防火区画:面積区画総まとめ

注:最新の令112条はこちらの記事でご確認ください。記事内の項ずれは適宜読み替えてください。ご不便をおかけしますがご了承ください。
【2020年(令和2年)版】 基準法施行令112条(防火区画関連)最新条文(告示番号付き)

防火避難規定の重要規定である、防火区画の規定のうち、面積区画についてまとめました。
面積区画の一種である高層区画については、別途まとめます。

追記(2019年10月)
令和元年施行の法改正で、防火区画関係に大きな改正がありました。過去の記事は経緯記録として修正せず、追加情報として記事リンクを記載します。

【令和元年改正】防火区画:令112条の要点まとめ

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防火区画の目的

防火区画の目的は、火災の拡大を防止です。建築物内部といくつかの部分に区画し、火災をその区画内に閉じ込めてしまうことで、火災の延焼拡大を防止し、被害を最小限にとどめることが出来ます。と同時に、避難、消火、救助活動を容易にすることが出来ます。
これは、面積区画にかぎらず、竪穴区画、異種用途区画も同様で、大規模建築物の防火避難規定の基本中の基本ということが出来ます。
全館避難安全検証法を行うことで、高層区画、竪穴区画は緩和することも可能ですが、面積区画は施行令112条に規定されている以外は緩和する方法はありません。

面積区画の種類

防火壁による区画(法26条)

面積区画というと、施行令112条に規定される内容ばかりに意識が行きがちですが、法26条に規定される防火壁も面積区画の一種と考えることが出来ます。
詳細については、別記事にまとめてありますので、参照してください。

防火避難規定 法26条 防火壁の規定について

施行令112条による防火区画(法36条)

施行令112条の第1項から第4項までが、面積区画の規定です。
第1項から第3項までは、建築物の耐火性能等により区画の要件等を定めており、第4項では第2項、第3項に関して除外規定を定めているという構成です。
また、第1項には、スプリンクラー等を設置した場合の緩和措置や、ただし書きによる除外規定が定められています。
それぞれの条項については、以下に説明します。

面積区画の要件(令第112条第1項~第3項)

面積区画についての条文を表にまとめると、以下のようになります。
この表を見ながら、各項ごとの規定を確認していくとわかりやすいと思います。

▼クリックで大きな画像を参照できます(画像内の条文条項が古いまま、または不足があります。参考程度にしていただき、細かな内容は以下の記事を参照して下さい。)
面積区画 総まとめ

耐火建築物、準耐火建築物、準耐火構造といった用語の区別や、準耐火建築物の種別は大変ややこしいですが、これがわかっていないと防火区画の規定を理解することは出来ませんので、頑張って理解してください。
過去記事にまとめがありますので、参照してください。

防火避難規定 耐火建築物と準耐火建築物

新:法第27条第1項の法関連と特定避難時間倒壊等防止建築物

令112条第1項の規定について(1500㎡区画)

令112条第1項に該当する防火区画が必要な建築物とは、いわゆる「任意で耐火建築物、もしくは準耐火建築物としたもの」が該当します。
逆に、令112条2項や3項は、耐火要求のある特殊建築物や防火準防火地域内の建築物などに対する規定により、建築物に所定の耐火性能を持たせたものが対象です。

令112条1項の適用を受ける例として多いのは、法26条の防火壁の設置を免れるために耐火性能を持たせた場合でしょう。計画によっては防火壁を設けたほうが良い場合もありますが、ここは設計者の判断ですから、「任意」と呼ばれているわけです。

第百十二条  主要構造部を耐火構造とした建築物又は法第二条第九号の三 イ若しくはロのいずれかに該当する建築物で、延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)が千五百平方メートルを超えるものは、床面積の合計(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)千五百平方メートル以内ごとに一時間準耐火基準(第百二十九条の二の三第一項第一号ロに掲げる基準(主要構造部である壁、柱、床、はり及び屋根の軒裏の構造が同号ロに規定する構造方法を用いるもの又は同号ロの規定による認定を受けたものであることに係る部分に限る。)をいう。以下同じ。)に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第百九条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ない場合においては、この限りでない。
一  劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客席、体育館、工場その他これらに類する用途に供する建築物の部分
二  階段室の部分又は昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)で一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたもの

