平成30年法改正の未施行分 追加情報 改正法施行に備えよう

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先日、国交省による平成30年改正の1年以内施行分について説明会が開催されました。

まだ、資料は国交省のサイトで公開されていませんし、すべて検討中ということなのでこの記事の情報のままで公表されない可能性もあります。

1年以内の施行となると、これまでの経緯などを踏まえると6月に施行されることになると思います。

現時点での情報をそのまま鵜呑みにすることはできませんが、予め予習しておけば今後の仕事にも役に立つはずです。

繰り返しますが、検討中の案ばかりなので参考程度にとどめておきましょう。正式な情報が公表されましたら、またまとめます。

参考記事:
平成30年度法改正の未施行分を予習しよう+新情報+パブコメもあるよ

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法21条・27条関連の新しい設計方法について

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法21条(大規模木造等)および法27条(耐火要求)に関して、それぞれの要件を満足するための設計方法の詳細が定められる事になっています。

正直、これに関する説明だけで30ページ以上に渡る資料があり、簡単に説明するのが難しいです。
まずは「こんな感じなんだな」と様子を掴んでおいて、最終的な告示を待つのが懸命かと思います。

木造の普及や、既存ストック活用の道筋を作ろうと、国も必死なんだなということが伝わってきます。

小規模建築物の耐火要求の緩和

これは過去の記事でも取り上げていますが、より具体的になってきた項目です。
既存ストック活用のための、緩和です。

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階数3以下かつ200㎡未満の特殊建築物については、法27条による耐火要求を一定の条件下で緩和するもので、用途によって警報設備や簡易的な竪穴区画などを設けることが緩和の条件になるというものです。

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今回、その簡易的な竪穴区画の開口部に要求される建具の性能として、「10分防火設備」の仕様が定められました。新たな用語となります。

上の説明にもありますが、小窓が許容されていたり、芯材は難燃のペーパーハニカムコアでよかったり、表面材の仕様も特防ほど要求は高くなく、一般的なオフィス用の建具の仕様で足りるというものです。

小規模建築物の2直の階段設置の緩和

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施行令121条の規定でいわゆる「2直の階段」が要求されますが、3階を児童福祉施設等の用途にしたい場合、居室が50㎡以上あると「2直の階段」が必要となり、用途変更を断念するケースが多くありました。

こういった既存ストック活用を妨げるようなケースを緩和しようという改正です。
一つ上の項目に出てきた「簡易的な竪穴区画」を設けることで、避難時の階段の安全性を確保してやり、階段が1箇所でも適合していることになります。

もともとの設計が準耐火構造の建築物であれば、大半は竪穴区画が形成されているはずなので、より用途変更等がしやすくなるのではないかと思います。

小規模建築物の敷地内通路の幅員の緩和

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これは過去の記事でもご紹介していますが、より具体的な記述があったので改めて載せました。

法35条に掲げる建築物であっても、階数3以下、延べ面積200㎡未満であれば敷地内通路の幅員は90センチあれば足りることになります。

用途変更のケースというよりは、新築や増築のケースが恩恵を受けるのではないかと思われます。

内装制限規定の見直し・代替措置

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これも、木材利用促進に関連する緩和規定だと思われます。

天井を高くして、さらに排煙設備を設けることで、内装制限を緩和しようというものです。梁などの構造体を現しにするような場合は必然的に天井が高くなりますから、理にかなっているとも言えます。

避難安全検証法の新たな検討方法等の追加

区画避難安全検証法

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避難安全検証法に馴染みのない人にとっては、なんのこっちゃという内容ではありますが、例えば「排煙設備や内装制限を緩和したいんだけど、告示適用だとうまくいかないしスプリンクラーとか付けたくない、しかもひと部屋だけ」というようなわがままをピンポイントでかなえてくれる、大変都合のいい規定が追加される、というイメージです。

とはいうものの、ある程度の条件もありますし、確認申請では「高度な計算」として扱われますから、数値が少しでも変わるような変更があればすべて「計画変更」として取り扱われますのであまり安易に採用しないようにしたいものです。

煙高さ判定法

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詳細は説明を読んでいただくとして、新たな検討方法、国交省いわく「より実態に則した検証」となる計算方法のようです。

避難安全検証法は参考になる書籍があまりなく、結局コンサル会社に丸投げ、なんていう設計事務所も結構あるのではないでしょうか。

この改正を契機として、もっと活用しやすい計算に改められ、合わせて解説書も充実してくれると非常にありがたいな、と個人的には思います。

病院・福祉施設における階避難の検討が可能に

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前出の煙高さ判定法による検証に加え、諸々の条件を満たすことで、これまでは避難安全検証法の対象とはできなかった用途についても、避難安全検証法を適用できるようになるというものです。

要求される要件に非常用エレベータ-または避難階段があることなどから、必然的にかなり大規模な建築物の計画でないと適用するのはハードルが高いのかな、と感じます。

特定空間による面積区画

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勝手に「アトリウム区画」と名付けてしまいましたが、まさに言い得て妙。大規模なアトリウム空間(特定空間)を面積区画を形成する部分として捉えてしまおうという、結構画期的な緩和です。

ただし、これだけ大規模なアトリウム空間がある建築物となると、竪穴区画も必須でしょうからそのあたりの調整、バランスはしっかりと考えなくてはなりません。
解説によれば、全館避難安全検証法が別途必要ですよ、とさらりと書かています。

なお、特定空間に要求される条件も諸々ありますが、詳細については正式発表を待つべきでしょう。

面積区画の特定空間による排煙別棟みなし

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面積区画の特定空間、いわゆる「アトリウム区画」を介した部分はそれぞれ排煙検討は別の建築物として検討して良い、という緩和規定です。

いずれにしろ、そうそうある規模の建築物でないことは間違いないので、とりあえずこんな緩和もあるんだな、という程度で良いかもしれません。

異種用途区画の代替措置

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これまでも、ショッピングモールなどのような用途の場合、避難誘導が一体的に行われるものであれば異種用途区画は不要と取り扱われていましたが、この緩和で基準法でしっかりと仕様を定めることになるわけです。

用途同士の組み合わせに制限がある点や、警報設備の設置などが要求される点に注意が必要です。

防火床の仕様

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法26条で要求される防火壁の規定の代わりに、床によって区画を行えるようになるというもので、これは前回から変わりません。

より詳細が明らかになったところで、当然といえば当然ですが、「防火床」そのものにも、防火壁とどうように構造的な自立性が要求されています。

床が抜けてしまえば、区画も何もあったものではないのですから、当たり前ですね。

法35条の3による無窓居室に対する緩和

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法35条の3の規定は、うっかりはまると血の気が引くほど焦る規定です。
詳しくはこちらの記事で確認できます。

建築基準法第35条の3の意味や取扱、対応策について改めて調べました

しかしこの法改正で、あまりにも不合理と考えられる用途、規模については適用対象から外すことにしたというものです。

詳細は説明に譲りますが、私個人的には、「やっと国もわかってくれたか」と感じています。
木造は火事に弱い、と言ってしまっているのと同じですし、木材利用促進の足かせにもなりかねないからです。

平成30年法改正の未施行分 追加情報 改正法施行に備えよう のまとめ

平成30年法改正の未施行分は、すでに施行されているものよりも明らかに複雑な規定ばかりです。

公布から1年空けるだけあるなという気もしますが、施行直前まで具体的なところが明確にならないというのも、少々やきもきします。

過去の例からしても、これだけ多岐にわたる法改正の場合、国交省が解説本を発行してくれるはずなのでしっかりと読み込んで理解したいところです。

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