平成27年6月の改正法施行に備える:確認・構造適判手続き編

平成27年6月1日より、改正建築基準法による確認申請手続きがスタートします。
特に、構造適判が絡む場合の申請の流れはこれまでとだいぶ勝手が変わります。
 
国交省のサイトで、改正建築基準法の情報がまとめられていますが、それをさらに噛み砕くのが私の役目かなと。
そこで、国交省の手続き解説パンフレットを引用しつつ、まとめました。

もうすでに国交省の講習会や、建築士会、民間の確認審査機関等で情報を得ている方も多いとは思いますが、重要な部分に絞ってなるべくわかりやすくまとめたのでぜひご覧いただければと思います。

書式の詳細についてはこちらの記事にまとめました
平成27年6月の改正法施行に備える:書類・書式編

 
建築基準法の一部を改正する法律(平成26年法律第54号)について、国交省のサイトにまとめられています。
随時更新されていますので、こちらもチェックしてみるといいでしょう。
 

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構造適判有りの場合の確認申請の流れはどうなる?

1.建築主が直接構造適判を依頼する

適判の流れ 法改正

適判の流れ 詳細解説サムネイル
(上の画像はクリックすると、詳細画像が参照できます。)

国交省のサイトに上記のパンフレットがありますが、上の詳細図では重要なポイントをチェックしてみました。

まずは、構造計算適合性判定(構造適判)と建築確認申請は別々に申請するようになるという点。
これまでは、確認審査機関を経由して構造適判機関に書類を提出していましたが、法改正後はそれぞれの申請を建築主が行わなければなりません。

中でもこれまでの申請と様子が変わる部分は
・構造図書は正副2部を2セット準備する必要がある
・構造適判には専用の申請書が必要になる

・構造適判への申請図書には設備図の添付は不要になる
・確認審査機関に適判の適合通知および副本を提出するしなければならない
といったところでしょう。

ただ、構造計算に影響のある設備図まで図書を省くと結局追加図書を要求されるでしょうから、杓子定規に考えないほうが良いでしょう。

2.6条1項の規定による確認申請の場合は、審査期限の3日前までに、建築主事に適合通知

6条1項の規定による確認申請の場合は、審査期限の3日前までに、建築主事に適合通知を提出しなければならい、と記載されています。

これはちょっとわかりにくいんですが、まず前提として、行政への確認申請と指定確認検査機関への確認申請は、法文で別々に規定されています。
そして、6条1項の規定による建築確認申請とは、行政への申請のことです。

つまり、行政に構造適判ありの建築確認申請を提出する場合は、上記のように適合通知の提出期限が定められることになります。具体的には、確認申請が受理されてから35日目の3日前なので、32日目までに提出するということですね。

これがどこまで厳密に運用されるかは定かではありませんが、法文に記載されるということは知っておく必要があります。

新旧対照条文 
上記PDFの14ページ目(6条の3 第8項)に3日前の記載があります。確認しておくと良いと思います。
忙しい方のために、抜粋画像も貼っておきます。
適判通知書 三日前
 

構造計算適合性判定の対象、その他諸々が合理化される

1.構造計算適合性判定のための条文が新登場(法6条の3)

新設された法6条の3第1項に、「特定構造計算基準」という言葉が登場します。
この基準に該当する建築物は、構造適判が必要になるということですが、簡単に言うとルート2、ルート3の構造計算、限界耐力計算を行い構造の安全性を確かめたものは該当するということで、基本はこれまで(改正前)と大差はありません。
 
特定構造計算基準:条文抜粋:
第二十条第一項第二号若しくは第三号に定める基準(同項第二号イ又は第三号イの政令で定める基準に従つた構造計算で同項第二号イに規定する方法若しくはプログラムによるもの又は同項第三号イに規定するプログラムによるものによつて確かめられる安全性を有することに係る部分
 

2.既存不適格建築物への増築の場合でも適判が必要になる

「特定増改築構造計算基準」という言葉も新登場です。
 
これまでは既存不適格建築物への増改築の場合は、法20条の規定が適用されないため、構造適判は不要でした。
しかし、近年の増改築ニーズの高まりに伴い、増改築案件についても構造計算の審査を万全とする措置を講ずる必要が出て来た、ということで増改築案件でもルート2、ルート3の構造計算、限界耐力計算を行うものについては、新築と同様に構造適判の審査が必要になります。

確かに今までの緩和があまりにも緩和されすぎだった気もしますので、面倒ですが、建築物の安全性を考えると必要な改正と言えます。

適判対象の追加 解説
 
ところが、改正された条文(令137条の2、建設省告示566号)の記載内容が、いわゆる1/2以下増築については、適判が必要ない(特定増改築構造計算基準に該当しない)記述となってしまっていました。
ですから、急遽告示改正が行われることになり、6月1日には辻褄が合うように取りまとめられることになりました
この際、細かな条文の記載内容の差異についてここでは書きません。国交省の黒歴史として知っておく程度で良いと思います。
とにかく、既存不適格建築物への増改築であっても、必要に応じて構造適判は必要になるということです。
もしかしたら5月は増築申請ラッシュで確認審査機関がてんてこ舞い、なんてこともあるかもしれません。
 
パブコメ募集ページは以下
 
 

3.新キャラ「ルート2主事」の登場

 
ルート2主事 解説
細密画像は国交省パンフを参照されてください
 
「ルート2主事」とは、ルート2の構造計算について審査できる建築主事(指定確認検査機関)のことで、該当する建築主事もしくは確認検査員が在籍する審査対応期間では、ルート2の構造計算案件は構造適判を省略することが可能になる、というものです。
こちらも新設の法6条の3第1項に記載されています。
 