令112条第2項の規定について(500㎡区画)

令112条第2項は、いろいろな条文が関連して構成されていて、大変ややこしいです。

法第27条3項(耐火または準耐火建築部の要求)、法第62条第1項(準防火地域内の建築物)、法第67条の3第1項(特定防災街区整備地区内の建築物)の規定により、準耐火建築物とした建築物が対象となりますが、「~を除く」により、準耐火建築物「ロ-2」と「イ-1」が除外されています。耐火建築物については記載が無いため、耐火建築物は第1項の規定を受けるということが分かります。

令112条第2項により面積区画が要求される、準耐火建築物「イ-2」「ロ-1」は、それぞれに求められる性能をよく確認するとわかりますが、屋根や外壁以外の主要構造部について、防火上の措置が求められていません。そのため、延焼の恐れが、他の仕様の準耐火建築物より大きいと判断されるため、500㎡以内ごとに、やや細かく面積区画を施す必要があるのです。

さらに、区画だけでは足りないということなのでしょう、防火上主要な間仕切り壁についても準耐火構造とすることが要求され、小屋裏、天井裏に達せしめなければなりません。なお、ただし書きにある強化天井などの措置を行った部分は除かれます。

第百十二条 2  
法第二十七条第一項 の規定により特定避難時間倒壊等防止建築物(特定避難時間が一時間以上であるものを除く。)とした建築物又は同条第三項 、法第六十二条第一項 若しくは法第六十七条の三第一項 の規定により準耐火建築物とした建築物(第百九条の三第二号に掲げる基準又は一時間準耐火基準に適合するものを除く。)で、延べ面積が五百平方メートルを超えるものについては、前項の規定にかかわらず、床面積の合計五百平方メートル以内ごとに一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画し、かつ、防火上主要な間仕切壁(自動スプリンクラー設備等設置部分(床面積が二百平方メートル以下の階又は床面積二百平方メートル以内ごとに準耐火構造の壁若しくは法第二条第九号の二 ロに規定する防火設備で区画されている部分で、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けたものをいう。第百十四条第二項において同じ。)その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の間仕切壁を除く。)を準耐火構造とし、次の各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

一  天井の全部が強化天井(天井のうち、その下方からの通常の火災時の加熱に対してその上方への延焼を有効に防止することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。次号及び第百十四条第三項において同じ。)である階
二  準耐火構造の壁又は法第二条第九号の二 ロに規定する防火設備で区画されている部分で、当該部分の天井が強化天井であるもの

参考→新:法第27条第1項の法関連と特定避難時間倒壊等防止建築物

令112条第3項の規定について(1000㎡区画)

令112条第3項も、第2項と同じようにたくさんの条文に関連し、ややこしくなっています。

法第21条第1項(大規模木造)ただし書きの規定により準耐火「イ-1」としたもの、法第27条第1項(耐火建築物の要求)の規定により特定避難時間が1時間以上である特定避難時間倒壊等防止建築物としたもの、法第27条第3項・法第62条第1項・法第67条の3第1項(令112条第2項にも記載のあった条項)により準耐火「イ-1」もしくは「ロ-2」としたものは、1000㎡以内毎に防火区画を設けなければなりません。

