建ぺい率角地緩和の甘い罠

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建ぺい率角地緩和に潜む「罠」

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「角地といえば、角地緩和!」
建築士なら、だれでも知っています。
宅建の試験にも出てきますから、不動産関係の方もおそらくご存知なのが、角地緩和です。

ですが、ただ、敷地の2面が道路に面しているような、まさに角地にお手本のような角地であっても、建ぺい率の緩和を受けられないケースもあるということは、あまり知られていないのではないでしょうか。
そんな時はまず基本に立ち返って、条文の確認から。

建ぺい率角地緩和 関連条文

(建ぺい率)
第五十三条
建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(以下「建ぺい率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を超えてはならない。
(中略)
3  前二項の規定の適用については、第一号又は第二号のいずれかに該当する建築物にあつては第一項各号に定める数値に十分の一を加えたものをもつて当該各号に定める数値とし、第一号及び第二号に該当する建築物にあつては同項各号に定める数値に十分の二を加えたものをもつて当該各号に定める数値とする。
一  第一項第二号から第四号までの規定により建ぺい率の限度が十分の八とされている地域外で、かつ、防火地域内にある耐火建築物
二  街区の角にある敷地又はこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物

建ぺい率の緩和が受けられる角地は「特定行政庁」が指定する!

法53条3項二号にいわゆる建ぺい率の角地緩和の規定があります。
よく読むと、角地又はそれに準ずる敷地で、「特定行政庁が指定するもの」とあります。
勘のイイ方は、もうお分かりかと思いますが、ただ角地ならなんでもいいわけではなくて、「こんな敷地ならかんわしてやってもいいよ」と特行がいちいち指定しているものなのです。
以下に例として宮城県と福岡県の指定内容を抜粋してみました。

宮城県 建築基準法施行細則より抜粋
(角地等の指定敷地)
第十一条 法第五十三条第三項第二号の知事が指定する敷地は、次に掲げるものとする。
一 百二十度以内のかどを構成する道路(幅員がそれぞれ四メートル以上で、かつ、その和が十二メートル以上となるものに限る。)の内側に接する敷地でその接する部分の長さが敷地の周囲の長さの三分の一以上のもの
二 道路境界線相互間の距離が三十五メートル以内の二つの道路(幅員がそれぞれ四メートル以上で、かつ、その和が十二メートル以上となるものに限る。)の間にあつてこれらに接する敷地でその接する部分の長さが敷地の周囲の長さの三分の一以上のもの
三 公園、広場、水面その他これらに類するものに接する敷地又はこれらに接する道路の反対側に接する敷地でその接する部分の長さが敷地の周囲の長さの三分の一以上のもの

福岡県 建築基準法施行細則より抜粋
(建ぺい率)
第五条
次の各号に掲げる敷地においては、法第五十三条第三項第二号の規定により、建築物の建ぺい率を緩和する。
一 周辺の長さの三分の一以上が道路又は公園、広場、水面その他これらに類するものに接する敷地
二 周辺の長さの六分の一以上が幅員十二メートル以上の道路に接する敷地
三 周辺の長さの六分の一以上が道路に接し、かつ、その道路の反対側に公園、広場、水面その他これらに類するものがあり、これらの幅員の合計が十二メートル以上である敷地

建ぺい率角地緩和 まとめ

いかがでしょうか。

ざっと見ても、どこにも「角ならオッケー!」とは書いていません。

敷地の周長のに対する接道長さの割合や、道路幅、道路がなす角度にまで規定が及んでいます。

逆に言えば、この指定がなければ、一見緩和を受けられそうな敷地であっても勝手に緩和して計画してはいけないということになります。

建築地の特定行政庁が指定する内容をよくよく確認してください。

「○○県 例規」で検索して、土木建築関連の例規から、大抵の行政は建築基準法施行細則に定めていると思います。
(政令指定都市の建築基準法施行細則は「角地緩和の適用についての細則等を集めてみた」を参照ください)

実際問題として、建ぺい率の限度が60%の地域で建ぺい率いっぱいに計画すると、住宅の敷地のような場合はほとんどゆとりはありません。

よほど敷地が広ければまた別ですが、例えばタテ・ヨコ10mの敷地(100㎡)にそれぞれの境界線から1mセットバックしてタテ・ヨコ8mのサイコロ状の建築物を計画すると、8×8=64㎡(建ぺい率64%)となります。

ですから、緩和を受けられなくても上のケースだとあまり困りません。
(小規模の住宅であれば、建ぺい率を使い切るような計画の場合、見た目にも敷地いっぱいになってしまう、という意味です。)

敷地いっぱいに建てたい、市街地の商業ビルなんかになるとまた話は変わります。

思い込みで設計してしまって、実は緩和が受けられないとなると、受けるダメージは相当なものとなります。

建築基準法には、知っているようで知らないこと、よくよく調べてみると「そういうことか!」と言いたくなる規定はまだまだあります。

今後も「そういうことか建築基準法」は役立つ情報をお届けできるよう、精進して参ります。
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