を除く。)で火災が発生した場合においても、有効に火災の発生を感知することができる方法により設置し、建築物の各階に火災の発生を有効かつ速やかに報知することができる構造方法であることとする。

警報設備に要求される性能について言及されていますが、これは住宅性能表示制度にもあるような連動警報タイプの火災警報器を示していると考えられます。
電池式でもいいかどうかは不明ですが、電源式だと火災時に電線が断線すれば機能しないことも考えられますし、電池式は電池交換がネックになります。

③ 階段の安全措置に関する技術的基準(令第112 条第9 項・令第121 条関係)

階数が3で延べ面積が200 ㎡未満の建築物であって法別表第一(い)欄(二)項に掲げる用途に供するもの(以下「小規模( 二)項建築物」という。)のうち、主要構造部が準耐火構造でないものについては、次に掲げる用途に応じて、竪穴部分とそれ以外の部分をそれぞれ次に掲げる防火設備等で区画することとする。

・(A)ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎及び児童福祉施設等(通所利用するもの)の場合は、間仕切壁又は戸
 
・ (B)病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)及び児童福祉施設等(就寝利用するもの)の場合は、間仕切壁又は防火設備(20 分間の遮炎性能を有するもの。ただし、竪穴部分以外の部分にスプリンクラー設備を設置した場合にあっては10 分間の遮炎性能を有するもの。)
また、小規模( 二)項建築物のうち、病院、診療所及び児童福祉施設等であって、上記の防火設備等により区画されている場合に限り、2以上の直通階段の設置を要しないものとする。

これまた、新たな区画の登場です。
用途によって、区画部分の使用が異なります。
(A)の用途の場合は、「プチ竪穴区画」とでも言いましょうか、間仕切り壁もしくは「戸」で良いことになっています。規模が小さいため、準耐火構造の壁や遮煙性能のある防火設備までは必要ないということでしょう。

(B)の用途では「ほぼほぼの竪穴区画」が必要となり、「戸」でなく防火設備が要求されていますが、スプリンクラーの設置により防火設備の性能が緩和されています。
また、用途部分が50㎡超となると2直の階段が必須となりますが、この区画があれば緩和されます。
これにより、これまで用途変更を諦めていた案件も、再利用しやすくなる可能性が高まります。

(6) 窓その他の開口部を有しない居室(法第35 条の3関係)

(6) 窓その他の開口部を有しない居室(法第35 条の3関係)

法第35 条の3の規制対象となる窓その他の開口部を有しない居室について、従来は対象となっていた居室のうち、非常用の照明装置の設置を必要としない居室(一戸建ての住宅等)であって、かつ、非常用の進入口の設置を必要としない階(2階以下の階等)にある居室については、規制の対象外とする。

これは令111条の開口に関するもので、木造の建築物に対しては非常に厳しい規定となっていましたが、それに対する緩和となります。
木造建築の推進に弾みをつけるための施策と考えられます。

(7) 防火区画等に関する技術的基準

② アトリウム等における面積区画の適用の合理化(令第112 条第1項関係)

1,500 ㎡(スプリンクラー設備等を設ける場合は3,000 ㎡)ごとに、区画の設置が求められている現行規定を見直し、アトリウム等の物品の存置が想定されない大空間を対象に、廊下などの出火のおそれの少ない室を緩衝帯として居室が面している場合については、一定の基準(居室から上階の居室への延焼を防止するために必要な廊下幅や開口幅などの組み合わせなど)に該当する空間をもって、面積区画を構成する特定防火設備とみなす

これも実態に応じた、時代の流れに応じた改正ではないかと考えれます。
ケースとしてはかなり大規模な建築物への適用が想像できますが、オリンピック施設等への適用も想定されているのでしょうか。

③ 異種用途区画の適用(令第112 条第12 項関係)
互いに異なる用途が接する部分であっても、警報設備の設置などにより、一方の用途で火災が発生した場合に、他方の用途における在館者が火災を覚知して迅速に避難することができるように措置した部分は防火区画を要しないものとする。

防火避難規定の解説に、一体的な避難ができるような運営がなされていれば異種用途区画は必要ないとされていますが、消防設備(警報設備)によっても緩和できることになりそうです。
もはや、異種用途区画は時代遅れの存在になりつつあるのでしょうか。

(8) 避難規定に関する技術的基準

① 排煙設備の設置に関する別建築物みなしの基準(令第126 条の2第2項・令第137 条の14 第3号関係)

排煙設備の設置基準において別建築物とみなす基準については、現行基準では「開口部のない準耐火構造の床又は壁」か「遮煙性能を有する防火設備」で区画することを条件としているが、蓄煙の効果を有する天井の高いアトリウム等の大空間を介して接続する建築物の部分も別の建築物とみなすものとする。
なお、当該部分については、既存不適格建築物の増築等に際しても同様に、排煙設備の規定の適用上、別の建築物とみなすことができる部分(独立部分)とする。

大規模建築への増築をしやすくするための規定、といったところでしょうか。
避難時間が確保できれば安全性が高まるという知見が蓄積されているということでしょう。

② 敷地内通路の幅員(令第128 条関係)

敷地内通路の幅員については、現行基準では規模に関わらず1.5mを設けることとしているが、階数3以下かつ延べ面積200 ㎡未満の小規模な建築物については、在館者が少なく、敷地内通路における滞留のおそれが少ないことから、90cm 以上の幅員が確保されているものを認めるものとする。

都会の狭小地で3階建てを諦めていた方にとっては朗報となりそうです。最低限の接道要件があれば良いということになりますから。

③ 内装制限の代替措置(令第128 条の5第7項関係)

内装制限の代替措置については、現行基準ではスプリンクラー設備等及び排煙設備を設置する措置のみを対象としているが、火災の発生時に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下を生じさせないようにする避難安全性の確保という観点から、有効に煙を蓄積することができる天井の高さの効果を考慮できるものとする。

これも、蓄煙により避難時間を確保しようというものと考えられます。

(9) 避難安全検証

① 防火区画単位による検証方法の追加(令第5章の2の2関係)

避難安全検証の単位については、現行規定においては「建築物」又は「建築物の階」を対象としているところであるが、区画部分(一の階にある居室その他の建築物の部分で、準耐火構造の床若しくは壁又は遮煙性能を有する防火設備で区画されたもの)単位での検証を可能とする。この場合、検証対象となる防火区画について、排煙設備の設置(令第126 条の2及び第126 条の3)及び内装制限(令第128 条の5(第2項、第6項及び第7項並びに階段に係る部分を除く。))のみを適用除外できるものとする。

避難安全検証法に新たな検討範囲が加わる模様です。
どうしても排煙設備等を設置したくない部分などを防火区画し、検証法にて安全性を確認する、という設計が可能になりそうです。

平成30年度法改正の未施行分を予習しよう+パブコメもあるよ、のまとめ

Kenkihou的に重要と思われる部分を抜粋しましたが、ぜひPDF資料をすべて読んでどんな改正が行われるかいろいろと思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

合わせて、意見の募集は来年(2019年)1月5日まで行われていますので、平成最後の年末年始に意見を述べて、法改正に参加してみるのも良いのではないでしょうか。

いずれにせよ、来年度の建築基準法の法令集をいつ買ったら良いのか悩むのは間違いなさそうです。

建築物の防火避難規定の解説2016
by カエレバ

建築申請memo2018
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建築法規PRO2018 図解建築申請法規マニュアル
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