防火区画:異種用途区画のまとめ

注:最新の令112条はこちらの記事でご確認ください。記事内の項ずれは適宜読み替えてください。ご不便をおかけしますがご了承ください。
【2020年(令和2年)版】 基準法施行令112条(防火区画関連)最新条文(告示番号付き)

防火避難規定の重要規定である、防火区画の規定のうち、異種用途区画についてまとめました。

法文の基本的な読み方だけでなく、考え方についてもまとめたので参考にされてください。

平成30年9月25日に施行された改正法により、旧令112条12項の異種用途区画は廃止され、いままで13項だった条文が12項に繰り上げになりました。
(そもそもの経緯としては、法第24条が廃止されたためです)

よって、小規模の異種用途区画は不要となりましたが、参考資料として記事は残します。
条文は最新の状態がわかるように記載を修正しました。

参考記事:平成30年改正のパブコメで政令などの改正内容を先取り

法改正による条文ズレには気をつけよう:平成30年9月

スポンサーリンク

異種用途区画の目的

複数の用途が存する建築物においては、その用途によって空間の形態・利用・管理が異なり、また、その用途が持つ可燃物や火気の量、質が異なります。
故に、火災荷重や拡大の性質、煙の伝播の性状、適切な避難の方法が異なります。

このように、多数の人が利用するであろう用途や火災荷重の大きな用途、または就寝の用途に供する特殊建築物は、用途ごとの安全性を保つために相互に防火区画する必要があります。

用途の異なる部分を防火区画するので、この防火区画は「異種用途区画」と呼ばれています。

異種用途区画 令第112条第12項(平成30年9月に削除)

異種用途区画 画像

令112条第12項は条文自体は短く簡潔です。
簡単な一覧表はこちらの記事を参照ください。
防火避難規定 防火区画 区画の種類・規模・方法

法24条各号に掲げる特殊建築物は、多数の人々の利用する用途、火災荷重の大きな用途、就寝の用途のいずれかに該当する用途であるため、これらの用途とその他の部分を防火上有効に区画せよ、という内容です。

ここで勘違いしてはならないのは、法24条は木造建築物の22条区域内での外壁等の制限を規定したものですが、異種用途区画(令112条12項)で求めているのは法24条の「各号」の用途についてのみ言及している点です。
これを読み違えると、木造建築物以外関係ないとしてしまいがちですが、令112条12項では建築物の構造については何一つ記載がありません。

木造にかぎらず、鉄骨造でもRC造でも、構造にかかわらず異種用途区画は必要です。

平成30年9月25日に施行された改正法により、旧令112条12項の異種用途区画は廃止され、いままで13項だった条文が12項に繰り上げになりました。
(そもそもの経緯としては、法第24条が廃止されたためです)

令第112条第12項の区画の方法(平成30年9月に削除)

令第112条第12項に規定される異種用途区画で要求される区画の方法は

  • 準耐火構造とした壁(45分準耐火構造)
  • 法2条9号の2ロに規定する防火設備(20分の遮炎性能を有するもの)
  • 防火設備には遮煙性能が必要

となっています。

防火設備に仕様は、同条第14項第2号に規定されています。
つまり、「遮煙性能」が要求されていますので注意してください。

第12項では、床については特に規定されていません。

また、建築物が耐火建築物である場合は、区画する部分も当然耐火構造でなければなりません。

令第112条第12項の区画の注意点(平成30年9月に削除)

防火避難規定は、条例で制限が付加されている場合がありますので、必ず建築地の建築基準条例等をチェックしておきましょう。

また、法24条3項の解釈について、特定行政庁によって「階数が2であり」の部分の読み方が異なる場合があります。すなわち、
・その用途が2層ある
とする場合と
・建築物の階数が2である
とする場合です。

この解釈の違いで、まったく設計が変わってきてしまいますので、建築地における特定行政庁と事前にしっかり競技しておかなければなりません。

異種用途区画 令第112条第12項(旧13項:平成30年の法改正による)

異種用途区画 画像

令112条第13項も第12項と同様に、条文自体は短く簡潔です。
簡単な一覧表はこちらの記事を参照ください。
防火避難規定 防火区画 区画の種類・規模・方法

第13項でも、意図するところは第12項と同様ですが、区画すべき用途とその規模が、いわゆる耐火要求が発生する用途規模であるため、該当する用途とその他の部分を区画する方法に、より高い性能が要求されています。

第13項で要求される防火区画は、別表1に記載されている用途規模に該当する部分とその他の部分との区画と考えてしまいがちですが、法27条第2項第2号に記載されている危険物の貯蔵場(処理場)との区画についても忘れずチェックしてください。
石油化学系の工場や、大規模なガソリンスタンド等、該当する用途を計画する際はご注意ください。
もちろん、準耐火建築物とする必要がある建築物かどうかのチェックでも、同様です。

令第112条第12項の区画の方法(旧13項:平成30年の法改正による)