条文リンク
 
:条文抜粋:
ただし、当該建築物の計画が特定構造計算基準(第二十条第一項第二号イの政令で定める基準に従つた構造計算で同号イに規定する方法によるものによつて確かめられる安全性を有することに係る部分のうち確認審査が比較的容易にできるものとして政令で定めるものに限る。)又は特定増改築構造計算基準(確認審査が比較的容易にできるものとして政令で定めるものに限る。)に適合するかどうかを、構造計算に関する高度の専門的知識及び技術を有する者として国土交通省令で定める要件を備える者である建築主事が第六条第四項に規定する審査をする場合又は前条第一項の規定による指定を受けた者が当該国土交通省令で定める要件を備える者である第七十七条の二十四第一項の確認検査員に前条第一項の規定による確認のための審査をさせる場合は、この限りでない。
 
条文中の構造計算に関する高度の専門的知識及び技術を有する者」が、いわゆる「ルート2主事」と呼ばれる新キャラです。
国交省パンフにも以下の様な記載があり、ルート2の計算で適判を省略したい物件を申請する際は、申請先にルート2主事が在籍しているかを確認しておく必要があります。
「ルート2審査対応機関では、国土交通省令で定める要件を備える建築主事・確認検査員が在籍しているかどうかはホームページに公表されます。」

4.構造計算対象の合理化

エキスパンションジョイントありの特例

こちらも画像のとおりですが、これまではいわゆる「1の建築物」に対して構造検討が要求されていましたが、法20条第2項が新設されることによりエキスパンションジョイント等で構造上分離している部分は、それぞれの部分ごとに異なる構造計算を適用できることとなります。

当面は、エキスパンションジョイント等で構造上分離させて計画するような案件については、事前に申請先に確認しておくのが無難かと思います。

ちなみに、これはあくまで構造検討上の考え方(法20条)であって、法6条についての考え方ではありませんから混同しないようにしなければなりません。
エキスパンションジョイント部分ごとに耐火要求や避難規定を検討したりしないようにしてください。

 

仮使用認定を建築主事や指定確認検査機関へも申請可能に

仮使用はこれまで「承認」を特定行政庁に求めていましたが、法改正後は「認定」と改められるとともに、建築主事や指定確認検査機関に申請することが可能になります。

ただし、民間に認定申請するときは条件があります。
仮使用を前提とした計画の場合は、民間でいけるのか、特行でないとダメなのか、しっかりと把握しておかないとあとで困ります。
 
また、6月1日からいきなり民間の確認審査機関には仮使用の認定申請が可能にはならないのでは、という噂もあります。
民間で仮使用認定を申請されるのであれば、申請先としっかり打ち合わせをしておいて下さい。
行政と民間とで、扱える計画の違いや注意点等は改めてまとめる予定ですが、下のリンクを参照いただくとわかるのですが、仮使用部分が既存建築物等と明確に避難経路を分離できているような計画が、民間でも審査可能な計画となる模様です。
つまり、仮使用部分が既存建物の避難経路等と複雑に絡む計画は、行政のみ許される「裁量」を行使する必要がありますが、民間では「裁量行為」は許容されていないため、こういった住み分けが起こるのです。
 
 

その他、申請手続きに関連する改正

上記にまとめた内容以外にも、今回の大改正で見直される規定はたくさんあります。
ざっと列記しますと、

・木造建築関連基準の見直し・・・法21条、法27条
大規模木造建築物の建築を促進するための、事実上の緩和措置です
・法38条認定の復活
・老人ホーム等の容積率の緩和措置
・特定行政庁の立入検査拡大、国交大臣の調査権限創設
・移転に関する規定の整備
・罰則の強化

等があります。
また折を見て重要な規定についてはまとめていきますが、実際の申請にあたっては申請先に聞いてしまうのが一番早いし、確実でしょう。

書式の詳細についてはこちらの記事にまとめました
平成27年6月の改正法施行に備える:書類・書式編

ちょっとお高いですが、今回の改正の解説本が便利です

そして、結局専門家集団が専門的にまとめた書籍を参照するのが、一番便利だったりします。
私も早速ゲットしましたが、特に逐条解説部分が役に立ちます。
つまるところ、確認申請というヤツは、まだまだネットで調べるよりも手元の本の方が参照しやすく、役に立つというわけです。

例によって、専門書ゆえにちょっとお高いんですが、はっきり言って便利すぎるので、即座に購入することをオススメします。

法改正解説本01 解説本目次

 
この本を活用する際の注意点として、上記記事2-2.2の中で「特定増改築構造計算基準」についての告示が改正されると書きましたが、当然この本が出版されてからの改正なので、本の記載は古いまま、つまり一部適判が不要となる条件があるままの解説になっています
(本書P97・98。P98③増改築部分が2分の1以下、には下線が引かれておらず、特定増改築構造計算基準がこの条件の場合には存在しないことになっています。)
 
告示が改正されることにより、訳の分からない不合理が解消され、一体増築、1/2以下、1/20以下かつ50㎡以下、のいずれの条件の場合でも、特定増改築構造計算基準に該当する場合は、構造適判は必要になる、と素直に理解しておけば良いと思います。
 
平成26年改正建築基準法・同施行令等の解説
by カエレバ

※記事中の解説画像等は国交省資料を活用しました
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