令112条第2項の準耐火建築物よりは、延焼に対して一定の防火性能を有していることから、第2項ほど細かく区画する必要が無いということです。

第百十二条 3  
法第二十一条第一項 ただし書の規定により第百二十九条の二の三第一項第一号 ロに掲げる基準に適合する建築物とした建築物、法第二十七条第一項 の規定により特定避難時間が一時間以上である特定避難時間倒壊等防止建築物とした建築物又は同条第三項 、法第六十二条第一項 若しくは法第六十七条の三第一項 の規定により第百九条の三第二号 に掲げる基準若しくは一時間準耐火基準に適合する準耐火建築物とした建築物で、延べ面積が千平方メートルを超えるものについては、第一項の規定にかかわらず、床面積の合計千平方メートル以内ごとに一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。

第百二十九条の二の三 ロ 
主要構造部が準耐火構造(主要構造部である壁、柱、床、はり及び屋根の軒裏にあつては、その構造が次に定める基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)であること。
(1) 次の表に掲げる建築物の部分にあつては、当該部分に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後それぞれ同表に定める時間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。

壁:間仕切壁(耐力壁に限る。) 一時間
壁:外壁(耐力壁に限る。) 一時間
柱 一時間
床 一時間
はり 一時間

(2) 壁(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分を除く。)、床及び屋根の軒裏にあつては、これらに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。
(3) 外壁(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分を除く。)にあつては、これに屋内において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものであること。

参考→新:法第27条第1項の法関連と特定避難時間倒壊等防止建築物

2項、3項ともに大変読みにくい条文ですが、しっかり理解するという意味でも、必ず法令集を読むようにして下ださい。準耐火建築物の区別についても、覚える必要はないですが、条文でその都度確認するようにしてください。
そうすれば、竪穴区画の部分で出てくる「準耐火構造」と、「準耐火建築物」がこんがらがって訳が分からなくなるという事態を未然に防げます。

防火区画の緩和 スプリンクラー設備等の設置部分

令第112条第1項本文中に
(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の2分の1に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)
というカッコ書きがあります。

これがいわゆる、防火区画における「面積の倍読み」というものにあたります。

ここで注意しなければならないのは、スプリンクラー等の自動消火設備を設置した「部分」だけを「倍読み」できるのであって、建築物全体に及ぶというわけではない、という点です。

例えば、延べ床面積2000㎡の耐火建築物があるとして、自動消火設備を設置した部分が1000㎡、設置の無い部分が1000㎡あるとします。
この場合、自動消火設備を設置した部分の床面積の1/2が区画対象面積から除外されるため、(1000-500)+1000=1500㎡が防火区画が必要な面積となり、1500㎡を超えていないため、面積区画が不要となります。

極端にいうと、1500㎡区画が必要な建築物の場合、建築物全体に自動消火設備を設置すれば、3000㎡までは面積区画が不要になるということになります。

また、スプリンクラー等の自動消火設備を設置した部分の緩和規定は、条文に「以下この条において同じ」とあることから、面積区画にかぎらず適用できる緩和規定となっています。

面積区画の適用除外について

面積区画の適用除外規定についても、法令集に記載のある事項については、まとめの画像で確認できます。

第1項ただし書きと第4項の除外規定の違い

まず注意が必要なのは、第1項のただし書きは当然第1項についてのみの緩和で、第2項と第3項については第4項に緩和規定が定められていることです。

第1項ただし書き第1号と第4項第1号は、内容が似てはいますが、用途や内装仕上げに関する部分が異なっています。第2項、第3項の規定が適用される建築物の耐火性能等を鑑みた結果と考えられますので、十分に注意して緩和について検討しなければなりません。

なお、階段室や昇降機の昇降路に関する部分の緩和は、第1項も第4項も同じとなっていますが、第4項は天井、壁の室内に面する部分は準不燃材料で仕上げなければなりません。

第1項ただし書き第1号、第4項第1号の考え方

令112条第1項ただし書きの第1号を適用する際に注意すべき点は、劇場や映画館等の客席、工場の生産ライン等のように、大空間が必要で区画できない部分は区画不要ですが、その建築物全体が防火区画が不要になるわけではないことです。
大空間が必要な部分と、他の部分とは区画が必要になります。
例えば、任意に準耐火建築物とした工場で、生産ラインがある作業場部分が2000㎡、事務所部分が500㎡の場合、作業場部分は「やむを得ない」部分に該当しますから、2000㎡あっても区画不要ですが、作業場と事務所との間は区画しなければなりなません。

