大阪の光の教会と東京の光の教会

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みんな大好き、安藤忠雄氏の展覧会、「安藤忠雄展―挑戦―」に行ってきました。目玉はもちろん、「実物大の光の教会」ですよね。他にも見どころは盛り沢山でしたが、この記事では光の教会と私だけが知っている安藤忠雄氏のエピソードについて語ります。

なお、写真は全部自分で撮ったものです。けっこうよく撮れていたりするので、無断でパクるのはおやめ下さい。リンクを貼ってもダメよ。

建築家 安藤忠雄
by カエレバ

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大阪の光の教会と東京の光の教会はここが違う!!

写真を載せながら比較していこうという趣旨ですが、最初に今回の安藤忠雄展についてのブログ記事などを先に読んでおくと、より楽しめると思いますので良かったらどうぞ。

カーサブルータスのサイト
〈光の教会〉を国立新美術館に増築!? 型破りの安藤忠雄展をリポート。

安藤忠雄展のことが端的にわかる記事
【ビジュアルを創る人 vol.07】安藤忠雄さん(建築家)

まずはもっとも有名な、内部の様子から。

↓これは大阪の光の教会
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↓東京の光の教会
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新国立美術館の光の教会も、結構よく出来ていると思います。入って十字の開口を見た瞬間の神々しさというか、「神様って本当にいるかも」と素直に思ってしまうような感覚は東京でも感じられました。

展示会の期間だけのものなので、開口部の細かな処理はどうしても大阪の実物とは違いますが、計画段階では安藤忠雄氏は十字架の部分はガラスを嵌めたくなかったようで、施主(主に信者たち)の猛反対を受けてガラスを嵌めたそうで、そういった経緯からか東京の光の教会は開口部がスカスカ、ガラスは嵌っていません。

よって、東京の光の教会のほうが、安藤忠雄氏が作りたかった光の教会に近いと言うことも出来ます。

とは言うものの、東京の光の教会はよくよく見てみると「本当の」コンクリート打ち放しじゃないんですよね。

↓東京の光の教会の細部
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詳しい施工方法まではわからないのですが、どうやらコンクリート打ち放しの「パネル」を積み重ねてそれっぽく見えるように作っています。
本物の光の教会は、打ち継ぎのためのぶっとい目地がありますから、正真正銘コンクリート打ち放しです。

会期が終了したら取り壊すので、本当の打ち放しでは解体費用がかかりすぎるというのもあったのでしょうから、しょうがないですね。

建築のことをよく知らない人なら、同じに見えるでしょうからあまり細かいことは気にすることはないでしょう。

そんなことより、よくぞこんなにしっかり作ったと褒めるべきですね。

ちなみに、本物の光の教会の外観はこんな感じで、やっぱり非常にカッコいいです。

↓大阪の光の教会
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3枚目は、光の教会の左側に、あとから増築した日曜学校も写っています。植栽のグリーンとの対比が非常にキレイですね。

では、シンボリックな十字架の部分はどんな具合でしょうか。

↓大阪の光の教会
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↓東京の光の教会
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東京も結構雰囲気が出てます。

よく見ると、十字の横部分のパネル割が違いますね。写真ではどちらも上側が十字の横部分です。

大した問題ではないですが、そこまでこだわって欲しかったかも。

そして、コンクリート打ち放しのPコンの存在感というか、深さが全然違いますよね。
やっぱり、東京はパネルなのでPコンがあまり良く見えません。

Pコンの位置関係まで図面にぎっちりと図示する安藤忠雄氏のこだわりを、もうちょっと表現してみても良かったんじゃないかとも思います。

東京はPコンではなくPコン「ふう」です。

↓大阪の光の教会 十字架
光の教会十字架部分

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↓東京の光の教会 十字架部分
東京の光の教会の十字架

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大阪の光の教会は、しっかりとガラスが嵌ってます。サッシも含め、かなり大変な施工だったことが想像されます。

東京の方も、パネルとはいえ、一番の見せ所なので頑張ってるように見えます。

では、十字架側から教会内部を見返した様子はどうでしょうか。

↓大阪の光の教会
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↓東京の光の教会
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家具の有無や細部の設えの精度が全く違うので、これは明らかに大阪の光の教会が素晴らしいですね。

特に、入り口上部の天井際に切られたスリットからの光の回り込みの様子は、圧倒的に大阪、すなわち本物の神々しさには敵いません。

東京も頑張ってますが、全然、ぜんぜん違います。

残りは、同じようなアングルの写真がないので、数枚ずつ、大阪と東京の写真を載せてみます。雰囲気の違いをお楽しみ下さい。

あえて、東京から載せてみることにします。

↓東京の光の教会
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↓大阪の光の教会
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光の教会 模型

光の教会 日曜学校

いやはや、やっぱり本物の光の教会の圧倒的な魅力は流石です。

ちなみに、大阪の光の教会の5枚目は、光の教会のお隣の日曜学校の内部です。こちらの内部空間の神々しさも必見だったりします。

念のためお断りしておくと、私が大阪の光の教会を訪れたのは2002年頃で、そのときは自由に中に入ることが出来、写真も撮れましたが今はどのようになっているのかはちょっとわからないので、行ってみたいと思う方は事前にしっかり調査しておくことをお薦めします。

大阪は遠くて行けないよ、という方も、新国立美術館の安藤忠雄展で雰囲気はしっかり味わうことができるので、ぜひ行ってみて下さい。

光の教会―安藤忠雄の現場
by カエレバ

安藤忠雄展のグッズをちょっと紹介

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あまりこういう展覧会で図録などを買わないのですが、この展覧会ではついつい買ってしまいました。