令第112条第12項に規定される異種用途区画で要求される区画の方法は

  • 準耐火構造とした床もしくは壁(1時間準耐火構造:令115条の2の2第1項1号の基準)
  • 特定防火設備
  • 防火設備には遮煙性能が必要

となっています。

第12項(旧13項:平成30年の法改正による)では、第12項(平成30年に削除)に比べてより高い性能の区画が要求されています。
区画する部分も、壁だけでなく床の区画も必要です。防火設備についても、特定防火設備でなければなりません。
また、第13項でも第12項と同様に、防火設備には「遮煙性能」が要求されています。

また、建築物が耐火建築物である場合は、区画する部分も当然耐火構造でなければなりません。

令第112条第12項の区画の注意点(旧13項:平成30年の法改正による)

防火避難規定は、条例で制限が付加されている場合がありますので、必ず建築地の建築基準条例等をチェックしておきましょう。

また、倉庫とその他の部分とを区画しなければならない場合について、別表1の通り読めば、3階以上の部分に倉庫の用途が200㎡以上あるか、倉庫の用途が1500㎡以上の場合に区画が必要となります。

しかし、各特定行政庁によっては、倉庫が存在する階数によらず、200㎡以上であれば区画が必要という取り扱いもあったりと、申請先や特定行政庁への事前の確認が必要な場合がありますので、注意しましょう。

要注意 住宅の場合の異種用途区画

平成30年9月25日に施行された改正法により、旧令112条12項の異種用途区画は廃止され、いままで13項だった条文が12項に繰り上げになりました。
(そもそもの経緯としては、法第24条が廃止されたためです)

よくあるうっかり、というか思い込みで、戸建住宅での異種用途区画をすっ飛ばしてしまうミスがあります。
住宅の設計だけしていると、異種用途区画というか防火区画に対して意識が及ばないためです。

戸建住宅で異種用途区画が発生するのは、ビルトインガレージを持つ住宅の場合です。

自動車車庫の用途に供する部分が50㎡を超えれば令112条第12項の異種用途区画が必要になり、150㎡以上ともなれば準耐火要求が発生するとともに令112条第13項の異種用途区画が必要になります。

150㎡以上の自動車車庫をもつ住宅は相当の大豪邸ですから滅多に無いかもしれませんが、ちょっとした豪邸なら自動車車庫が50㎡を超えることはよくあります。
木造の住宅で第12項の異種用途区画が必要になった場合、壁はなんとか対応できますが遮煙性能を持つ防火設備が対応できないことがよくあります。

また、戸建住宅でなくても注意しなければならないケースが有ります。
3階建ての共同住宅の1階部分に50㎡を超えない車庫を計画した場合、車庫とその他の部分との区画と考えると異種用途区画(第12項)(平成30年に削除)は不要ですが、共同住宅とその他の部分との異種用途区画(第12項)(旧13項:平成30年の法改正による)が必要になるのです。
第12項(旧13項:平成30年の法改正による)の異種用途区画なので、壁だけでなく床も区画の対象です。

同じように、共同住宅が2階建てで1階に自動車車庫がある場合、2階の共同住宅部分が300㎡以上あれば異種用途区画(第13項)が必要です。

住宅だからとたかをくくっていると痛い目に遭うので気をつけましょう。

用途に主従関係がある場合の異種用途区画

用途に主従関係がある場合の具体例としては、デパートやスーパーマーケットの売り場の一角にある飲食店等が該当します。
それらの関係が主たる用途と、従たる用途であって以下の様な条件を満たすと、それらの部分ごとの区画は不要となります。

  • 各用途の管理者が同一である
  • 主たる用途と従たる用途の利用形態に密接な関係が有ること
  • 従たる用途へは、道路等から直接出入りできないこと
  • 主たる用途と従たる用途のそれぞれの利用時間がほぼ同じであること
  • 自動車車庫、倉庫以外の用途であること

ショッピングモール等でも、利用時間帯が同じで全体を管理するものがいれば、各店舗ごとに異種用途区画をする必要は無い、ということです。
最近はあまり見かけなくなった、各種店舗が軒を連ねるような形態(別表1でいうところの「マーケット」)の場合は、各店舗ごとに異種用途区画が必要になります。

ただし、建築の規模が大きく、用途の関係性も複雑になるような計画の場合は単純には判断できない場合もあります。
建築地の条例による規制の付加をよく調べるとともに、申請先や特定行政庁と事前にしっかり打ち合わせをしておく必要があります。

平成30年9月25日に施行された改正法により、旧令112条12項の異種用途区画は廃止され、いままで13項だった条文が12項に繰り上げになりました。
(そもそもの経緯としては、法第24条が廃止されたためです)

よって、小規模の異種用途区画は不要となりましたが、参考資料として記事は残します。
条文は最新の状態がわかるように記載を修正しました。

建築物の防火避難規定の解説2016
by カエレバ

スポンサーリンク
関連コンテンツ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする