いわゆる「簡易竪穴区画(令112条13項)」はイマイチ使えない緩和なのでは?

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いわゆる「簡易竪穴区画(令112条13項)」はイマイチ使えない緩和なのでは?

T様から以下のようなご質問をいただきました。(内容は要約)

準防火地域内の木造3階建て一戸建て住宅を民泊に用途変更したい。
耐火種別はイ準耐だが、令112条13項のいわゆる「簡易竪穴区画」は適用可能か?

というものです。

この規定は2019年(令和元年)6月に施行されました。
詳細は以下のサイトより確認できます。この年はやたらと法改正がありましたので、大変見つけにくいです。

建築:建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)について – 国土交通省 (mlit.go.jp)

上記国交省のサイトでも、改正の趣旨としては「既存ストックの活用」とか「戸建住宅等(延べ面積200㎡未満かつ3階建て以下)を他の用途にしやすく」などと書かれており、いただいたご質問の建物にドンピシャ当てはまるような状況です。

これですぐに「そりゃあ、国が緩和してくれたんですから、絶対イケますよ!既存ストックを有効活用してください!!」と回答したんですが、何度かやりとししているうちに重大な部分を見落としていることがわかりました。
つまり私の思惑通りには進まないことがわかったのです。
というよりも、ぶっちゃけ、私の回答(認識)は間違っていたのです。

条文を見てみると、
「13 
三階を法別表第一(い)欄(二)項に掲げる用途(病院、診療所又は児童福祉施設等を除く。)に供する建築物のうち階数が三で延べ面積が二百平方メートル未満のもの(第十一項に規定する建築物を除く。)の竪たて穴部分については、当該竪たて穴部分以外の部分と間仕切壁又は戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。)で区画しなければならない。」

とありますから、「ええやん、間仕切りと戸で区画したらええやん」となったわけです。
「戸」って何だよと、改正された当時も気になりましたが、とにかくこれでイケると思ったわけです。
建築基準法解説サイトが今ではたくさん登場しており、このサイトのような読みにくいサイトは駆逐されつつありますが、それはともかく、それらサイトやここでも、区画方法について紹介されています。

しかしここで条文をよく読んでみると、結構驚きます。

(第十一項に規定する建築物を除く。)

これですよ。
これを見落とすと痛い目に合います。

ここで問題の第11項は以下の通り。

「11 
主要構造部を準耐火構造とした建築物又は第百三十六条の二第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物であつて、地階又は三階以上の階に居室を有するものの竪たて穴部分・・・以下略」

そうです、みんな大好き、最も基本の遥か昔からある、「竪穴区画」の規定です。

主要構造部を準耐火構造にした建築物(当然、耐火構造も含まれます)や、令136条の2第一号ロや第二号ロ(これも簡易竪穴区画と同時期に施行された、耐火・準耐火同等性能建築物の規定)に該当する建築物で3階以上の階に居室があれば、竪穴区画を設けるべし、というものです。

ここで相談内容にもどりますと、当該住宅は「イ準耐」なのです。
これがなにかの間違いで「イ準耐」ではなかったとしても、準防火地域内の3階建てですから、現行法でいうところの準耐火同等性能建築物になっていなければなりません。

(2019年の法改正以前は、「開口部制限」などと呼ばれていた、木造3階建ての一戸建て住宅であれば準耐火構造にしなくてもよい規定がありましたが、これが2019年の改正で令136条の2に改めて規定されたため、逃れることができなくなっています)

したがって、令112条第11項に該当する建築物となり、令112条13項は適用することができない、となってしまうわけです。

ご相談の住宅を民泊として適法にどうしてもなんとかして用途変更するなら、3階を居室としないとか、3階を塞いでしまうとか、なんのための用途変更かわからない方策をとることになるのです。

相談いただいた方は直接国交省の担当の方とも協議されたようで、単刀直入に「準防火地域内の3階建て住宅を宿泊用途に転用することは難しい」と言われてしまったとこのとです。

イ準耐(もしくは同等性能)の建築物は火災時の建物倒壊時間を確保できているため、避難時間をより確保するために竪穴区画や面積区画を行う必要があるため、それらは両立させなければ片手落ちになってしまいます。

民泊のニーズは、やはり都会、というより外国人観光客向けというのが多いかと思います。
わざわざ日本にくる外国人観光客は、まずは大都会のTOKYOやOSAKAに行きたいと思うんですよ。

しかし大都会であるが故に、防火準防火地域の指定範囲も広範に及ぶわけで、それらの地域に建つ3階建ての住宅は、法改正の趣旨である「既存ストック活用」が十分に機能しない状況を生んでいるとも言えるわけです。

おそらく国交省もこのような状況は掴んでいるはずなので、もしかしたら今後の法改正でテコ入れされるかもしれませんが、上でも述べたように片手落ちになるような改正はされるわけもなく、防災設備、消防設備などの設置に頼ることになるかもしれません。

まとめとして、「条文はよく読みましょう」、とこのサイトで偉そうに書いている私がいちばん実践できていなかったという現実を噛み締めつつ、質問者様のお仕事が無事に進むことを願います。
T様、ありがとうございました。

※このサイトは御覧頂いている皆様のお陰で成り立っております。
ありがとうございます。

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