本当はTシャツも欲しかったのですが、転売する人が多いみたいで売り切れでした。無念。

で、買ったのは図録とマスキングテープです。

安藤忠雄展 マスキングテープ

3種類のマスキングテープは、直島、東京の作品、関西の作品とに別れ、写真やスケッチが印刷されています。

こうやって紙に貼ってみると、メチャクチャ良いですね。使うのが非常にもったいないです。

図録 安藤忠雄サイン

図録には安藤忠雄氏のサイン入りスケッチが必ず付録として付いています。

殆どが住吉の長屋だったのですが、あえて地中美術館を選んできました。特に価値があるというわけでも無いでしょうが、わずかな希少性に満足感を求めました。

ところでこの図録、図面はほぼなく、少しの文章とたくさんの写真で構成されています。

しかも、2800円と激安。普通に出版されたとしたら、4000円くらいはしそうな書籍なのでお得感はあります。でも、内容は建築の専門家向けではなく、あくまで一般の方向けですね。

光の教会 テレカ

これは番外編。

今時テレカなんて誰もありがたがりませんが、光の教会を訪れた際、無人販売みたいな感じで1000円で売っていたので買ったものです。

今となってはちょっとお宝感があって、うれしいですね。

世界で活躍する建築界の巨匠 安藤忠雄DVD BOOK (宝島社DVD BOOKシリーズ)
by カエレバ

私だけが知っている、安藤忠雄氏のエピソード

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今回の安藤忠雄展を見て、過去に実際にあった安藤忠雄氏のエピソードを思い出したのでご紹介します。ちょっと長いです。
 
私がまだ夢や希望を多少はもっていた若かりし頃、ありがたいことに所属している会社が安藤忠雄氏を呼んで、講演会を開いてくれたことがありました。

講演会といっても、ちょっと大きめの会議室で開催されたもので、参加者は基本的に社員のみで外部の方が来場するような規模ではありませんでした。

すでに世界的スターであった安藤氏の半生や作品などに関して、選ばれし?50名程が聴講し最後は質問コーナーとなりました。

その当時、私のもっとも好きな建築家は谷口吉生氏でしたが、安藤忠雄氏はそれ以前に私の中ではナンバーワンでしたので、著書も結構持っていましたしもちろん読み込んでいました。

そんな折に、目の前わずか2メートルのところでしゃべる生安藤忠雄氏の姿にはえらく興奮しましたし、まったく当たり前の行動として最前列に陣取っていた私は質問コーナーになるやいなや、われ先に挙手しました。

恐らく最後に質問コーナーがあることを想定して、予めいくつか質問を準備していたのですが私が聞いたのは「今、旅に出るならどこに行きたいですか?」というものです。

安藤忠雄ファンの私は前出の著書に再三再四表れる、海外放浪、スケッチ旅行に強く心を打たれていました。

安藤忠雄氏といえば、駆け出しで全く無名な若造だった頃の海外放浪により建築デザインのなんたるかを体に染み込ませていったエピソードが有名です。

若き日の放浪の旅については安藤忠雄ファンなら誰もが知るところでしたので、押しも押されもせぬスーパースターとなった今なら、どんな場所に行きたいのか、そしてそこで何を得ようとするのかという点に大変興味を持ったわけです。

しかし、安藤忠雄氏の返答は、私が勝手に膨らませすぎた期待を瞬時にしぼませるのに足りうるものでした。

その答えというのが

「旅行なんて、面倒やね。日本でゆっくりしまっさかいな。」

でした。

こんな感じの関西弁で返答してくれたはずです。

この一言で衝撃を受けすぎた私は、その後安藤忠雄氏が何を言ったのか、私以降の質問がどんなで、どう答えたのかは全く記憶にありません。

それくらい、私の予想を大きく裏切る返答だったのです。

すでに海外の大富豪たちの自邸や別荘、名だたる企業の社屋の設計を依頼される立場になっていた安藤忠雄氏にとって、海外は仕事で訪れる場所となってしまっていて、若い頃のように無我夢中で学ぶステージではなくなっていたのではないか、とも考えました。

もしかしたら私の質問の仕方が悪く、「旅」を「旅行」と言ってしまったのかもしれないですが、後悔先に立たず、きっと「骨休みに旅行するならどこに行きたいですか?」程度にしか捉えてもらえなかったのかもしれません。

質問が下手だったのでしょう、きっとそうだ、そう思いたい。

旅が感性や心を鍛え、どんな逆境にも耐え、自分を信じることにつながっていく。

安藤忠雄氏の著書をそのように解釈していた上での質問と、その、肩透かしどころか足払いを食らわせるような返答に、私はただただあっけにとられるしかなかったことを今でもよく覚えています。

一方で、もしかして安藤忠雄氏は、中島敦の名作「名人伝」に出てくる「不射之射」の体現者なのでは、とも思いました。

「不射之射」の詳細は名人伝をぜひ読んでいただきたいのですが、簡単に言うと道を極めた者の例えで、弓の名人が最後は弓や矢を見てもそれが何だかわからなくなってしまったという逸話です。

これを安藤忠雄氏に当てはめると、「世界を見て回らなくても、体験として体に染み込んでいるのであえて行くまでもない」ということになるかな、と。

実際の安藤忠雄氏はというと設計をやめたわけでなく、大病を患ってもなお、現役バリバリで活躍されているわけですが、その当時すでにある種の境地に達していたと言っても過言ではないでしょう。

そんな「名人」の展覧会であるが故に、建築業界関係者ではない、一般の方も大勢来場されているのだろうと思いました。

今後の活躍にも期待せずにはおられません。

李陵・山月記・弟子・名人伝 (角川文庫)
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旅―インド・トルコ・沖縄 (住まい学大系 20)
by カエレバ

CasaBRUTUS特別編集 安藤忠雄×旅 総集編 (MAGAZINE HOUSE MOOK)
by カエレバ

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