また、第4項第1号では、第1項ただし書き第1号に記載のある、劇場や映画館、集会場といった用途は除外の対象となっていません。これは暗に、「劇場等の用途に供する建築物は、耐火建築物で造りなさい」という建築基準法からのメッセージと捉えて良いでしょう。
同じ意味で、第4項第1号を適用する際は、条文にもあるように、天井と壁の仕上げを準不燃材料としなければならない点も、見逃さないようにしましょう。

面積区画が不要となる用途上やむを得ない部分の考え方

面積区画が不要となる、「やむを得ない」部分は以下の様な用途、部分が考えられます。

  • 工場で、連続した生産設備等の設置により大空間を要する部分
  • 劇場や映画館、集会場の客席部分
  • 体育館、ボーリング場、屋内プール、屋内スポーツ練習場のホール、アリーナに該当する部分
  • 不燃性の物品保管のための倉庫(ラック倉庫、立体自動倉庫も含まれる)
  • 卸売場、仲買売場などの売場
  • 買い荷の保管や積み込みのための荷さばき場

上記のような用途(大空間での利用)が考えられますが、判断に迷うような用途や計画の場合は、申請先に事前に相談することも忘れないようにしましょう。

また、倉庫や工場に設けられた大きな庇の下など、床面積に参入される部分であっても、外気に十分開放された屋外的部分と判断できれば、区画の対象面積や対象部分から除かれます。

詳細は以下の記事にもまとめてあります。
面積区画が不要となる「用途上やむを得ない場合」のまとめ

面積区画が必要な部分とその構造

令112条第1項と第3項に要求される区画は、1時間準耐火構造の床、壁、または特定防火設備です。また防火区画の壁、床は主要構造部ですから、耐火建築物であれば耐火構造としなければならないので注意してください。

区画する特定防火設備については、令112条第14項に規定されていますが、第1項本文、第2項、第3項に必要な特定防火設備の性能と、第1項第2号で要求される特定防火設備の性能は異なります。
これは令112条第14項をよく読めばわかりますし、第1項第2号は階段や昇降機の昇降路の区画についての規定ですから、竪穴区画の規定と同様であると考えても良さそうです。

防火設備に関する事項は、別記事にまとめがありますので参照してください。

防火避難規定 防火設備(防火戸等)について
防火区画の防火戸の要件を修正しました
防火避難規定 防火区画 区画する防火設備や配管設備の措置について

また、防火避難規定の解説にもあるように、構造上重要でない小梁、胴縁、間柱なども、床や壁と一体となっている部分については、防火区画を構成する床や壁の一部として取り扱うことが「望ましい」とされています。
望ましいという表現ですから、強制力はないものの、設計者の良識が問われるということも言えます。

防火区画の部分の構成において、防火区画を形成する壁(ALC板など)の直上に梁がある場合は、梁も含めて床板まで区画を形成している必要が有るため、耐火建築物でなくても、該当する梁には耐火被覆が必要になることにも注意しましょう。(下画像参照)
防火区画 床壁構成図

防火区画は関連する基準法の条文も多いだけでなく、建築コストにも少なからず影響を及ぼしますので、法令集だけでなく、防火避難規定の解説や建築申請メモなどの参考図書は必須となります。
部分的に捉えずに、防火区画の意味を理解しながら検討するようにしてください。

スパンドレル部分に関するまとめはこちら
防火区画:スパンドレルのまとめ(令112条10項、11項)

by カエレバ

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(A様のご指摘により、一部修正。ありがとうございます。2014/7/29)
(A様のご指摘により、法改正からかなりの年月を経て修正。みなさま、ご不便おかけしました。2017/5/31)

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